2013 Fiscal Year Research-status Report
正常な前立腺上皮細胞分化過程における骨形成因子、アンドロゲンシグナルの機能解析
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24791667
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
大森 晶子 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 学内助教 (50613535)
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Keywords | Bmpシグナル / 上皮細胞分化 / 前立腺 / Nkx3.1 |
Research Abstract |
申請者は、Bmp シグナル下流因子(SMAD)が発生段階に応じて、上皮細胞において活性化されることを明らかにしてきた。さらに上皮特異的なBmp1型受容体(Bmpr1a) コンディショナルノックアウト(CKO)前立腺では、上皮細胞の分化異常、過形成、さらに分泌機能の異常が誘導されていた。これらの結果は、上皮性Bmpシグナルが、前立腺発生に重要な機能を果たすことを示す。続いて、Bmp シグナルによる上皮分化制御機構メカニズム解明のためDNA マイクロアレイを用いた候補遺伝子の探索を行い、転写因子として機能するホメオボックス遺伝子Nkx3.1の発現が低下している事を見出した。Nkx3.1は前立腺上皮分化制御に機能する因子で前立腺癌特異的な癌抑制遺伝子として知られて来た。また男性ホルモンであるアンドロゲンの代表的な標的因子として報告されていたが、その他の発現制御機構については明らかになっていなかった。そこで、本研究ではBmpシグナルによるNkx3.1の発現制御を明らかにするため、ルシフェレースアッセイ及びクロマチンChIPを用いた解析を行った。潜在的なマウスNkx3.1発現制御領域として、Nkx3.1コード領域の3'側に存在する5kbのエンハンサー領域が報告されていた。アンドロゲン非依存的なヒト前立腺癌由来細胞であるPC3細胞を用いたルシフェレースアッセイにおいて、この5kbの領域がBmpシグナルに応答する事を明らかにした。またマウスBmpシグナルの下流因子であるSmad1/5/8が、エンハンサー領域内のSmad結合領域において直接的に結合する可能性を示した。本研究によりBmp シグナルは前立腺上皮細胞分化に必須である事、また分化制御機構の一端として、Nkx3.1の関与を示唆した (Omori et al., Endocrinology, in press, 2014) 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度から平成25年度にかけ、前立腺上皮性Bmpシグナル前立腺上皮細胞分化に必須な機能を果たす事を示した。さらにBmpシグナルの下流因子探索の解析のため、Bmpr1a CKOマウスを用いたDNAマイクロアレイ解析を行った。この結果上皮細胞分化を制御するNkx3.1遺伝子発現の低下を見出した。Nkx3.1遺伝子は前立腺特異的な癌抑制因子として知られ、前立腺上皮細胞分化に必須な役割を担う事が報告されていた。これらのことから、25年度ではBmpシグナルの下流因子Smad1/5/8によるNkx3.1の発現制御の可能性を解析するため、ルシフェレースアッセイ、ChIP解析を行った。その結果、Bmpシグナルの下流因子であるSmad1/5/8が直接的にNkx3.1のエンハンサー領域に結合し、Nkx3.1発現を制御する可能性を示唆した。本年度の解析により、Bmpシグナルの上皮細胞分化制御機構解明の一端として、Nkx3.1を介した分化制御機能の関与を示唆する事が出来た。これらのことから、本年度の目標を達成する事ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、Bmpシグナルが前立腺上皮細胞分化に必須な機能を果たすことを示して来た。しかしながら、これらBmpシグナルと、前立腺発生・分泌機能に重要なアンドロゲンシグナルとの相互作用につていは未だ明らかになっていない。そこでアンドロゲン除去(精巣摘出)により退縮し、アンドロゲン再投与により回復する前立腺再性能を利用し、Bmpr1a欠損、過剰活性化マウスの精巣摘出、及びアンドロゲン投与実験を行う。アポトーシス/細胞増殖の検出、前述したeYFPラベルによって細胞系譜を行うことで、Bmpシグナル改変細胞群がアンドロゲンの増減によって示す細胞の動態変化を解析する。これらは抗アンドロゲン療法下前立腺の細胞動態の理解、それに付随する細胞増殖因子シグナルの変化を明らかにする重要な基盤的知見であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文に投稿中であり、それらの追加実験のための試薬購入。また論文受理後に国際学会での発表を行う予定だったが、審査が長引いたため繰り越す事となった。 論文受理後の国際学会での発表また、出張費用、またさらなる実験継続のための試薬購入などを行う。
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Research Products
(4 results)