2012 Fiscal Year Research-status Report
血管内膜肥厚における酸化ストレス防御応答制御因子Nrf2の役割
Project/Area Number |
24790785
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
芦野 隆 昭和大学, 薬学部, 助教 (00338534)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 動脈硬化 / Nrf2 / 血管平滑筋細胞 / 血小板由来増殖因子 / 細胞遊走 |
Research Abstract |
転写因子Nrf2は、各種抗酸化酵素の遺伝子発現を統合的に制御することで、生体を酸化ストレスから保護している。虚血性心疾患につながる動脈硬化発症も酸化ストレスが関与していることが明らかとなっていることから、本申請研究は、血管傷害後の内膜肥厚におけるNrf2システムの役割解明を目的とした。動脈硬化症の発症と進展は、血管内皮傷害に引き続く単球の接着、血管平滑筋細胞(VSMC)の遊走・増殖、細胞外基質の合成といった段階を経て起きる。平成24年度は、新生内膜肥厚の重要なステップであるVSMC遊走および血管傷害後の内膜肥厚におけるNrf2の役割について以下の点を明らかにした。 1.血管傷害後の内膜肥厚におけるNrf2の役割 マウス大腿動脈にワイヤー傷害を施し、血管傷害部におけるNrf2の局在を調べた結果、Nrf2は傷害1週間後において、血管内腔側のVSMCで高発現することが明らかとなった。そこでWild-typeおよびNrf2遺伝子欠損(KO)マウス大腿動脈にワイヤー傷害を施し、4週間後の新生内膜を測定し比較したところNrf2-KOマウスにおいて血管新生内膜の肥厚が有意に増悪した。 2.VSMC遊走におけるNrf2の役割 VSMC遊走を惹起する血小板由来増殖因子(PDGF)刺激により、細胞内の活性酸素(ROS)レベルが上昇し、並行してNrf2の核移行とその標的遺伝子であるNqo1、Hmox1、Txn1の誘導が観察された。そこでsiRNAを用いたNrf2阻害実験を行った結果、PDGF刺激によるROSレベル上昇が増強した。さらにVSMCにおけるNrf2の機能的意義について細胞遊走アッセイにより確認したところ、Nrf2 siRNA処置によりPDGFによる細胞の遊走能が増強した。 以上の結果から、Nrf2はPDGF刺激VSMC遊走を制御することで、血管内膜肥厚を抑制していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Nrf2-KOマウスを用いた検討により、in vivoで血管傷害後の内膜肥厚にNrf2が関与していることを見出した。さらにNrf2 siRNAを用いたin vitro系の実験において、Nrf2が血管傷害後の内膜肥厚に関与するPDGFによるVSMC遊走を制御していることを明らかにした。これらの発見は、血管恒常性維持に酸化ストレスの制御が重要であり、Nrf2システムが動脈硬化進展を抑制していることを示唆している。平成24年度に明らかにしたNrf2の血管内膜肥厚抑制機能は、Nrf2の下流に存在する個々の抗酸化タンパク質の機能によるものと考えられる。個々のNrf2標的遺伝子の血管内膜肥厚における機能は来年度以降の課題であるが、おおむね順調に研究は進んでいるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究において、Nrf2の欠損により血管新生内膜肥厚が増悪し、VSMC遊走が亢進することが明らかとなった。この結果から、Nrf2により制御されている様々な抗酸化タンパク質が機能することで血管恒常性維持に貢献しているものと示唆される。そこで、今後は引き続きVSMCを用いて、PDGF刺激によるROS産生や細胞遊走における個々のNrf2標的遺伝子の機能についてsiRNAを用いて検討を行う。さらに、動脈硬化症発症と進展に関与する単球/マクロファージの接着および炎症におけるNrf2の役割についても、Wild-typeおよびNrf2遺伝子欠損マウスから単離した単球/マクロファージを用いて、同様に細胞遊走アッセイや一酸化窒素合成酵素および炎症性サイトカインの遺伝子発現変動の影響について検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子改変マウスの繁殖維持費および野生型マウス購入費、遺伝子発現を測定するためのリアルタイムPCR用試薬、タンパク質発現を測定するための抗体や各種生化学用実験試薬類の消耗品購入に研究費を当てる予定である。
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Research Products
(6 results)