2016 Fiscal Year Annual Research Report
多波長ライダーと化学輸送モデルを統合したエアロゾル5次元同化に関する先導的研究
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25220101
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鵜野 伊津志 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70142099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 仁士 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 准教授 (40392956)
安永 数明 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (50421889)
弓本 桂也 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50607786)
金谷 有剛 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 分野長代理 (60344305)
長田 和雄 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80252295)
杉本 伸夫 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, フェロー (90132852)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | エアロゾル / PM2.5 / ライダー / 化学輸送モデル / 同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
エアロゾル化学成分連続自動分析装置(ACSA)で1時間毎に粒径別エアロゾル成分濃度を測定することにより、従来は不明であった黄砂や越境汚染イベントの急激な時間変化の実態を明らかにできた。黄砂時に、微少と粗大硝酸塩の増大が顕著なことを示し、硝酸塩の濃度変動を従来にない精度で明らかに出来た。黄砂と汚染質の内部混合の重要性も明らかにされたので、モデルに黄砂表面での不均質反応系を導入し、黄砂によるHNO3ガスの吸収過程(dust-nitrate生成過程)を加味した。モデル結果は黄砂時の硝酸粒子の時間変化を再現していた。dust-nitrateは中国大陸から黄海・東シナ海で急激に生成していることを明らかにした。中国大陸上のHNO3は、海洋上で乾性沈着により除去され通常は越境しないと考えられるが、黄砂表面でdust-nitrateとなって日本域まで越境輸送され、PM2.5としても重要であることを観測とモデル解析から初めて示した。この結果は2編の論文として発表・プレスリリースを行った。 15ヶ月の観測データを用いて、福岡に到達する領域毎のエアロゾル成分寄与、季節変動などを解析した。福岡におけるPM2.5濃度に対する人為起源の寄与の内、約75%は国外寄与であることを示した。影響の大きな地域としては北京、天津、河北省の相対寄与が20.7%、朝鮮半島の相対寄与が13.0%であり、中国の省ベースの寄与率までスケールダウンした影響解析は初めてである。季節ごとの特徴をみると、PM2.5が高濃度となる冬季から春季にかけては約80%が国外寄与であった。 また、多波長ライダー観測結果、エアロゾル化学成分連続自動分析装置(ACSA)、偏光式光学粒子計測器(POPC)の観測結果は、いずれもエアロゾルの混合過程の重要性を示しており、今後のデータ同化の基礎となる成果は4編の論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多波長ラマン散乱ライダーを開発し、黄砂を含めた越境汚染を捉えるのに適した沖縄、福岡、富山の3地点に設置して連続観測を継続している。これまでに、黄砂、大気汚染、海洋性エアロゾルといった、いくつかのエアロゾルイベントについてのデータを取得することができた。多パラメータのライダーデータを用いて、エアロゾル種(タイプ)の分類を試み、多波長ラマン散乱ライダーがエアロゾル種の分離に有効に利用できることを確認した。また、地上のエアロゾルの科学組成の観測を同時に行い、化学組成と光学特性との対応を直接検証することができた。エアロゾル種の分類についてはこれまでの欧米での研究と整合するが、東アジア域では混合状態のエアロゾルが多いことなどの特徴が明らかになった。多波長ラマン散乱ライダーによる連続的な観測は世界的にもあまり例がなく、特に東アジアでの連続観測は意義が大きいと考えられ、研究者間で注目を集めている。 グリーン関数と化学輸送モデルを組み合わせたデータ同化(逆推計)システムは、既に構築済みであり、反応性の乏しいCOやエアロゾルの前駆物質であるNOxに先行して適用し、システムの妥当性を確認している(2編の雑誌に掲載済み)。また、地上観測を用いた同化実験(黄砂粒子、ブラックカーボン、大気汚染物質)にも着手しており、ライダーデータを念頭においた過大の洗い出しとシステムの改良が進展しており、所期の成果に繋がると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
エアロゾル光学特性情報をもとに、開発したライダーデータ処理アルゴリズムの推定精度の向上を図る。ライダーデータ処理アルゴリズムによる福岡、富山、沖縄の3地点の測定データの解析を更に進め、モデル同化に適したデータセットを構築する。エアロゾルイベントの抽出(黄砂飛来、大気汚染粒子の滞留、海塩粒子の移流など)とそのイベント毎の光学特性のモデルを完成させる。ライダー観測と化学輸送モデルを結びつける観測オペレータの完成させる。 エアロゾル成分毎の同化実験に先駆けて、黄砂計測に絞った解析と同化実験を取りまとめる。黄砂のモデル解析には十分な研究蓄積があるので、衛星ライダーやMODIS、ADNET 2波長地上ライダーも含めたさまざまなデータを利用した解析や検証が可能である。開発したオペレータをグリーン関数同化システムに結合させ、黄砂同化システムを構築、ライダーデータや他の観測データを同化することで、黄砂発生に関わるソース関数を最適化する。大規模黄砂イベントを対象に、黄砂発生域と下流域において様々な観測データを用いた検証を行い、同化結果の妥当性を確認する。 黄砂同化システムを成分毎に拡張し、3地点のライダー観測結果を用いた同化計算を取りまとめる。モデル結果と観測結果の精度を確認しながら、同化システムを多成分同時同化システムに拡張し、他の衛星ライダーやMODIS、地上ライダーとの比較も含めて、エアロゾル排出量インバースの精度を高める。 開発・検証されたモデル結果をもとに最終的にエアロゾル再解析データを構築・公開し、エアロゾルの気候影響評価の精度向上にも貢献する。エアロゾル再解析データは論文として発表する
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Real-time observational evidence of changing Asian dust morphology with the mixing of heavy anthropogenic pollution2017
Author(s)
Pan, X.L, I. Uno, Z.Wang, T. Nishizawa, N. Sugimoto, S. Yamamoto, H. Kobayashi, Y. Sun, P. Fu, X. Tang, and Z.F. Wang
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Journal Title
Nature Scientific Reports
Volume: 7
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Optical properties of mixed aerosol layers over Japan derived with multi-wavelength Mie-Raman lidar system2017
Author(s)
Hara, Y., Nishizawa, T., Sugimoto, N., Matsui, I., Pan, X.L., Kobayashi, H., Osda, K. and I.Uno
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Journal Title
Journal of Quantitative Spectroscopy & Radiative Transfer
Volume: 188
Pages: 20-27
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Polarization properties of aerosol particles over western Japan: classification, seasonal variation, and implications for air quality2016
Author(s)
Pan,X.L., I. Uno, Y. Hara, K. Osada, S. Yamamoto, Z. Wang, N. Sugimoto, H. Kobayashi, and Z. F. Wang
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Journal Title
Atmos. Chem. Phys.
Volume: 16
Pages: 9863-9873
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] 九州北部で2014年5月下旬から1週間継続した黄砂と高濃度大気汚染現象のオーバービュー2016
Author(s)
鵜野伊津志, Xiaole PAN,板橋秀一,弓本桂也,原由香里,栗林正俊,山本重一,下原孝章,田村 圭,緒方美治,長田和雄,上口友輔,山田 早紀,小林 拓
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Journal Title
大気環境学会誌
Volume: 51
Pages: 44-57
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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