2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト歯髄細胞からの機能性肝細胞の分化誘導と肝疾患モデルによる新規細胞医療法の開発
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24792042
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
富永 徳子 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (90546532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ヒト歯髄 / 幹細胞 / ETFs / 誘導 / 肝細胞 / 再生医療 / SKGII / SKGII-SF |
Research Abstract |
歯髄には幹細胞が存在し、再生医療の細胞源として機能を有する細胞への分化誘導法の研究が進められている。近年、磁気ビーズを用いて歯髄細胞からCD117陽性細胞を分離し、HGF、ETFなどの誘導物質の添加した誘導培地により肝細胞へと分化誘導したことが報告された。しかしながら、この手法では誘導物質の添加を続けなければ肝細胞の性質を維持できない。誘導物質の添加を続けなければ肝細胞の性質を維持できない細胞を移植すると、移植後に生体内で機能を維持する細胞が減少する可能性がある。機能性肝細胞の誘導法を確立することは、移植後肝臓の再生を促進すると考えられる。そこで我々は、歯髄細胞にETFsのみを数回作用させて肝細胞の分化を行い、誘導後は通常培地にて維持可能なアルブミンを産生する肝細胞の分離に成功した。 これまで用いていたETFsでは、50%の効率で歯髄細胞を肝細胞に誘導したが、徐々に効果が減退したため、申請者は新しいETFsの作製を行った。従来、ETFsは、Ham’s F-12で作製されていた。新しいETFsの作製方法は、まず15%FBS、DMEM/F12で培養していたSKGIIの血清量を漸減し、無血清DMEM/F12にて培養可能なSKGII-SF細胞株を樹立した。次に、培養上清を凍結乾燥させ、その粉末をPBSに溶解させた後、脱塩を行い、新しいETFsの作製を行った。今回、新しいETFsにDMEM/F12を用いたのは、維持していたSKGIIがDMEM/F12により培養していたからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ETFsは、歯髄細胞を肝細胞へと分化させる必要不可欠な生理活性物質である。しかし、従来用いていたETFsは、精製後の時間経過により歯髄幹細胞を肝細胞へと分化させる活性が減少していた。ETFsは、子宮頸部類扁平上皮癌細胞株(SKGII)を無血清培養した培養上清である。そのため、SKGIIを無血清DMEM/F12にて培養し、SKGII-SF細胞を樹立することは本研究の成功のためには必須なことである。 また、歯髄細胞を肝細胞へとより効率よく分化させるETFsの作製は、その成分を同定し人工ETFsを作製するためにも必要である。ETFsは、SKGIIという癌細胞の培養上清から作製される。そのため、培養上清の中にタンパク以外の未知なペプチドなどの存在の可能性がある。どの成分が歯髄幹細胞を肝細胞へと分化させるかは明らかになっていない。歯髄細胞を肝細胞へより効率よく分化させるETFsをSKGII-SFの培養上清から精製し、その成分解析を行うことにより明らかになった生理活性物質をヒト組換え型タンパクで置きかえ、人工ETFsを作製する。これにより、分化が既知、または未知の成分により誘導されたかが明らかになると考えている。 さらに、申請者は本研究でも用いられる濾紙による細胞分離法を確立し2013年2月(Differrentiation, Volume 85, Issue 3, February 2013, 91-100)に報告を行った。この手法は、目的の細胞を分離するため、0.25%トリプシン-0.02%EDTA溶液に浸した2×2㎜角の濾紙を細胞上に置き、その濾紙に付着する細胞を新しいシャーレにて培養し増殖させる方法である。さらに、本手法は、より純度の高い細胞集団の分離が可能である。そのため、本研究で得られた歯髄由来肝細胞もこの方法を用いて分離可能であり、計画どおり研究が進められていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
従来用いていたETFsの歯髄を肝細胞へ誘導する活性が、時間の経過と共に低下したため新しくETFsを作製した。このETFsの歯髄細胞を肝細胞への分化能を検討する。 歯髄由来肝細胞は、歯髄には存在しない細胞である。そのため、歯髄中の幹細胞が肝細胞に分化したと考えられる。そこで、磁気ビーズを用いて歯髄から幹細胞を分離し、幹細胞マーカーを用いてRT-PCR、免疫染色にて同定する。次に分離した幹細胞をETFsで誘導し、歯髄由来肝細胞を分化させる。分化した細胞が肝機能を有していることをPAS染色、LDL取り込み試験、薬物代謝試験を行って証明する。 次に、歯髄肝細胞が細胞移植による再生医療に使えるか否かを確かめるため、誘導肝細胞を旋回培養してスフェロイドを作製し、90%の肝臓切除または、総胆管結紮により作製した肝障害モデル、および肝硬変モデル動物であるFahノックアウトマウスに移植することによってin vivoでの肝機能の回復を評価する。この時、移植した肝細胞の動態を組織切片を作製することのより解析する。また、ヒトアルブミン産生能、ヒトAFP産生能、BUN量の減少、血清総ビリルビン量の減少を指標に評価する。さらに血液凝固作用を見るため、ヘパプラスチンテストを行う。以上の結果より、肝臓が持つ蛋白産生能力、血液凝固因子産生、解毒作用を総合的に評価する。 分離した歯髄由来肝細胞が正常肝細胞と同じ遺伝子を発現するかを検証するために、市販のヒト正常肝細胞(hNHepsTM)を用いて、リアルタイムPCRにより肝細胞特異的遺伝子発現プロファイルを明らかにする。 以上より得られた結果は、研究をより発展させるため学会にて発表を随時行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Presentation] ヒト脂肪組織由来幹細胞の骨細胞への分化と骨形成
Author(s)
大山晃弘, 井出吉昭, Tansriratanawong Kallapat, 田巻友一, 富永徳子, 中原 貴, 立花利公, 渡邊美隆, 栗原邦弘, 佐藤 聡, 石川 博
Organizer
平成24年度日本歯科大学歯学会大会
Place of Presentation
日本歯科大学生命歯学部メモリアルホール, 東京