2013 Fiscal Year Research-status Report
インスリン受容体基質のモノユビキチン化を介したインスリン活性調節機構の解明
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24790928
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福嶋 俊明 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (70543552)
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Keywords | インスリン / 細胞内シグナル / ユビキチン / インスリン受容体基質 / Nedd4 |
Research Abstract |
研究代表者は、これまでに、インスリン/IGFシグナルを仲介するIRS-2にユビキチンリガーゼNedd4が結合すると、IRS-2がモノユビキチン化され、インスリン/IGFに応答したIRS-2のチロシンリン酸化が促進、インスリン/IGF活性が増強されることを見出してきた。本研究では、この現象の分子機構と生理的意義の解明を目的としている。 平成25年度は、まず、前年度に続いてNedd4とIRS-2の結合の制御機構の解析を進めた。詳細な解析の結果、「Nedd4のC2ドメインとHECTドメインの分子内相互作用が解除されることにより、Nedd4とIRS-2の相互作用が可能となる」という新しい制御機構が存在することが示された。 次に、Nedd4によるIRS-2のユビキチン化部位を調べた。IRS-2に存在する39個のリジン残基を種々の組み合わせでアルギニン残基に置換した変異体を作製し解析を進めた結果、IRS-2のC末端側の複数のリジン残基がユビキチン化部位であることが明らかとなった。このユビキチン化部位が、Nedd4によるIRS-2のチロシンリン酸化の増強効果に必要であることも確認された。 更に、モノユビキチン化されたIRS-2を認識するタンパク質としてEpsin1を同定した。Epsin1はユビキチン結合モチーフを有し、また、細胞膜のクラスリン被覆小胞形成部位に集積することが知られている。Epsin1を発現抑制すると、Nedd4によるIRS-2のチロシンリン酸化の増強効果が消失した。 以上の解析から、「Nedd4によってユビキチン化されたIRS-2はEpsin1と相互作用することにより細胞膜にリクルートされ、そこに存在するインスリン/IGF受容体キナーゼによってチロシンリン酸化されやすくなり、インスリン/IGFシグナルが増強される」という全く新しい分子機構が存在していると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Nedd4-IRS-2複合体の形成機構に関しては、詳細な結合領域を特定でき、Nedd4のダイナミックな構造変化を介してIRS-2との複合体形成が可能となることを示すことができた。一方、Nedd4のIRS-2結合部位のみからなる変異体を過剰発現することにより、内在性のNedd4とIRS-2の結合を阻害できるか検討を進めているが、現在まで阻害効果は見られておらず、発現量を増加させるなどの工夫が必要である。 IRS-2のモノユビキチン化がインスリン/IGF刺激に応じたIRS-2のチロシンリン酸化を増強する分子機構については、IRS-2のユビキチン化部位が特定でき、その部位がIRS-2のチロシンリン酸化の増強に必須であることを明らかにできた。また、Epsin1がユビキチン化IRS-2に結合しおそらくIRS-2を細胞膜へとリクルートする、このことによりインスリン/IGF受容体によるIRS-2のチロシンリン酸化が増強されることが明らかとなった。ただし、この解析の予備検討で、ユビキチン化IRS-2の質量分析により多数のユビキチン化候補部位が同定されたため、最終的にIRS-2の全てのリジン残基に変異を導入して調べる必要が生じ、変異体作製に約半年の時間を要したため、研究に遅れが生じた。 最後に、上記の解析で明らかとなったメカニズムを介して生体内の肝臓のインスリン活性が増強することを証明するため、マウスの肝臓にアデノウイルス法によりNedd4のshRNAを導入しインスリンシグナルや糖代謝を解析する予定であった。現段階では、Nedd4の発現抑制が十分でなく、shRNAの配列設計等を工夫する必要がある。 