2012 Fiscal Year Research-status Report
膵癌微小環境に着目したウイルス治療の新展開-間質におけるウイルス拡散と導入効率-
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24791432
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安井 隆晴 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (60611283)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低酸素微小管環境 / 癌間質相互作用 / CTGF |
Research Abstract |
膵癌は低酸素微小環境にさらされており、このことが膵癌のウイルス治療の抵抗性をきたす要因となっていると考えられている。我々はこれまでにも低酸素環境間質を構成する線維芽細胞がウイルスの導入効率を低下させることや、 癌間質相互作用を担うHGF/MET経路を阻害することでアデノウイルスの導入効率が改善することを発見・報告してきた。また、低酸素下での癌細胞、線維芽細胞の生物学的動態についても研究・報告してきた。今回、我々はまず、低酸素環境下の微小環境におけるウイルス治療抵抗性に影響を及ぼすと考えられ癌間質相互作用のさらなる解明のため、膵星細胞と膵癌細胞の低酸素環境下における相互作用について検討した。低酸素環境におかれた膵星細胞と膵癌細胞株との共培養や低酸素環境下で培養した膵星細胞中の培養上清により膵癌細胞株を培養することで、膵癌細胞株の浸潤能が増強することが判明した。癌の浸潤能に関わる因子の発現をnormoxiaおよび低酸素環境下で比較検討すると、いくつかの可溶性因子が低酸素環境下で培養した膵星細胞に高発現していた。特にCTGFは低酸素環境下の膵星細胞およびその培養上清中の発現がRNA・タンパクレベルで増強しており、その発現をsiRNAの導入によりノックダウンすると膵癌細胞株との共培養による膵癌細胞株の浸潤能を抑制することができた。このことは、CTGFが低酸素環境のけ癌間質相互作用の重要な因子であることを示唆するものであり、ウイルス治療抵抗性を克服するためのターゲットの1つになりうる重要な発見と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては膵癌のウイルス治療抵抗性の要因となりうる膵癌微小環境、とくに低酸素環境下における膵癌および膵癌間質細胞とくに膵星細胞との関係を検討した。その結果、CTGFが治療抵抗性に関与している可能性を解明することができた。しかしながら、このCTGFがアデノウイルス治療におけるどの段階にどの程度関与しているかについてはまだ検討できていない。また、低酸素環境だけでなく膵癌微小環境の特徴であるアシドーシス環境が遺伝子導入に与える影響についても検討する予定あったが、低酸素環境下での研究に一定の成果がみられたため低酸素環境の局面からの検討を重視したことで、アシドーシス環境における検討までは至らなかった。 同様に抗癌剤・放射線併用療法がウイルス導入効果増強効果へ与える影響についても検討予定であったが、これについても同様の理由で実施できていない。よって、進捗状況は当初の予定よりはやや遅れていると考えられるが、本年度に得られた研究成果は当初予想していたものよりも重要なものであり、来年度以降につながるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初本年度に予定していた研究であるアシドーシス環境および抗癌剤・放射線併用療法がウイルス治療に与える影響についての研究を進めると同時に、本年度の研究で解明したCTGFが遺伝子導入に与える影響についてその詳細なメカニズムを明らかにする。 低酸素微小環境がウイルスのエンドサイトーシスや拡散効率に与える影響とその機序についても検討する。ウイルス感染後の細胞内でのウイルスの動きを経時的に観察することで、 抗癌剤やアシドーシスがウイルスのエンドサイトーシスや拡散効率に及ぼす影響を観察する。 また、 抗癌剤やアシドーシスに暴露された膵癌細胞に対して、 薬剤・ウイルスのエンドサイトーシスや拡散効率に関わる分子の発現変化をMicroarray で網羅的に検索する。 さらに発現増加があるものではsiRNA を用いてそれぞれを抑制し、 逆に発現が低下しているものではplasmid を用いて強制発現させ、その影響を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PCR用試薬、遺伝子導入用試薬、competent cell、qRT-PCR試薬(1-2年目計30万)、ソート用モノクローナル抗体(3万×10本/1-2年目;計70万), Nucleofector用導入試薬(5万×5名/1年目25万)、siRNA(5-7万×5本/名×5名/1年目30万)、shRNA/レトロウイルス作成キット(10万×1箱/名×5名)、マウス等 (5千×20匹×2グループ×2セット/1-2年目40万)などの消耗品を経費として予定している。
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Research Products
(3 results)