2012 Fiscal Year Research-status Report
骨転移患者に対する疼痛緩和を目的とした移動・移乗方法の探索
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24792407
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
三宅 由希子 県立広島大学, 保健福祉学部, 助教 (60433380)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 移乗介助 / 疼痛緩和 / 床走行式リフト |
Research Abstract |
【目的】疼痛緩和を目的とした移動・移乗方法の探索のため、健常者を対象に、床走行式リフトを用いた移乗援助と、従来の人力による方法での移乗援助による、被介助者への身体的・心理的負担について検討した。 【方法】測定項目は、①介助に要する時間:患者に触れてから車いすに座るまでの時間、②圧:人力移乗では、腋窩部、膝窩部、リフト移乗では、肩甲骨部、大腿部および膝窩部、③脈拍・血圧:A&D社製携帯型自動血圧心拍計TM-2425を用いて計測、④主観的評価:不安感、安定感、安全感、不快感、緊張感の5項目に関して、0~10までの11段階尺度を用いた。 【結果】1.所要時間:リフト移乗での平均時間は3分31秒±32秒、人力移乗の平均時間は35秒±8秒であった。2.圧:被介助者の膝窩にかかる平均圧力は、リフト移乗は24.7±13.0 mmHg、人力移乗は116.8±26.7 mmHgであった。リフト移乗では、被介助者の身体の局所に集中的な圧がかからないことが示された。人力移乗時に介助者が保持する部位に疼痛や皮膚障害を抱える対象者にとって、リフト移乗は有用な方法であると考えられる。3.脈拍・血圧:脈拍においては、リフト移乗の移乗動作中は安静時に比べ、有意に低下していた(p<0.05)。リフトを用いることで、被介助者の急激な体勢の変化を避けることが可能となり、穏やかな動きは被介助者の身体が徐々に変化に適応できるという身体的負荷軽減につながると考えられる。4.主観的評価:各介助の1回目と2回目を比較したところ、2回目の方が、リフト移乗では「安心」「優しい」「リラックスできる」の項目において、人力移乗では、「安心」「優しい」の項目で、有意に高値となった。被介助者はリフト移乗の経験回数を重ねることにより、“慣れ”を生じ、不安感が軽減している。リフト移乗について、身近な物と感じられるよう広めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、車いす移乗に関して、これまでの人力による移乗介助と、リフト使用による移乗介助の比較検討を行うことができた。測定項目①体圧測定、②自律神経活動、③主観的評価を行い、検討することができた。 本年度の計画の段階で、体圧測定、ズレ測定を、骨転移の多い胸椎、骨盤、大腿骨、上腕骨、肋骨と上げていた。しかし、プレ実験にて人力移乗、リフト移乗を行ったところ、今回の方法で強い圧力がかかる部位は、人力では膝窩部、腋窩部、リフト移乗では膝窩部、大腿部、肩甲骨部であることが判明した。よって、測定部位、測定内容を一部変更し行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.疼痛軽減を目的とした移乗方法を考案する。 平成24年のリフト移乗により、身体的負荷が軽減した内容をもとに、疼痛軽減を目的とした移乗方法を考案する。 2.疼痛がある患者に考案した移乗方法を実践し評価する。 平成25年度は、実際に移乗時に疼痛軽減を必要としている入院患者に対し、考案した移乗方法を実践し、評価を行う。骨転移患者の疼痛は、体動時に増強し、患者のADLに大きな影響を与え、QOLを著しく低下させることにつながる。平成24年度、平成25年度の研究結果より、骨転移患者に対し、疼痛を緩和し、患者の意志と安全性に配慮しながら、その人らしく生きる援助、QOLを維持する看護介入を提案することができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の実施結果をもとに、骨転移患者に対する疼痛軽減を目的とした安全・安楽な移乗方法を考案する。考案した移乗方法を実践し、評価を行う。 対象は、病院入院中の骨転移のある患者とし、これまでの移乗方法と疼痛軽減を目的とした移乗方法を比較検討する。対象者の病名、既往歴、骨転移部位、現在のADL状況、現在の移乗方法を聴取する。患者の希望を聞き、移乗を行う。測定項目は、客観的評価として、体圧分布測定、自律神経活動を測定し、主観的評価として、VASを用いた移乗評価、感想を聞き取る。 移乗介助が必要な患者の入院施設を訪問し、主治医の許可を得た上で研究打ち合わせ、データ収集を行うため、計画書に挙げた旅費が必要となる。また。体圧測定、自律神経活動を測定するため、圧センサー、ブルーセンサーといった消耗品が必要となる。 また、平成24年度の研究成果を発表するため、学会参加費、旅費が必要となる。
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