2015 Fiscal Year Annual Research Report
視線計測を用いた広汎性発達障害の早期診断システムの開発
Project/Area Number |
24790627
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
金井 智恵子 昭和大学, 発達障害医療研究所, 講師 (00611089)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 視線計測 / 早期発見 / 乳幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
診断前のASD(自閉症スペクトラム)ハイリスク児の視線行動パターンを明らかにするために、視線計測を用いて検討した。対象は、乳幼児38名(ASDハイリスク児群(ASD) 12名、定型発達児群(TD) 26名)であり、ASD群ハイリスクはASD家族歴あり, DQ70以上とした。評価ではM-CHATと新版K式発達検査というテストで実施した。両群で年齢・性別において有意差はなかった。ビデオの刺激は50秒の長さで音声なし、4ビデオクリップから構成されており、画面片側に幾何学模様(GI)、残り片側画面には、人物動画(TV)が呈示される。 結果はASDの方が、GIを好み、TDの方がTVを好む傾向が示された。したがって、ASD群では人の顔等ソーシャルな刺激に対して関心を示さない傾向があるため、ASDハイリスクを見極める重要な指標の可能性がある。 また予想外の展開として、ASDハイリスク児を持つ母親の育児に関する悩みも多くみられたため、母親も対象にして育児感情について検討した。その結果、TDの母親に比べて、ASDの母親の方が育児ストレスが高い傾向が示され、その中でも社会的孤立が高かった。つまり、母親は子どもの発達に違和感を感じているけれども、周囲に相談する場所がほとんどないことが問題として浮き彫りになった。したがって、地域で子どもの発達に心配をもつ母親の社会的孤立を予防することが最重要課題と考え、平成26年度より地域の親子グループを実施している。 最後にまとめると、ASDの早期マーカーとして生物学的指標が確立されることにより、ASD早期診断システムの構築作りが可能になるだけではなく、早期段階でそれぞれの子どもに適した支援や家族の支援につなげるための科学的エビデンスとして社会に貢献できる。
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