このように、生体内でのNedd4-IRS-2複合体の役割は解明が遅れているが、それを補う形でNedd4-IRS-2複合体の形成機構やシグナル増強機構の解析を大きく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Nedd4によるインスリンシグナル修飾機構の解析の続きとして、Nedd4によってユビキチン化されるリジン残基をアルギニンに置換したIRS-2変異体を肝細胞に導入、同時に内在性IRS-2を発現抑制し、インスリン刺激に応答したシグナル伝達や糖代謝活性に及ぼす影響を検討する。また、Epsin1によるIRS-2の細胞内局在制御についても調べる。 一方、生体内の肝臓におけるNedd4-IRS-2複合体の役割を調べるため、マウスの肝臓にアデノウイルス法によりNedd4のshRNAを導入しNedd4の発現を抑制する実験系、IRS-2とNedd4の結合領域を過剰発現しNedd4-IRS-2複合体の形成を阻害する実験系を構築する。これらに加え、他のグループが作製したNedd4のコンディショナルノックアウトマウスを利用するため、現在交渉を進めている。これらの系を用いこの複合体の生理的意義の解明を進める。 また、これまでの成果から、Nedd4のダイナミックな構造変化を介してIRS-2との複合体形成が可能となるというモデルを示すことができた。このモデルを直接的に証明できれば、Nedd4ファミリーユビキチンリガーゼの新しい基質認識調節機構として重要な研究成果になると期待される。そこで、研究代表者が平成26年度から受ける基盤研究Cの研究課題の一部として、細胞内でのNedd4の構造変化をFRET法により可視化する系を構築し、モデルの証明に取り組む予定である。また、肝細胞をグルコースやアミノ酸が欠乏した培地で培養すると、Nedd4とIRS-2の結合量が増加するが、この際、Nedd4と相互作用している他のタンパク質をLC-MS/MSを用いて同定している。次の基盤研究Cでは、これらのタンパク質がNedd4のIRS-2への親和性を増加させるか検討し、これを通じて結合制御機構の詳細を明らかにしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にユビキチンリガーゼNedd4によるIRS-2のユビキチン化部位の同定のために、ユビキチン化IRS-2を高感度質量分析で解析した結果、予想に反して多数のユビキチンか部位が同定された。このため、最終的にIRS-2の全てのリジン残基に変異を導入して調べる必要が生じ、変異体作製に約半年の時間を要したため、研究に遅れが生じた。 また、Nedd4-IRS-2複合体の肝臓における役割を解明するため、マウスの肝臓にアデノウイルス法によりNedd4のshRNAを導入する、あるいは、IRS-2とNedd4の結合領域を過剰発現しNedd4-IRS-2複合体の形成を阻害し、インスリンシグナルや糖代謝を解析する予定であった。しかし、Nedd4の発現抑制や複合体形成阻害の効率が十分でなく、これも研究の遅れの原因となった。 Nedd4によるインスリンシグナル修飾機構の解析の続きとして、Nedd4によってユビキチン化されるリジン残基をアルギニンに置換したIRS-2変異体を肝細胞に導入、同時に内在性IRS-2を発現抑制し、インスリン刺激に応答したシグナル伝達や糖代謝活性に及ぼす影響を検討する。また、Epsin1によるIRS-2の細胞内局在制御についても調べる。 一方、生体内の肝臓におけるNedd4-IRS-2複合体の役割を調べるため、マウスの肝臓にアデノウイルス法によりNedd4のshRNAを導入しNedd4の発現を抑制する実験系、IRS-2とNedd4の結合領域を過剰発現しNedd4-IRS-2複合体の形成を阻害する実験系を確立する。この際、導入するshRNAの配列や遺伝子導入法を工夫し、Nedd4の発現抑制や複合体形成阻害の効率が十分になるようにする。これらの系を用い、この複合体の生理的意義の解明を進める。
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[Journal Article] Lactobacillus casei strain Shirota protects against non-alcoholic steatohepatitis development in a rodent model.2013
Author(s)
Okubo H, Sakoda H, Kushiyama A, Fujishiro M, Nakatsu Y, Fukushima T, Matsunaga Y, Kamata H, Asahara T, Yoshida Y, Chonan O, Iwashita M, Nishimura F, Asano T.
