2013 Fiscal Year Annual Research Report
木簡など出土文字資料の資源化のための機能的情報集約と知の結集
Project/Area Number |
25220401
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 史料研究室長 (30212319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10126295)
耒代 誠仁 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00401456)
笹原 宏之 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80269505)
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70332195)
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (00359449)
森本 晋 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 国際遺跡研究室長 (40220082)
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
久留島 典子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70143534)
山口 英男 東京大学, 史料編纂所, 教授 (40182456)
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論構造研究系, 准教授 (90415612)
朱 碧蘭 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50466918)
大山 航 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10324550)
白井 啓一郎 信州大学, 工学部, 助教 (00447723)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | 日本史 / 史料研究 / 木簡学 / 出土文字資料 / 漢字 / 文字認識 / データベース |
Research Abstract |
A木簡など出土文字資料の情報を効率的に抽出・管理するための研究と画像データの拡充について、(1)アノテーションソフトの開発―木簡の情報を一元的に管理するアノテーションソフトのβ版を完成し、平城宮跡東方官衙出土の削屑の整理で試験運用しその有用性を確認した。(2)画像データの蓄積―奈文研保管の木簡写真約2,500 点のデジタル化の他、平城宮・京跡出土木簡約1,000点のカラー撮影を実施した。また、下関市長門鋳銭所跡出土木簡、浜松市伊場遺跡群出土木簡・墨書土器をはじめ全国の出土文字資料の撮影を行った。(3)文字認識とそのための画像処理―出土文字資料に残る種々のノイズに対処すべく、複数のカラーチャネルを組み合わせた墨判別基準を作成して精度向上を実現し、字形抽出後に残るノイズ、断片化された運筆などを修正・復元する技術も開発した。また、釈読支援システムMokkanshopについて、Windows 8などで動作可能なタッチパネル対応ユーザインタフェースを実装した。 B木簡とその周辺の関連情報を効率的に活用するための知の結集について、(1)形状による検索ソフトの開発―厖大な削屑に対応できる形状による検索ソフトの開発に見通しを得、実際の削屑画像で試用中である。(2)字形データの集成―木簡の文字の異体字関係を明らかにするために標準字体の一覧を作成すべくデータ抽出作業を進めた。(3)木簡関係論文データベースの基礎作業―論文リストの作成を開始し、表示方法を検討した。 他に、a「木簡字典」の外国語版(英・韓・中)の公開(2014年3月)、b「木簡字典」の枠組みによる正倉院文書データベースの構築と画像の切り出し(約100点約6000文字画像)、c第16回IGS国際会議(2013年6月)への参加などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、A木簡など出土文字資料のもつ情報を効率的に抽出・管理するための研究と画像データの拡充、B木簡そのものやその周辺に位置する関連情報を効率的に活用するための知の結集のための研究、この2 つの作業が基礎となる。そしてこれを踏まえて、C釈読支援システム「Mokkannshop」と文字画像データベース「木簡字典」を中核に据えた、新たな統合木簡データベースの構築を図るのが最終目的である。 研究の第1年度にあたる2013年度は、このうちA・Bを中心に進め、Aについては、アノテーションソフトの開発と奈文研保管の資料と全国の出土文字資料の画像データの収集とその管理・活用機能を、またBについては、画像による検索機能の構築と木簡の基本字形の集積などの字体研究、及び研究文献データベースの作成を中心に実施し、「9研究実績の概要」の項に記したような成果を得た。「木簡字典」の外国語版の公開を除いては、正式な公開には至っていないものが多いが、初年度としては所期の目標は概ね達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、A木簡など出土文字資料のもつ情報を効率的に抽出・管理するための研究と画像データの拡充、B木簡そのものやその周辺に位置する関連情報を効率的に活用するための知の結集のための研究、この2 つの作業が基礎となる。そしてこれを踏まえて、C釈読支援システム「Mokkannshop」と文字画像データベース「木簡字典」を中核に据えた、新たな統合木簡データベースの構築を図るのが最終目的である。 本研究は継続的な作業を必要とするため、研究の第2年度にあたる2014年度も初年度同様に粛々と研究を推進していきたいと考える。特に、アノテーションツールの対象の削屑以外の全木簡への拡大、奈文研保管の木簡キャビネ写真のデジタル化と奈文研保管の平城京跡出土木簡・全国の出土文字資料のカラー撮影の継続、削屑の形状による検索ソフトのβ版の活用、画像による検索機能の構築、木簡の文字の標準字体の一覧作成のための作業の継続、木簡を資料として用いた論文リスト作成の継続などを予定している。 なお、上記のCについてはできるだけ早い段階で方向性を見出しておく必要があるため、実務的な作業のかたわら、研究の完成形の枠組みを今年度末くらいまで固めておきたい。アノテーションソフト、形状による検索ソフト、正倉院文書データベースなど、初年度に開発の見通しの付いたものについては、できるだけ早い段階での公開を実現し、実際に運用する中で改善を加えていきたい。 なお、初年度の「木簡字典」外国語版の公開にあたって、予期せぬ脆弱性が見出され、セキュリティー対策に万全を期す必要が生じた。また、XP問題などを契機に今後のシステム管理についても十分な検討を加えておく必要性を改めて認識するに至った。研究計画段階では予期できなかった事態ではあるが、これらについても充分配慮しつつ研究を進めていく所存である。
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