2012 Fiscal Year Research-status Report
視線計測を用いた広汎性発達障害の早期診断システムの開発
Project/Area Number |
24790627
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
金井 智恵子 相模女子大学, 学芸学部, 講師 (00611089)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 |
Research Abstract |
ASDハイリスク児の視覚方向知覚課題における視線行動の動きを視線計測によって測定するために、先行研究に基づき、幾何学模様と人物画による動画を作成した。実験方法については、計測時には、乳幼児期の子どもは、50秒4つの動画によるビデオクリップを観た。ビデオは画面片側に幾何学模様が呈示され、残り片側には、子ども向け番組(大人や子どもが踊っていたり、歌っているシーン)が呈示された。Tobii アイトラッカーシステムを使用した。 また、それらと道徳性などの社会性の障害との関連性を検討するために、形や色を用いて、他人が敵か味方かについて評価する紙芝居を作成した。 ASDハイリスク児のリクルートについては、昭和大学、発達支援センター、保健所などの協力を得て実施した。実験参加者については、親の自閉症状を評価する尺度(自閉症スペクトラム指数: AQ)、知的機能を測定する発達検査(新版K式発達検査)、自閉症状を評価する尺度(乳幼児自閉症チェックリスト: M-CHAT)等を実施した。また、この時に臨床心理士による発達相談もおこなうことや、実験参加者への謝礼や交通費を支給することで、コホート研究による参加者の脱落率を予防することとした。 本研究の対象児は定型発達児40名、ASDハイリスク児6名であった。視線計測に結果については、ハイリスク群と定型発達群では、4つの動画パターンのうち、1つの動画において、ハイリスク群の方が定型発達群に比べて、子ども向け番組への注視時間が有意に長かった。また子ども向け番組において、顔への注視時間については、ハイリスク群の方が定型発達群に比べて有意に短いことが示された。一方、紙芝居の結果については、2群において有意差が示されなかった。本研究により、より早期段階でASDの兆候を把握できる可能性が示唆された。さらに次年度も継続して検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
視線計測の利用、実験参加者の確保、診断・臨床評価データの収集は、計画通りに実施されている。特に、実験参加者の確保については、24年度の計画よりも被験者の数が上回る状況になっている。また25年度の計画に含まれていた視線計測の解析も実施済みである。今後はさらにASDハイリスク児を中心に検討していくことが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度も引き続き、ASDハイリスク児を中心にリクルートする。24年度では、特に乳児期のASDハイリスク児のリクルートが困難であった。大学病院でリクルートを行う場合、子どもの年齢が比較的高く、診断もつく状態になっているケースが少なくない。したがって、世田谷区内の保健所や子育て広場などを対象にしてリクルートする必要がある。また、ある程度のサンプル数が確保されたところで、性差や年齢を統制して解析する必要がある。ASDハイリスク児の特徴を把握するために、視線行動の特異的なパターンを明らかにする。また、人物、幾何学模様、形などを注視する時間を2群比較することにより、どの部分への関心が高いかについて検証する。さらに解析結果をまとめ、中間報告として国内外の学会での演題提出を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた状況については、当初の研究計画よりも研究が進展しているため、当初計画していなかった他の研究に発展する可能性が出てきたためである。その研究については、ASDハイリスク児の社会性の障害の特徴とASDハイリスク児を養育する親の育児感情について検討することである。 研究費の使用計画については、ASDハイリスク調査のための謝金、学会発表時の旅費(3回)(京都(2回)・アメリカを予定)、視線計測機のため使用機器(パソコン周辺機器、デジタルカメラ、プリンター等)、解析ソフトを検討している。
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Research Products
(3 results)