2012 Fiscal Year Annual Research Report
ハイパーサーミアを基軸とした口腔乾燥症の治療戦略イノベーション
Project/Area Number |
24890215
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
向坊 太郎 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (50635117)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ハイパーサーミア / 唾液分泌 / 口腔乾燥症 |
Research Abstract |
TRPチャネル阻害薬(2-APB)やTRPC1siRNAを用いたカルシウム流入経路の阻害実験により,ハイパーサーミアによる唾液分泌とTRPC1チャネルとの関連を調べた. 細胞内のカルシウム濃度(100nM)は細胞外カルシウム濃度(1~2mM)に比べて1~2万分の1という極めて低い濃度に保たれているが,刺激を受けた場合,一時的に細胞外からカルシウムが流入し,細胞内カルシウム濃度が数 百nM以上に上昇する.これによってカルシウム依存性のチャネル活性が変化し,唾液分泌が起きる. TRPC1チャネルは近年カルシウム流入を担うチャネルとして注目され,唾液腺においてもその存在が確認されている.申請者のこれまでの研究により,細胞内カルシウム濃度が温度依存性に上昇することを実証している.本研究ではTRPC1チャネルとハイパーサーミアによる唾液分泌との関連を調べるため,まずはTRPチャネル阻害薬(2-APB)を用いたカルシウム流入経路の阻害実験を行い,温度上昇に伴うTRPC1チャネルの 活性に違いがあるかをマウスEx vivo顎下腺灌流実験を用いて検証した.2-APBに関してマウスEx vivo顎下腺灌流実験において分泌量の低下を認めたものの,ムスカリン受容体を阻害することによる唾液分泌抑制効果なのか,TRPチャネルの阻害による効果なのかは現在のところ不明であり,カルシウムイメージング法を用いて細胞内カルシウム濃度を直接的に測定することにより,今後さらにメカニズムについて検討する必要があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-APBの阻害作用に関してはTRPチャネルの阻害だけではなく,小胞体膜上に存在するIP3受容体の阻害作用も確認されており,唾液分泌量の測定のみではハイパーサーミアによる唾液分泌促進作用のメカニズム解明は困難であると考えれられる.メカニズムの解明にはSiRNAの使用やカルシウムイメージング法による細胞内カルシウム濃度の測定が不可欠であり,さらに特異的な阻害剤の探索を同時におこなっていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSiRNAを用いたマウスEx vivo顎下腺灌流実験によりハイパーサーミアによる唾液分泌促進効果のメカニズム解明を目指す. TRPチャネルには27種類のサブタイプが確認されているが,そのうちほ乳類の温度感受性に関わるTRPチャネルは9種類と言われており,まずはSiRNAを用いた潅流実験を網羅的に行うことにより,原因となるTRPチャネル候補を絞り込む.さらに各温度(25℃~40℃)におけるSiRNA存在下でのムスカリン性刺激時の細胞内カルシウム濃度をカルシウムイメージング法で測定することにより,ハイパーサーミアによる唾液分泌促進効果のメカニズムを解明する足がかりとする予定である.
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