2013 Fiscal Year Research-status Report
骨転移患者に対する疼痛緩和を目的とした移動・移乗方法の探索
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24792407
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
三宅 由希子 県立広島大学, 保健福祉学部, 助教 (60433380)
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Keywords | リフト移乗 / 骨転移 / 疼痛軽減 |
Research Abstract |
【目的】骨腫瘍のある患者を対象に,普段行っている移乗と床走行式リフトを用いた移乗での,疼痛に関する比較検討を行った。 【方法】1.対象者:骨・軟部腫瘍のある患者2名,転移性骨腫瘍のある患者2名。2.調査項目:①身体特性:身長,体重,診断名,疼痛部位,普段の移乗の様子。②移乗に要する時間:ベッド上仰臥位の患者に触れてから車いすに座るまでの時間を計測した。それぞれの移乗後に③痛みの評価:Visual Analogue Scale (VAS)を行い,④リフト移乗後の感想,を尋ねた。4.分析方法:移乗後の感想は,KJ法を用い,類似性によりグループを作り,意味内容を表現したラベル名を付けた。 【結果】1. 所要時間:普段の移乗での平均時間は4分50秒±3分09秒,リフト移乗での平均時間は6分35秒±1分40秒であった。リフト移乗時,対象者A,Bは膝を屈曲させないようスリングシートの下から下肢を支えた。対象者C,Dは胸椎に腫瘍があるため,胸椎をねじらないよう介助を行った。対象者Dのみ,普段の移乗に比較しリフト移乗で所要時間が短くなった。2.痛みの評価:対象者A~Cでは,移乗時の疼痛の変化は見られず,増強もなかった。対象者Dのみリフト移乗の方が疼痛は少ないと評価された。3.感想: [痛みを伴わない] [安心感がある][イメージと違った][時間がかかる][場所をとる]というラベル名に分類された。 【考察】リフト移乗は,スリングシートで体を包み込み移乗することにより痛みを伴わず,安心感が得られたと考えられる。また,リフトが患者の体を支えるため,下肢の脱力や麻痺のため転倒の可能性がある患者にとって,安全,安楽な移乗方法となり得る。普段の移乗が全介助である対象者にとって,リフト移乗は所要時間も短く,疼痛軽減の可能な移乗となることが分かったように,リフト移乗の適応を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,平成24年度の結果をもとに,平成25年度では,移乗時に疼痛軽減を必要としている骨腫瘍のある患者を対象に,普段の移乗の方法と,リフトでの移乗を比較することができた。 リフトでの移乗により,スリングシートで体を包み込み移乗することにより痛みを伴わず,安心感が得られたと考えられる。また,リフトが患者の体を支えるため,下肢の脱力や麻痺のため転倒の可能性がある患者にとって,安全,安楽な移乗方法となり得る。さらに,普段の移乗では,移乗そのものに看護師の力が必要となるが,リフト移乗では,移乗中の患者の表情を観察する,コミュニケーションをとる,疼痛部を支えながらの移乗が可能であり,疼痛軽減に繋がると考えられる。介助者のリフト介助技術を向上させることにより,作業時間を短縮できると先行研究であるように,介助者の技術を向上させることが今後の課題である。そして,普段の移乗が全介助である対象者にとって,リフト移乗は所要時間も短く,疼痛軽減の可能な移乗となることが分かったように,リフト移乗の適応を明らかにする必要がある。また,今後,対象者数を増やし,介助者にとって安全,安楽な介助法であることを立証していくことが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24・25年度の結果を受け,平成26年度では,研究結果を分析,まとめて,学会発表,論文投稿を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度10月~12月体調不良により,データ収集が行えず,研究発表に出向くことができなかった。共同研究者にて学会発表を行った。 データ収集数を増やすための体圧センサー,自律神経測定機器,ブルーセンサー,PC関連機器といった消耗品が必要となる。平成24・25年度の研究成果発表のため,学会参加費,旅費,論文投稿費用が必要となる。
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