2012 Fiscal Year Research-status Report
正常な前立腺上皮細胞分化過程における骨形成因子、アンドロゲンシグナルの機能解析
Project/Area Number |
24791667
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
大森 晶子 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 特別研究員 (50613535)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
前立腺癌の発症率は増加傾向にあり、これら上皮細胞制御異常に伴う癌疾患の発症/進行メカニズム解明が急務となっている。本研究では、上皮細胞制御異常に起因した前立腺疾患解明の基盤となる、正常な前立腺上皮細胞の分化/制御メカニズムを明らかにする事を目的として解析を行っている。マウス遺伝学的解析を主に、様々な器官形成に重要な役割を担うBmpシグナルに着目した実験を遂行している。 1.前立腺の正常発生に細胞増殖因子シグナル(Bmp)は如何に機能を果たすのか。 2.細胞増殖因子シグナル(Bmp)が生後急激に起きるホルモンの変化の中で、どのような動態、機能を果たすのか。これらを解明するため、本研究では上皮特異的Bmp受容体欠損マウス、過剰発現マウスの表現型解析を行い、さらにDNAマイクロアレイを含めた前立腺上皮分化を制御するBmpシグナル下流遺伝子の探索を行った。遺伝子変異マウスの表現型解析により、申請時に見いだしていた前立腺上皮細胞の過形成、分泌機能の異常は、前立腺発生期の上皮細胞分化異常に起因していることを明らかにした。さらにマイクロアレイ解析により、これら上皮細胞分化に必須な幾つかの候補遺伝子の関連を検討し、Nkx3.1がBmpシグナルによって制御されている可能性を見いだした。 Nkx3.1は前立腺上皮細胞分化及び癌抑制遺伝子として重要な機能を果たす事が知られている。Nkx3.1はアンドロゲンシグナルによって制御されていることが知られているが、細胞増殖因子との関連は未だ明らかでなかった。本研究によりBmpシグナルによる新たな発現制御メカニズムの可能性を見出した事は、前立腺疾患解明に向けた重要な基盤的知見となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.前立腺の正常発生に細胞増殖因子シグナル(Bmp)は如何に機能を果たすのか。 2.細胞増殖因子シグナル(Bmp)が生後急激に起きるホルモンの変化の中で、どのような動態、機能を果たすのか。 本研究の目的遂行のため、本研究では上皮特異的Bmp受容体欠損マウス、過剰発現マウスの表現型解析を行い、さらにDNAマイクロアレイを含めた前立腺上皮分化を制御するBmpシグナル下流遺伝子の探索を行った。遺伝子変異マウスの表現型解析により、申請時に見いだしていた前立腺上皮細胞の過形成、分泌機能の異常は、前立腺発生期の上皮細胞分化異常に起因されている可能性を示唆した。またBmpシグナルの上皮分化制御機構の解明に向けたマイクロアレイ解析により、これら上皮細胞分化に必須な幾つかの候補遺伝子がBmpシグナル改変マウス前立腺において、発現が減少している事を見出した。これら候補遺伝子とBmpシグナルとの関与は未だ報告が無く、引き続き24年度において発現制御メカニズムの解析を行う予定である。Bmpシグナルが前立腺上皮細胞分化に必須な遺伝子であり、その下流候補遺伝子を見出したことは、前立腺発生領域における上皮分化制御機構の一端をになう重要な知見であると考えている。総じてBmpシグナルの前立腺における機能解析はおおむね進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度において、Bmpシグナル改変マウス前立腺における分泌機能異常は、前立腺発生期の上皮細胞分化異常に起因していることを明らかにした。さらにマイクロアレイ解析により、これら上皮細胞分化に必須な幾つかの候補遺伝子がBmpシグナル改変によって、影響されている可能性を見いだした。これら候補遺伝子群の中でNkx3.1は、前立腺上皮細胞を制御し、また前立腺特異的な腺癌抑制遺伝子としても近年着目されている。本研究では、Bmpシグナル改変マウス前立腺発生初期からNkx3.1のmRNA発現低下を観察した。現在まで、前立腺においてNkx3.1発現とBmpシグナルとの関与は未だ報告が無く、引き続き24年度において発現制御のメカニズムの解析を行う予定である。Bmpシグナルの下流因子にあたるSmadとNkx3.1のマウス前立腺発現制御領域をクローニングし、Luc assay法、Chromatin Chip法を用いた転写制御レベルでの発現調節の可能性を解析する予定である。またヒト由来前立腺細胞株を用いてSiRNA実験、Bmpリガンド投与下でのNkx3.1発現変化をmRNAレベル、タンパク質レベルで定量する。これらの実験より、Bmp シグナルから上皮細胞分化制御に機能するNkx3.1発現の新規の発現制御メカニズムを解析する予定である。またNkx3.1は前立腺癌特異的癌抑制遺伝子と知られ、Nkx3.1遺伝子欠損マウスでは6ヶ月齢より前立腺癌前段階様症状を呈することが知られている。このため本研究のBmpシグナル改変マウスの6ヶ月齢においても、前立腺疾患との関連を組織学的に解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子発現制御解析のための細胞培養試薬、各種トランスフェクション試薬の購入を行う。またNkx3.1遺伝子のエンハンサー領域においてBmpr1a遺伝子過剰発現ベクター導入によるエンハンサー領域の活性を測定するためDual Luciferase reporter assayシステム試薬を購入予定である。Western blotによるタンパク質定量のための抗体や各種試薬、Real time PCRのためのサイバーグリーン試薬や各種遺伝子のプライマ-購入も行う。またマウス解析のための、飼育費及び免疫組織化学染色のための各種試薬を購入予定である。さらにあらゆる実験過程に必要なプラスチック製品、及び備品の購入を予定している。またこれらデータ解析のために必要なソフト類などパソコン関連機器の購入を計画している。さらに得られた研究成果についての学会発表、議論ための研究討論会への参加費用の支出が必要である。雑誌出版のための掲載費、英文構成費への支出を計画している。また、これら研究遂行のためのの書籍購入なども支出予定である。
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