2012 Fiscal Year Annual Research Report
教育委員会組織と地域性を生かす教師教育-国語科家庭学習プログラム開発を中心に-
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24830102
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
金津 琢哉 東海学園大学, 教育学部, 准教授 (20633522)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 教師教育 / 教科教育(国語科) / 臨床教育学 / 教育委員会 / 家庭学習プログラム |
Research Abstract |
本研究は,小学校国語科の家庭学習プログラム開発を基軸として,現場教師の指導技術を質的研究法により収集・分析・抽出し,敷衍性の高い指導知見に一般化し,教育現場へ効果的にフィードバックする在り方について有効な知見を得ることを目的とするものである。平成24年度は、研究構想の背景となる解釈学、臨床教育学等についての文献研究から取りかかった。さらに、近畿地方、東北地方、中部地方の各都市に勤務する教員に会い、家庭学習や教師教育についての情報を収集した。 調査フィールドは岐阜県中津川市に定めた。同市は地方の中都市であり,市街地の大規模校から複式学級のある小規模校まで多様な環境条件を備えているため,教育政策の地域性を生かした研究フィールドとして適していると考えた。そこで同市教育委員会事務局に対して数回に亘り研究の目的、方法、意義を説明し、調査への協力を要請した結果、市教育委員会教育研修所の参画に向けて了承を取り付けることができた。 市教育委員会との連携承認を踏まえ、岐阜県中津川市立付知北小学校での「国語科家庭学習プログラム」(漢字指導ルーティン及び学習内容の補充的作業学習)についての予備的な聞き取り調査(通常学級担任6名)の実施を教育委員会と同学校長に依頼した。両者の許可を得て、研究代表者が聞き取り調査を実施(当日不在の1名を除く5名の学級担任教諭)した。インタビューの映像記録から逐語記録を作成し、漢字指導ルーティンについて次の要素を抽出することができた。①事前指導(作業手順・ノート記述・その他)②点検・評価(ノート記入・個別指導・その他)③保護者との連携(通信・懇談・その他)④指導ルーティン修正(個別・全体・その他) 上記の要素に着目して雪だるま式インタビュー調査やアンケート調査を実施、分析すれば、当該地域の教師集団にとって最も効率的で実現可能性の高い指導知見への一般化が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では全市的なアンケートを平成24年9月までに実施し、聞き取り調査を平成24年12月に実施する予定であった。しかし、本研究課題が採択決定となった平成24年9月の時点では中津川市教育委員会が計画していた諸事業との兼ね合いも考慮しなければならず、その時点からの市教育委員会事務局との折衝に相当な時間が必要となった。そのため、研究協力を取り付けたのが平成24年10月過ぎとなり、付知北小学校での予備的聞き取り調査に関する事前説明を経て予備調査を実施できたのが平成24年11月となった。 また、調査研究のためのフィールドを当初計画では「基礎基本委員会国語部会」と予定していたが、事業を所管する教育委員会教育研修所の了承が得られず、計画を修正せざるを得なくなっている。 しかしながら、これらの折衝・調整の過程で、教育委員会の現有事業が担う目標及び計画の中途での改善は非常に困難であり、その困難性を生み出しているのは多様な業務を少人数で担当する中・小規模都市教育委員会の現状ではないかと推察するに至った。そこで、研究計画を若干見直し、中・小規模都市教育委員会特有の状況を把握することを重視することとした。そのため、市教育委員会教育研修所との折衝・調整を聞き取り調査に準じるものとして位置付け、「学力アッププログラム策定」「国語科学習指導の現状」「教師教育と研修の在り方」等の課題を切り口に担当者の問題意識に迫ろうと試みた。上記の理由により、計画の若干の変更・修正はあったが、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究のためのフィールドについて、当初計画の「基礎基本委員会国語部会」からの変更を余儀なくされている。計画では「漢字ドリルの指導ルーティン」に関する全市的アンケート調査とともに、聞き取り調査を雪だるま式調査により実施し、その結果を「基礎基本委員会」で検討することになっていた。この流れは、当該市教育委員会が抱える多様な教育課題・実践上の課題をある程度捨象して考案しなければならなかった。しかし、研究を推進していく過程で、当該市教育委員会が抱える課題が明らかとなり、より現実的な研究フィールドの選定が可能となったと言える。 そこで「学力アッププログラム策定」「国語科学習指導の現状」「教師教育と研修の在り方」等の課題を切り口に市教育委員会担当者との折衝を重ねた結果、計画を若干見直すこととした。研究フィールドとしては、市教育委員会教育研修所が企画し,実施主体となっている「夜学」とする。「夜学」は勤務時間外に実施している研修会である。月に1回の頻度で企画され、参加は自由意思による。「夜学」の企画に「漢字ドリルの指導方法」を入れてもらい、参加者の了承を得て研修内容を記録し、分析する。さらに後日、参加者への「研修内容の追跡調査」として聞き取り調査を実施し、分析する。同時に、校長の推薦による雪だるま式聞き取り調査も実施したい。また、教育委員会教育研修所との折衝内容そのものにも分析に値する知見が多く含まれる可能性があることから、聞き取り調査に準じて記録をとれるように依頼していく予定である。 聞き取り調査を中心に研究を進め、全市的アンケート調査は必要に応じて実施する。そして、分析及び考察の結果を論文にまとめ、発表する予定である。
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