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Journal Title
American Journal of Physiology –Gastrointestinal and Liver Physiology
Volume: 305(12)
Pages: G911-918
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Familial short stature is associated with a novel dominant-negative heterozygous insulin-like growth factor 1 receptor (IGF1R) mutation.2013
Author(s)
Kawashima Y, Hakuno F, Okada SI, Hotsubo T, Kinoshita T, Fujimoto M, Nishimura R, Fukushima T, Hanaki K, Takahashi S, Kanzaki S.
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Journal Title
Clinical Endocrinology.
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Par14 associates with IRS-1, thereby enhancing insulin-induced IRS-1 phosphorylation and metabolic actions.2013
Author(s)
Zhang J, Nakatsu Y, Sinjo T, Guo Y, Sakoda H, Yamamotoya T, Otani Y, Okubo H, Kushiyama A, Fujishiro M, Fukushima T, Tsuchiya Y, Kamata H, Nishimura F, Katagiri H, Takahashi SI, Kurihara H, Uchida T, Asano T.
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Journal Title
J Biol Chem.
Volume: 288(28)
Pages: 20692-20701
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Resistin-Like Molecule β Is Abundantly Expressed in Foam Cells and Is Involved in Atherosclerosis Development.2013
Author(s)
Kushiyama A, Sakoda H, Oue N, Okubo M, Nakatsu Y, Ono H, Fukushima T, Kamata H, Nishimura F, Kikuchi T, Fujishiro M, Nishiyama K, Aburatani H, Kushiyama S, Iizuka M, Taki N, Encinas J, Sentani K, Ogonuki N, Ogura A, Kawazu S, Yasui W, Higashi Y, Kurihara H, Katagiri H, Asano T.
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Journal Title
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
Volume: 33(8)
Pages: 1986-1993
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] インスリン受容体RNAの選択的スプライシングの新しい制御機構2014
Author(s)
Yuka Narita, Atsufumi Ozoe, Toshiaki Fukushima, Naoyuki Kataoka, Akihiro Ito, Minoru Yoshida, Tomoichiro Asano, Kazuhiro Chida, Fumihiko Hakuno, Shin-Ichiro Takahashi
Organizer
Japan Endocrine Society's Annual Meeting
Place of Presentation
福岡
Year and Date
20140424-20140426
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[Presentation] Nedd4-IRS2 complex: mechanisms of the complex formation and its roles in prostate cancer cell proliferation2013
Author(s)
Toshiaki Fukushima, Hidehito Yoshihara, Haruka Furuta, Fumihiko Hakuno, Kazuhiro Chida, Yasushi Saeki, Keiji Tanaka, Akihiro Ito, Minoru Yoshida, Yusuke Nakatsu, Hideaki Kamata, Shin-Ichiro Takahashi, Tomoichio Asano
Organizer
Annual Meeting of the Molecular Biology Society of Japan
Place of Presentation
神戸
Year and Date
20131203-20131206
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[Presentation] The deubiquitinating enzyme, USP9X positively regulates insulin-like growth factor (IGF)-dependent cell growth by inhibition of degradation of IGF-I receptor (IGF-IR) and insulin receptor substrate (IRS)-2 in cancer cells2013
Author(s)
Haruka Furuta, Hidehito Yoshihara, Toshiaki Fukushima, Yasushi Saeki, Keiji Tanaka, Akihiro Ito, Minoru Yoshida, Tomoichio Asano, Kazuhiro Chida, Fumihiko Hakuno, Shin-Ichiro Takahashi
Organizer
Annual Meeting of the Molecular Biology Society of Japan
Place of Presentation
神戸
Year and Date
20131203-20131206
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[Presentation] PGAM5, a mitochondrial protein phosphatase, regulates the serine/threonine phosphorylation status and stability of insulin receptor substrates.2013
Author(s)
Yosuke Yoneyama, Junichi Inobe, Yukako Kida, Toshiaki Fukushima, Shiori Sekine, Tomoichiro Asano, Kazuhiro Chida, Kohsuke Takeda, Fumihiko Hakuno, Shin-Ichiro Takahashi
Organizer
Annual Meeting of the Molecular Biology Society of Japan,
Place of Presentation
神戸
Year and Date
20131203-20131206
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