2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンサーによるエピゲノム解析を用いた新規心不全治療ターゲット分子探索
Project/Area Number |
24790757
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
肥後 修一朗 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00604034)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 次世代シークエンサー / エピゲノム / 心不全 |
Research Abstract |
本研究では、心不全の病態解明、新たな薬剤標的探索を目標に、次世代ツールを用いた分子スクリーニング系の確立を目的とした。培養心筋細胞を用いた基礎的検討の後、マウス圧負荷心不全モデルを用い、代表的な活性化ヒストン修飾に着目し、クロマチン免疫沈降法、高速次世代シークエンス解析により網羅的エピゲノム解析を行った。また同時にRNAシークエンス法による転写発現解析を行った。具体的内容として、マウス正常心臓組織、圧負荷心臓組織からのクロマチン分画の抽出、特異抗体による免疫沈降、DNAの精製、次世代シークエンサー解析のためのライブラリ作成に至る分子生物学的な手法を確立した。同時に、Linuxサーバーを用いて、得られる膨大なシークエンス結果を対象ゲノム配列へマッピングし、その結果から特異的な修飾変化・発現変化を示す遺伝子リストの作成に至る解析パイプラインの構築を行った。 ラット培養心筋細胞を用いた基礎的検討では、フェニレフリンによる薬剤刺激により、特定の遺伝子座のクロマチン状態が動的に変化することを見出した。圧負荷心不全により急性圧負荷モデル、慢性圧負荷モデルを作成し各病態においてエピゲノム解析を行ったところ、活性化エピゲノム状態が外部環境刺激により変化すること、その変化の程度は転写レベルの変化に必ずしも相関しないこと、病期により変化する遺伝子群が異なることが明らかとなった。これら特異的に変化する遺伝子群より、心不全の病態に関連する分子を抽出し、機能解析を行うことを次年度の目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサー解析系は、DNAの免疫沈降による濃縮・適切な断片化・サイズ選択・精製といった分子生物学的な手法と、その後に得られる膨大なデータについて、ファイルの変換・対象ゲノム配列へのマッピング・可視化・正規化・定量化・リスト化といった情報分析手法に大きく2分され、その双方が結果を得るために必要とされる。本研究では、これら解析系の新たな立ち上げ、構築が当初最も困難な課題と予想された。 しかし、この1年において目的DNAの取得・精製・ライブラリ作成に至る分子生物学的手技の確立が行えたこと、また、その後の膨大なデータを解析するLinux専用サーバーでのドライ解析について一定の成果が得られたことから、当初予想に比し、プロジェクトとして順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立した次世代シークエンサーを用いたスクリーニング系を用いて、さらに治療介入対象となり得る候補分子の同定を行う必要がある。そのためには、得られた膨大なデータを可視化、さらにリスト化する作業が必要であり、従来のDNAマイクロアレイのような簡便なユーザーインターフェースを備えたソフトはまだ一般に利用できる状況でないため、専用Linuxサーバー、LinuxPC言語を用いた独自のパイプラインアルゴリズムの構築が必要である。現時点でChIPシークエンス、RNAシークエンスに関して、データの加工、ゲノム配列へのマッピング、その正規化、定量化の解析パイプラインを確立したが、最も肝要である対象コントロールと病態群との比較解析から対象分子を抽出するアルゴリズムを模索中である。特に病態間でのエピゲノム状態の比較を定量的に行った報告はないため、新たな解析系の確立が必要とされている。 また、いくつかの候補分子を抽出した後には、培養心筋細胞、遺伝子改変マウス、遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いた機能解析を予定している。具体的には、siRNAによる下流ターゲットの探索、アデノウイルス導入による形態解析、独自の技術によるゼブラフィッシュ心臓への遺伝子導入による形態解析により、その分子が心不全進展のどの段階で、どのように関与するのかを明らかにし、分子への介入による治療方法の可能性探求を目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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