2012 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスRNP複合体の機能制御に関わる宿主因子の同定と機能解析
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24890029
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川口 敦史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90532060)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 宿主因子 / Ribonucleoprotein / 微小管 / 細胞内輸送 / リサイクリングエンドソーム / 微小管合成中心 |
Research Abstract |
感染細胞核内で複製されたウイルスゲノムは、ウイルス由来のRNA結合タンパク質とRNAポリメラーゼが結合してウイルスRNP(Ribonucleoprotein)複合体を形成する。ウイルスRNP複合体は、核外輸送後、細胞膜まで輸送されてウイルス粒子として出芽する。しかし、ウイルスRNP複合体の細胞内動態を制御する機能分子はほとんど明らかにされていない。そこで、感染細胞より、ウイルスRNP複合体を精製し、共沈降したタンパク質群をLC-MS解析によって同定したところ、Y-box binding protein-1(YB-1)を新規ウイルスRNP結合宿主タンパク質として発見した。YB-1は、DNA/RNA結合タンパク質であり、転写因子として機能すること、および宿主mRNP複合体の主要構成因子として、宿主mRNAの翻訳制御と安定性に関与することが報告されている因子である。 感染に応答して、YB-1は核内ドメインの1つである、PMLボディでウイルスRNP複合体と共局在し、感染後期に移行すると複製されたウイルスRNP複合体と共に核外輸送され、細胞質で微小管合成中心(Microtubule organizing center; MTOC)に集積することが明らかになった。また、YB-1はウイルスゲノムとのみ結合し、複製中間体とは結合しなかった。さらに、YB-1ノックダウン細胞では、ウイルスRNP複合体はMTOCに集積できず、細胞質全体に拡散した局在を示すこと、ならびに、微小管を介したリサイクリングエンドソームとの結合も観察されなくなることを明らかにした。試験管内再構成系により、再構成微小管へのウイルスRNP複合体の結合にはYB-1が必須であることも明らかになった。以上の結果より、YB-1はウイルスRNP複合体を微小管上にリクルートする活性をもつことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、新規宿主因子としてYB-1を同定し、その感染細胞内での機能解析とウイルスRNP複合体の微小管へのリクルート過程を試験管内で再構成することに成功した。また、YB-1がウイルスゲノムの極性を認識して結合することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、YB-1の詳細な微小管およびウイルスゲノムとの結合機構を明らかにする。また、一部の細胞種では、ウイルスゲノムが正常に核外輸送されず、微小管との結合も確認されないことを明らかにしている(未発表)。そこで、YB-1によって制御されるウイルスゲノムの細胞内動態について、細胞やウイルス株の特異性についても今後は検討していきたい。
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