2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト染色体逆位モデルマウスを用いたEVI1高発現による白血病幹細胞維持機構の解析
Project/Area Number |
24790957
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 未来子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80508309)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | EVI1 / 3q21q26 / 白血病 / 白血病幹細胞 / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
EVI1遺伝子の高発現は急性骨髄性白血病(AML)の約10%にみられ、予後を著しく悪化させる。本研究は、EVI1遺伝子を高発現する造血幹細胞および白血病幹細胞の性質を明らかにすることを目的としている。EVI1遺伝子を高発現するAMLの約30%に、EVI1遺伝子が存在する3番染色体長腕26領域(3q26)と同じく3番染色体長腕21領域(3q21)との間の転座または逆位がみられる。そこで、3q26領域と3q21領域をそれぞれ含む大腸菌人工染色体(BAC)クローンをCre-Loxシステムによって連結し、逆位アレルを再現する約200 kbのBACクローンを作製した。このクローンを用いてトランスジェニックマウス(3q21q26マウス)を作製したところ、これらのマウスでは造血組織特異的にEVI1遺伝子の高発現がみられた。また、これらのマウスは6ヶ月令頃から白血病を発症した。白血病を発症したマウスを解析したところ、多数の組織において白血病細胞の浸潤がみられたことから、ヒトのEVI1遺伝子高発現白血病と同様に悪性度の高い白血病であることが考えられた。これらの結果から、3q21q26マウスはEVI1遺伝子高発現白血病のモデルであるといえる。そこで、EVI1遺伝子高発現白血病の発症機構を明らかにするために、このマウスの造血幹細胞および前駆細胞画分をフローサイトメトリーによって解析した。その結果、白血病を発症する前から、正常な造血幹細胞および前駆細胞とは異なる画分に細胞の蓄積が観察された。この細胞群は高いコロニー形成能をもつことから、この細胞群が白血病幹細胞の出現に関与すると考え、次年度にさらなる解析を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにEVI1遺伝子の発現量が異なる3系統の3q21q26マウスを樹立している。24年度に行ったマウスの長期観察により、3q21q26マウス3系統すべてが6ヶ月令頃から白血病を発症することが明らかになった。この白血病細胞は多数の組織に浸潤しており、悪性度の高いものであった。計画当初は3q21q26マウスが白血病を発症するか未定であり、造血幹細胞の解析を主に予定していたが、24年度の解析から3q21q26マウスが白血病を発症することがわかったため、白血病幹細胞の解析も含めて実施することにした。3q21q26マウスにおいて、3ヶ月令、6ヶ月令(白血病発症前)および白血病発症後の造血幹細胞および前駆細胞をフローサイトメトリーによって解析したところ、白血病発症前から、野生型マウスには存在しない表面マーカーの組み合わせをもつ造血前駆細胞様の細胞が蓄積していることがわかった。さらに、この細胞の性質をコロニーアッセイによって解析したところ、コロニー形成能が高いことがわかった。これらの結果から、EVI1遺伝子の高発現によって、白血病発症前から異常な細胞が蓄積し、これらの細胞がさらなる変異を得て白血病幹細胞になるのではないかと考えられた。24年度に3q21q26マウスのC57BL/6系統への純系化が完了したので、25年度にはこのマウスを用いて骨髄移植実験を行い、3q21q26マウスで蓄積している異常な細胞の性質を明らかにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度では、3q21q26マウスの造血幹細胞および白血病幹細胞の性質解析を進めるとともに、24年度に純系化した3q21q26マウスを用いて骨髄移植実験を行う。白血病発症前および発症後の3q21q26マウスの骨髄から造血幹細胞、前駆細胞および3q21q26マウスに特異的に蓄積している細胞を分離し、それぞれを放射線照射マウスに移植することによって、幹細胞機能を解析する。また、それぞれの細胞において発現アレイ解析を行い、幹細胞としての性質を支えている転写因子EVI1の標的遺伝子を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初計画していた造血幹細胞、白血病幹細胞の解析の一部(コロニーアッセイ、細胞周期解析、アポトーシス解析)を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した解析に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。 25年度では、3q21q26マウスの移植実験を行う予定なので、マウスの購入費と飼育費として使用する。また、解析に用いるフローサイトメトリー、発現アレイの試薬の購入費、またこれらの解析に用いる機器の使用料として使用する。この研究成果を25年秋に行われる海外学会で報告するため、旅費として使用する。
|
Research Products
(6 results)