2012 Fiscal Year Research-status Report
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24791818
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
水足 邦雄 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (40338140)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 急性感音難聴 / 内耳障害 / ミトコンドリア / 線維細胞 / 蝸牛外側壁 / 再生 |
Research Abstract |
まず、従来我々の施設でS-Dラットを使用して作成していた3-nitropropionic acid(3-NP)による急性内耳エネルギー不全モデルをCBA/CaJマウスを用いて作成した。方法はこれまでの報告と同様(Mizutari et al. J Neurosci Res, 2007, Hoya et al. Neuroreport, 2004)、全身麻酔下に耳後部切開をおき、中耳骨胞を露出。中耳骨胞にマイクロドリルで小開窓を行い手術顕微鏡下に正円窓窩を明視下に置く。500mMの3-NPを正円窓窩にマイクロポンプと微小チューブを用いて局所投与した。その結果マウスにおいてラットにおいて観察された3-NP投与後のABR閾値上昇が同様に認められた。さらに組織学的な検討を行ったところ、内耳局所的なミトコンドリア機能阻害により高度の聴性脳幹誘発反応(ABR)閾値上昇が認められ(Hoya et al. Neuroreport, 2004)、その原因が蝸牛外側壁線維細胞に特異的に生じるアポトーシスによるものであることを光学顕微鏡下に確認した。この3-NPモデルマウスを3-NP投与後2ヶ月まで経過観察すると、低音域から中音域までのABR閾値に有意な改善が認められた。組織学的には外側壁線維細胞、特にI型、IV型において細胞分裂を伴う自発的な再生が認められ、再生した線維細胞は能動的イオンリサイクリングの主体を担うNa+/K+/ATPaseβ-1を発現していることが明らかとなった。これらの結果より、従来ラットで用いていた急性内耳エネルギー不全モデルが、マウスでも使用可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の結果より、従来ラットで用いていた急性内耳エネルギー不全モデルが、マウスでも使用可能となった。マウスモデルを用いることで、遺伝子改変動物の使用が容易となり、今後の研究において様々な機能解析を容易に行うことができるようになる。また今後、蝸牛内電位の検討を行う予定であるが、マウスを用いることでこれまでのラットモデルでは困難であった蝸牛内電位の測定が容易になるため、大きな意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ミトコンドリア機能異常による急性内耳エネルギー不全モデルマウスの、経時的な蝸牛内電位(endocochlear potential:EP)の測定を行う。始めに、3-NPを正円窓窩に投与し、ABRにて閾値の上昇・改善を確認した後、全身麻酔下に再度中耳骨胞を露出・開窓し、蝸牛基底回転部側壁を手術用顕微鏡下に明視下に置く。マウスでは中央階に存在する血管条が暗色部として蝸牛骨壁から透見できるため、基底回転中央階の部位を中耳から確認できるため、同部位にマイクロドリルおよび微小針を用いて蝸牛骨壁に小開窓を行う。蝸牛中央階が開窓されたら、直ちにKCl水溶液を充填した微小ガラスピペット電極を挿入し、顎二腹筋部に基準電極を挿入しEPを測定する。EP測定は3-NP投与前、投与1日後、2週間後、1ヶ月後、および2ヶ月後に行うが、2ヶ月後以降もABRでさらなる閾値改善が認められるようであれば、適宜測定を追加しABR閾値との相関を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物の購入および飼育費、さらには組織学的な検討のための免疫染色用の抗体などに研究費を使用する。また、研究成果を発表し今後の研究課題を検討するために海外を含む学会発表を行うための旅費に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)