2012 Fiscal Year Research-status Report
境界性パーソナリティ障害患者自身の語りから明らかにしたストレス‐対処プロセス
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24792558
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
栗原 琴乃 香川大学, 医学部, 助教 (80505800)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 境界性パーソナリティ障害 / 感情 / 看護 |
Research Abstract |
本研究は、境界性パーソナリティ障害(以下BPD)患者の感情が揺り動かされた時の認知や感情、対処のプロセスを明らかにすることを目的とした基礎研究である。今年度の研究実績はまず、今までの研究成果から不足しているデータやそれを補うことのできる研究対象者の条件を明らかにした。そのうえで研究協力施設に依頼し候補となる患者についての情報提供を受け、患者に同意を得たうえでカルテを参照し、研究対象となりうるかどうかを検討した。その結果2名の患者に研究参加を依頼し、データ収集を行うことが出来た。現在データ分析中である。 学術集会において現在までの研究成果を発表し、臨床家や他の研究者から活発に意見交換を行い、今後の研究を継続する上で有意義な意見交換が出来た。 また、自己の感情や考えを言語化することが難しいBPD患者が研究に参加し、自己の体験を語るには研究者との信頼関係及び研究者の面接能力及び分析能力が必要である。そのため、先駆的なグループでの治療方法を行っている東京の長谷川病院のグループに参加し、患者の語りの様子やスタッフの関わりを観察したり、スタッフと研究成果について意見交換を行った。 さらに、BPD治療・研究の先駆的な専門家である臨床家によるBPD患者への支援のスキルアップグループに参加し、意見交換もしながらBPD患者の体験についての理解や面接技法の向上、今後必要となる看護ケアの方向性の検討など行っている。また、BPDとも関連の深いアルコール依存症者の体験からもBPD患者の体験と共通するものがあるため断酒会に参加して特に女性アルコール依存症者の体験を聞き、データ分析の際の理論的感受性を高めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的サンプリングの結果、今回のデータ収集のための研究対象者は感情の揺れ動きの幅が小さくなり自分や他者に対してある程度肯定的に認知できるようになっている者ととした。そういった状態の患者は既に受診の必要がなくなっているため、病院では対象患者の選定が難しく、対象者の選定に時間を要し、また候補となる患者も少数であった。面接時に効果的にインタビューを行うため、主治医及び看護部長から数名の情報提供を得て、対象候補者に同意を得てカルテから今までの経過や最近の状況を整理したうえでインタビューを依頼し実施したため、面接までにも時間を要した。 以上の理由からデータ収集は現在2名にとどまっている。しかし、今年度は面接能力及び理論的感受性の向上のためのフィールドワークや研究発表を行うことができた点においては、今後研究を進める上で非常に有意義であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
データ分析を進め、データ収集を引き続き行っていく。専門家の開催するグループにも継続的に参加し、理論的感受性、面接能力の向上を目指す。その中で、新たな研究協力施設についても検討し、候補施設に研究協力を依頼しデータ数の増加に勤める。また、研究成果の公表のため、学会誌への論文投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通りデータ収集及びフィールドワークのための旅費及び謝金として使用する予定である。
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