2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790910
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 正稔 東京大学, 医学部附属病院, 研究員 (30396725)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マクロファージ / 脂肪肝 |
Research Abstract |
ラット肝腫瘍細胞株(Fao細胞)に、マクロファージ培養細胞株RAW264.7細胞のconditioned medium(CM)を作用させたときに、惹起させられる脂肪蓄積には、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ(PPARγ)と、その標的遺伝子(Fabp4, FSP27, CD36など)の発現上昇が伴っていることを見出した。 In vivoにおいても検討したところ、長期に高脂肪食を与えられた、C57BL/6Jマウスの肝臓において、PPARγとその標的遺伝子の野生型マウスに高脂肪食を負荷すると、長期高脂肪食により、肝臓においてこれらの、遺伝子の発現が著明に上昇していることが明らかになった。脂肪細胞においてPPARγが分化・成熟のマスターレギュレーターの役割を持つことが知られているが、興味深いことに、この高脂肪食摂餌開始後脂肪組織におけるPPARγとその標的遺伝子の発現上昇は、比較的早期にピークアウトして低下に転じていた。一方で、肝臓における脂質合成制御に関わる遺伝子の発現を解析すると、SREBP-1cの持続的な発現上昇を認めなかったが、PPARγとその標的遺伝子の発現は持続的に上昇することを見出した。また同時に肝臓マクロファージが著明に増加することを見出した。今まで肝臓におけるPPARγの上昇の意義は殆ど明らかにされていないが、これらin vitroおよびin vivoのデータから、脂肪肝の病態形成にPPARγが重要な役割を担っている可能性が示唆された。 そこで現在、このマクロファージ由来物質(MDSIF)がPPARγリガンド活性をもつかどうかを検討している。その結果を踏まえた上でMDSIFを同定する実験と、MADSIFを直接同定する実験を並行して進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、当初の計画に加えて、肝臓マクロファージの肝細胞の病態における意義をまずin vivoにおいて確認することに、もう一つの重点を置いた。その結果、in vivoにおいても、肝臓マクロファージ由来物質が、肝細胞における脂質蓄積を惹起する可能性を確認することができた。またこのメカニズムに肝細胞におけるPPARγが重要な役割を担っている可能性をin vivoにおいて確かめることができた。 一方で、事項に述べる、MDSIFの同定にかかわる実験は、現在進行中である。 その一つである、肝細胞におけるレポーターアッセイを用いた、PPARγリガンド活性調べる実験は、肝細胞へのベクターのトランスフェクション効率が悪い事、またバックグラウンドが高い(コントロールベクターの導入や細胞の老化などの変化によっても、レポーター活性の変化が大きい)ことなどから、有意なデータの収集に苦労している。
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Strategy for Future Research Activity |
MDSIFがPPARγリガンド活性をもつかどうかを引き続き検討する。その結果PPARγリガンド活性が認められれば、まずこれが既知の15d-PGJ2かどうかをWestern blottingやELISAなどで直接検討する。尚、これらの解析で結論が出ない場合も、今後は次のMass spectrometry(MS)に進むことを検討している。 並行して、物理生化学的検討により、MDSIFが脂質なのか蛋白なのかアミノ酸・糖などの小分子か等の検討を行う。マクロファージCM中のMDSIFに対して、水溶性/脂溶性分画の検討、熱や凍結融解に対する安定性、プロテアーゼ処理、分子ふるいを用いた大まかな分子量の推定、等の物理生化学的検討を行い、分子カテゴリーを絞り込む。 上記の予備検討を踏まえ、MDSIFの本体をMS解析により明らかにする。 具体的には以下の如く計画している。試料として、CMと、肝細胞lysateの2つを用いる。CMは、マクロファージの培養上清と、control細胞の培養上清をMS解析で比較する。肝細胞に直接作用としてMDSIFが働く場合、このCMの比較から同定を目指す。次に上述のそれぞれのCMをふりかけ、マクロファージのCMによって脂肪合成が誘導された肝細胞のlysateと、control細胞のCMで脂肪合成が誘導されていない肝細胞のlysateをMS解析で比較し、以下の3つの視点から検討する。1)肝細胞における代謝物質がMDSIFとして作用する可能性があるため、肝細胞lysateからMDSIFを同定。2)CM中にMDSIFが含まれていたとしても、control細胞のCMとの比較では同定困難であった場合に、MS解析による肝細胞の網羅的な脂質代謝マップからMDSIFを間接的に推定する。3)CM中からMDSIFが同定された場合、脂肪肝惹起のメカニズムを同じく代謝マップから検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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