2012 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺癌・口腔癌における新規遺伝子変異の検査法開発と治療戦略の検討
Project/Area Number |
24792011
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
迎 章太郎 日本大学, 歯学部, 非常勤講師 (70553105)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | がん / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
本研究は唾液腺癌をはじめとする口腔癌におけるEGFR-1からのシグナル伝達に深く関与するRASの遺伝子変異の状況の検討を、Loop-mediated isothermal amplification (LAMP)法を利用し、迅速で簡便な検査法を開発することである。 始めにEGFR-1およびRAS遺伝子の突然変異の検出のために、EGFR-1の突然変異として肺癌で報告されているキナーゼドメインのdeletion mutantに対するプライマーセット(5セット)、RASの突然変異として大腸癌や膵臓癌で多く報告されているアミノ酸配列12番目および周辺領域に対するプライマーセット(7セット)を設計した。次いで肺癌細胞株(NCI-H1573, NCI-H1975)および大腸癌細胞株(CK-CO-1, LS123, SW48, T84)を培養し、抽出されたgenomic DNAをコントロールとしてLAMP法を行った。プライマーセットのうち、増幅の見られないものや非特異反応の多いものを除外し、約30分で検討できるプライマーセットをそれぞれ2セット得た。 唾液腺癌および扁平上皮癌のパラフィン包埋ブロックから抽出されたgenomic DNAを用いて遺伝子増幅実験を行ったところ、良好な増幅が見られなかった。培養細胞をホルマリン固定して同様の実験を行ったところ、ホルマリン固定の時間に依存して増幅の阻害が見られた。またホルマリン固定後のgenomic DNAを電気泳動したところ、約400~800kb程度に切断されていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、ホルマリン固定材料から抽出されたgenomic DNAをテンプレートとした場合は増幅効率がきわめて低下する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度はEGFR-1、RAS、MAPK経路、JAK-STA経路およびPI3K-AKT経路の遺伝子産物の突然変異を検討する予定であった。EGFR-1とRAS遺伝子の突然変異を検討した結果、ホルマリン固定標本から得られたgenomic DNAを元にしたLAMP法では、目的遺伝子の増幅効率がきわめて低かった。このことから、JAK-STA経路およびPI3K-AKT経路の遺伝子産物の突然変異の検討が遅れた。 LAMP法による遺伝子の増幅は対象領域とプライマー配列に依存する。本研究の趣旨は、特定遺伝子の対象領域に生じる突然変異を検出することにあるため、変更は出来ない。ホルマリン固定後の切断されたgenomic DNAをもとにLAMP法を行うためには、新たにプライマーセットの配列を設計し、切断されたgenomic DNAであってもプライマーセットがアニーリング出来るようにする必要がある。具体的には特定遺伝子の対象領域を上流または下流プライマーの一に設定し、それを起点として増幅産物の長さが短くなるように下流ないし上流プライマーを設計する。予想される増幅産物が短いほど、ホルマリン固定によるgenomic DNA切断の影響が少なくなる。 また検査を目的として得られた細胞診の余剰細胞からgenomic DNAを抽出した場合は、ホルマリン固定の影響が除外できるため、倫理審査の準備を進めている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
LAMP法のコントロールDNAを得るために、細胞培養用の試薬を購入する。またLAMP法に用いる試薬や酵素、新たに設計するプライマーの合成ならびに研究に用いるプラスチック製品を購入する。
|