2012 Fiscal Year Research-status Report
音声同期圧力分布システムを利用した構音障害の定量的評価法の開発
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24792307
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
杉山 智美 昭和大学, 歯学部, 助教 (20433823)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 構音障害 / 小児 / 音響分析 / 舌圧 |
Research Abstract |
小児の構音は身体能力、構音機能の発達に伴って獲得される。我々は構音器官の1つである口腔に着眼し、小児の構音発達と口腔(歯、口蓋、舌)の関係を明らかにするために分析を行った。対象は、健常児(乳歯列完成期、上顎前歯部萌出期、上顎前歯部萌出完了期の3グループ)器質的構音障がい児(舌小帯付着異常、口唇口蓋裂)、機能性構音がい児(歯間音、幼児語)の3グループとした。被験音は、子音/s//sh/とし、先行および後続母音/a/を接続したVCV音節/asa//asha/とし、5回発音したうちの3回目を分析した。録音した音声データはサウンドスペクトルを使用して子音部を特定し、不偏推定法によるケプストラム対数化スペクトラムによりパワースペクトラムの形状の描出を行った。 描出されたスペクトル包括のエネルギーが最も高い部位の周波数を分析し、比較検討を行った。 1)健常小児間での比較:上顎前歯部の生理的交換によって、構音がどのように変化するかを検討した。/s//sh/ともに、舌尖が口蓋前方に接することが必要であるため、どちらも上顎前歯部の生理的交換によって影響を受けると予測していたが、/sh/と比較して/s/のほうがより周波数ピークが影響を受けるということが明らかになった。 2)器質的構音障がい患者と健常小児との比較:器質的構音障がい患者と健常小児を比較したとろ、健常小児と比較して器質的構音障がい患者(舌小帯付着異常、口唇口蓋裂児)が低い傾向がみられた。 3)機能性構音障がい患者と健常小児との比較:機能性構音障がい患者では、周波数ピークに一貫性がなく、周波数が健常児とほぼ変わらない症例もあれば、著しく異なる症例もあった。このグループに関しては、症例のバリエーションが非常に多く、今後症例数を増やし、かつ適切なグループ分けを行う必要性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
構音分析に関しては、サンプル採取、構音分析システムの改良、録音施設の改良などが順調に進んでいる。今回分析を行った結果、健常小児や器質的構音障がい患者に関しては、現在のサンプル数でも構音の特徴などを診断することが可能であり、大きな問題はないと考えられる。機能性構音障がい患者に関しては、想定していたサンプル数では構音の特徴が明らかになりにくいこと、機能性構音障がい患者のバリエーションが非常に多いため、機能性構音障がい患者を臨床症状によって、より細かく分けて検討した方がより良い結果が出ると考えられるため、サンプル数の増加と機能性構音障害患者に関する分類を行うこととした。さらに機能性構音障がい患者に関しては臨床診断が非常に難しいため、複数での診断をした方が良いと考え、言語訓練の臨床経験が多い歯科医師の協力を得て診断を行うこととした。 舌圧センサーに関しては、センサーをどの部位につければより正確な舌圧が測定可能かというところが大きな問題点となった。通常健常成人が構音する際に舌尖が付くと考えられている部位にセンサーを付けてみたところ、半数以上の小児の舌圧が測定困難であった。これは、小児の構音が非常に複雑であり、健常成人の構音動作と異なる可能性があるためである。正確な舌圧を測定するためにはまず、小児の構音動作の解明が必要である。現在、静的パラトグラムを利用して舌尖部の接している部位を検討している。これにより圧センサーの適切な個数や位置を再検討する予定である。 圧センサーの適切な個数や部位が特定されれば、舌圧の解析システムの改良は進んでいるため大きな問題はなく研究が進むと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で音響分析システムの改善はほぼ終了しているため、次年度に大きなシステム改良は必要ないと考える。音響分析に関してはさらに被験者を増やすことで、それぞれの疾患に特有の音響学的特徴をさらに明確にすることが可能である。特に本年度に構音の特徴が明確にすることができなかった機能性構音障がいに関しては重点的に被験者構音の録音と分析を行っていく必要がある。また、機能性構音障がいは診断が非常に困難であることも本年度の研究では問題であったため、単独の診断ではなく、言語指導の臨床経験のある歯科医師にも診断に協力してもらうことで、より正確な評価が可能になると考える。 舌圧の測定に関しては、センサーの精度は問題ないが、センサーを付ける部位に問題が生じたため、現在被験者に静的パラトグラムを使用して舌尖部が口蓋のどこに付くかを検討している。本年度、成人と小児では舌の動きにつがいがあるのではないかということが明らかになっているため、次年度はさらに年齢や歯列による変化がないかを同様の方法で検討し、センサーを有効に活用するにはどの部位がもっとも適しているかを早急に検討する予定である。 センサーの活用にに関しては、システムの問題などもあるため、同様の研究を行っているATRに協力、助言をもらう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はパラトグラムによる検査とセンサーを利用した測定システムを中心に行う。パラトグラムを作成するための専用シートの購入とセンサーを埋め込む床装置の製作のための消耗品である、レジン・センサー・歯科用ブラケット(センサーの尖端がをブラケットを使用して固定する)などの購入を検討している。 また、平成24年度にシステムの構築が困難であったため、同様の研究で成果を上げているATRやJAISTなどに分析方法などの助言をもらうための旅費、謝礼などに利用する。 現在まで行った研究成果の発表のため、平成25年6月に国際小児歯科学会にて発表を行い、その後も引き続き研究発表、論文作成を行う予定である。 また、今回の研究はシステムの構築ができれば臨床応用が現実的に可能なシステムであるため、言語障がい患者のリハビリテーションなどに応用できるよう、さらなるシステム改良に取り組む予定である。
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