2013 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜由来幹細胞を利用した造血を伴う血管新生誘導技術の確立
Project/Area Number |
24792149
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大久保 直登 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 博士研究員 (00553207)
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Keywords | 再生医療 / 血管新生 / 造血幹細胞 / 歯根膜幹細胞 / 三次元培養 |
Research Abstract |
今年度(平成25年度)においては、1.<歯根膜由来ヘマンジオブラスト様細胞が血管内皮細胞あるいは血球系細胞への分化の方向性を決定する際に働くキー遺伝子を特定する>がテーマであったが、次年度目標の2.<歯根膜由来ヘマンジオブラスト様細胞の表面に特異的に発現する表面抗原を特定し、歯根膜細胞集団からこの細胞を効率的に選択する技術を確立する>というテーマも計画を繰り上げて同時進行で実験を行なった。 1.ヘマンジオブラスト様の性質の発現において重要な役割を果たす可能性が示唆された『転写因子A』のアデノウィルスベクターを作成し、歯根膜幹細胞へ外来性に過剰発現させたところ、癌幹細胞・組織幹細胞の維持に非常に重要な表面抗原マーカーである複数のマーカーの発現が継時的に優位に上昇することをm-RNAレベルで確認した。また、in vitro3次元立体画像構築解析により、転写因子A 過剰発現群では血管・血球新生においてもコントロール群と比較し、優位に血管経の太さが向上し、新生血管内部の血球様細胞の数においても優位に増加していることが判明した。 2.樹立済みのRat由来歯根膜幹細胞を用いた上記の実験と平行してヒト由来の歯根膜幹細胞の採取方法に関してもpreliminaryな検討を行った。歯根膜組織採取直後からの様々な刺激を検討した結果、過去の論文で一般的に用いられている従来通りの方法(未処理群)と比較してある刺激を加えて培養すること(処理群)で複数の幹細胞マーカーおよび転写因子A においてその遺伝子発現が優位に上昇し、細胞の形態もより立体的で、さらに増殖能力も高くなることを確認した。さらに、多分可能を示す指標として良く用いられる骨および脂肪細胞への分化能力さらに、三次元培養における血管新生能を評価したところ、未処理群と比較して処理群において同等(骨分化)または明確な差(脂肪・血管新生)が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
”造血を伴う血管新生”のキー転写因子の同定という目標に対して、その候補転写因子Aを過剰発現させた細胞群において三次元培養血管新生実験を行った。その結果を詳細な三次元立体画像構築解析により精査したところ、過剰発現群において優位に血管経の太さが向上し、さらに立体的に新生血管内部に血球様細胞が存在していることを確認することに成功した。さらに、平成26年度予定であったか『抜歯した歯根膜から現在用いているものと同等の歯根膜幹細胞分画を再現性よく抽出する方法の検討』に関しても予定を繰り上げて開始した。生体内(in vivo)に存在する幹細胞は数の上ではminorityであり周囲のniche環境に守られることで自己を維持している(self-renew)。それに対し、生体外(in vitro)の培養系に移行する場合、そこは幹細胞にとってはniche機構の存在しない無秩序な空間であり、数で大きく勝る分化型の線維芽細胞とのフリースペースの奪い合いとなる。そのため、幹細胞を組織から採取する際に最も重要なのは採取直後の培養条件の検討であり、如何に幹細胞にとってのniche環境に近い条件で培養するかが幹細胞画分を増殖させる鍵となると考えた。この仮説に基づき、培養法を検討した結果従来の培養法と比較して転写因子Aの発現が優位に上昇し、骨・脂肪・血管新生能力においても優れた分画を濃縮することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画で進行している本研究は2年目を終了した。現在までにヘマンジオブラスト様の性質を誘導するための有力なキー転写因子候補の同定が完了し表現系としても血管・造血新生を優位に増加させる可能性が示唆されている。さらに、興味深いことにこの転写因子はあるサイトのリン酸化修飾の有無によって分化誘導能力に変化が起こることが報告されており、次年度においてはこの部位特異的なリン酸化変異体を作成し、ヘマンジオブラスト様の性質の誘導に与える影響を調査する方策としている。これにより、この転写因子による分化誘導に対するより詳細なメカニズムが明らかになる可能性が期待される。 歯根膜組織からの効率的な幹細胞分画の抽出方法については、従来法に比較しある条件で培養することで転写因子Aの発現量を含む複数の表面抗原幹細胞マーカーの発現が優位に高い細胞画分を濃縮できることを確認したが、次年度の方策としてはこの条件で確立した初代培養系に対して前述の表面抗原マーカーを用いたソーティングを行い、より効果的な濃縮方法の検討を多分可能力などを指標として検討する予定としている。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Novel SCRG1/BST1 axis regulates self-renewal, migration, and osteogenic differentiation potential in mesenchymal stem cells.2014
Author(s)
Aomatsu E, Takahashi N, Sawada S, Okubo N, Hasegawa T, Taira M, Miura H, Ishisaki A, Chosa N.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 4
Pages: 3652
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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