2012 Fiscal Year Research-status Report
うつ病患者とうつ病モデルマウス双方から同定されたNoxaのうつ行動に対する役割
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24791215
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山形 弘隆 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10549934)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | うつ行動 / 神経可塑性 |
Research Abstract |
Noxaノックアウト(KO)マウスのうつ様行動を、砂糖水嗜好性テスト(マウスは水と砂糖水では砂糖水を好んで飲むが、うつ状態になると砂糖水の嗜好性が減少する。)、強制水泳テスト(マウスは水に入れると逃げようとしてもがくが、しばらくするとあきらめて無動となる。うつ状態では無動時間が増える。)、社交性テスト(同一ケージに幼若マウスを入れると興味を持って接触するが、うつ状態では接触時間が減少。)などを用いて解析した。Noxa KOマウスは、野生型(WT)マウスと比較して、社交性テストにおいて社交性が向上していることが分かった。しかし、砂糖水嗜好性テスト、強制水泳テストにおいては、Noxa KOマウスとWTマウスで有意な差は認めなかった。次に、攻撃性の高いCD1マウスに5分間攻撃させ、その後仕切りのある同一ケージで24時間飼育する社会的敗北ストレスを10日間負荷した後に、Noxa KOマウスのうつ様行動を調べた。すると、社会的敗北ストレス負荷したNoxa KO マウスは、社交性テストにおいてWTマウスと比べてストレスに抵抗性を示し、うつ様行動が抑制された。しかし、砂糖水嗜好性テストや強制水泳テストでは、やはり有意な差が認められなかった。これらの結果から、Noxa KOマウスは一部のうつ様行動に抵抗性を示すことが示唆された。次に、Noxa KOマウスにEdU取り込みをさせ、海馬脳神経細胞の増殖能を調べることとした。社会敗北ストレス負荷後にEdU取り込みを行わせて、増殖細胞数を測定するプロトコルと、EdU取り込みをさせた後に社会敗北ストレス負荷して、増殖細胞の生存・分化を調べるプロトコルと両方を行い、脳切片を作成した。マウス海馬初代培養神経細胞にNoxa, FoxO3を過剰発現させて神経突起伸展を調べようとしたが、細胞死を誘導してしまったため、細胞死を誘導しない条件を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの行動実験はストレスあり、ストレスなしのいずれの条件でも、予定通りすべて終了することができた。また、脳組織の免疫染色に関しても、切片作成を順調に行うことができた。海馬初代培養神経細胞の実験に関しては、予定通りに行ったが、良い条件が見つからなかったため、プロトコルの見直しを行っているところである。このように、一部の実験は予想された結果こそ得られなかったが、研究は概ね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
Noxa KOマウスの海馬や線条体等にアデノウィルスベクター等を用いてNoxaを発現させて、ストレス負荷を行い、ストレス抵抗性が消失し、うつ様行動が出現するかどうか調べる(n=10)。Noxa KOマウスにNoxaを再発現させた時の海馬等の脳部位について、神経新生やスパイン形成などを解析する(n=10)。NoxaやFoxO3のPoint Mutantなどを用いて、引き続き初代培養神経細胞で神経突起伸展・スパイン形成などを解析する。早期抗うつ効果のあるHDAC inhibitor:SAHA投与後にFoxO3を免疫沈降し、アセチル化抗体でFoxO3のアセチル化を確認する。また、FoxO3のリン酸化についても検討する。各HDACをsiRNAを用いて減少させた後にFoxO3のアセチル化を調べて、神経突起伸展に関与するHDACを特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アデノウィルス精製に必要なウィルス精製キットは、1キット20万~40万円である。手術カニューレは1匹のマウスにつき約4000円必要で、手術予定のマウス数は約80匹である。免疫沈降に必要なプロテインA/Gアガロースは、I社では5mlで6.1万円である。抗体は1種類につき約5万円である。Noxaなどのノックダウンに必要なsiRNAは、D社では1種類5nmolで8.2万円である。トランスフェクション試薬は、I社では1本7.8万円である。また、Real time PCRに用いるSYBR Green (14.5万円/300サンプル)の購入が必要である。
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