2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24890095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河合 朋樹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20631568)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / MAIT細胞 / クローン病 / 潰瘍性大腸炎 |
Research Abstract |
MAIT細胞は限定されたTCRを発現するT細胞で、自然免疫系に近い存在と考えられ、結核や腸管感染症の制御と同時に、炎症性疾患の発症への関与の可能性が示唆されている。我々は炎症性腸疾患の病態にMAIT細胞の関与を考え、MAIT細胞と炎症性腸疾患の関連を解析した。 156人の炎症性疾患(潰瘍性大腸炎88人、クローン病68人)の患者および52人の健常ボランティアから末梢血を採取し、フローサイトメトリーにより末梢血のMAIT細胞数および、MAIT細胞/CD3陽性細胞比を測定した。潰瘍性大腸炎、及びクローン病ともに健常ボランティアに比較し、有意な低下を認めた。MAIT細胞数および、MAIT細胞/CD3陽性細胞比に関して性別、治療薬、年齢を含めた多変量解析を行った上でも結果は同様であった。次に炎症性疾患患者の病変組織(潰瘍性大腸炎5例、クローン病10例)と健常組織を用いて、腸管におけるMAIT細胞の局在を評価した。潰瘍性大腸炎では病変部ではコントロールに比較し、MAITの細胞数の有意な低下を認めた。クローン病に関しても病変部位におけるMAIT細胞数の有意に低下を認めたが、コントロール相当の群と著明に低下している群の2群に分かれることが明らかになった。またクローン病患者のMAIT細胞においてはIL-17に関しては有意に産生の亢進を認めた。 以上の結果から、炎症性腸疾患において、末梢血、および炎症組織において有意にMAIT細胞が低下することが明らかになった。この意義については腸管細菌叢が破綻によるMAIT細胞の分化増殖の低下、MAIT細胞低下を基盤とした腸管防御の破綻、炎症性腸疾患におけるMAIT細胞のアポトーシスの亢進などが考えられる。一方、クローン病ではMAIT細胞が炎症におけるIL-17の供給源となっている可能性も考えられた。以上の仮説を検証すべくさらなる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、①「炎症性腸疾患の患者においてMAIT細胞の動態を評価することにより、炎症性腸疾患の患者を層別化し、さらに詳細な診断、治療戦略を確立すること。」②「MAIT細胞と炎症性疾患の病態の関連を解析すること。」③「患者層別化を行うことと網羅的遺伝子解析を組み合わせることにより、XIAP異常症を初めとした炎症性腸疾患を合併する遺伝性疾患をスクリーニングする有効な方法な確立こと。」にある。①については24年度の実績として炎症性腸疾患の患者においては血液中、および組織中のMAIT細胞数が低下していること、そしてクローン病患者では病変組織においてMAIT細胞が正常な群と低下群の2群に分かれることがわかった。このことからMAIT細胞の解析が患者の層別化や診断治療のマーカーとして有用となりうる可能性が示唆された。②についてはMAIT細胞が低下するという事実に加えて、クローン病の1群では炎症部位のMAIT細胞数が低下すること MAIT細胞はIL-17産生能がクローン病では高いことも明らかになった。これらのことはMAIT細胞が炎症性腸疾患において、低下が発症のリスクとなりうること、並びにクローン病においては炎症性サイトカインの供給源となりうることが示唆された。③についてはクローン病では組織におけるMAIT細胞が正常な群と低下している群があるという示唆に富む結果が得られた。今後これらの結果に加えて、遺伝子発現の解析を行うことで、さらなる層別化を行い、炎症性腸疾患の発症リスクとなる疾患関連候補遺伝子を見いだすこと今後進めていくことが可能となった。以上の24年度の成果は炎症性腸疾患の病態の解明、および治療法の開発につながりうるものと考えられ、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①「炎症性腸疾患の患者のMAIT細胞を測定することにより、炎症性腸疾患の患者を層別化し、さらに細やかな診断、治療戦略を確立すること。」24年度の実績として炎症性腸疾患の患者においては血液中、および組織中のMAIT細胞数が低下していること、そしてクローン病患者では病変組織においてMAIT細胞が正常な群と低下群の2群に分かれることがわかった。このMAIT細胞が臨床経過や治療のよりどのように推移するかについて、同一患者における追跡調査を行う必要がある。すでに同一患者に対し病状とMAIT細胞の追跡解析は行っており、その臨床的意義についてさらなる詳細な検証を行っていく。 ②「MAIT細胞と炎症性疾患の病態の関連を見いだすこと。」炎症性腸疾患患者ではMAIT細胞が低下していること、そしてMAIT細胞はIL-17産生能が特にクローン病では高いことが明らかになっている。この意義に関しては、MAIT細胞がIL-17を初めとした炎症性サイトカインの供給源となっていること、腸管細菌叢が破綻によるMAIT細胞の分化増殖の低下、MAIT細胞低下を基盤とした腸管防御の破綻、炎症性腸疾患におけるMAIT細胞のアポトーシスの亢進などが考えられる。これらに対してin situにおけるMIAT細胞のサイトカイン産生の評価、炎症性腸疾患患者のMAIT細胞の動態と正常細菌叢の解析、MAIT細胞細胞のアポトーシス感受性の評価を行う。 ③「MAIT細胞測定による患者層別化と網羅的遺伝子解析を利用し、炎症性腸疾患を合併する遺伝性疾患を見いだすこと。」クローン病では組織におけるMAIT細胞が正常な群と低下している群がある事から、組織のおけるMAIT細胞数、MAIT細胞のアポトーシス感受性や、遺伝子発現解析を組み合わせることで患者の層別化を行い、疾患関連候補遺伝子の同定を進めていく。
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Research Products
(2 results)