2016 Fiscal Year Annual Research Report
Real Estate Market, Financial Crisis, and Economic Dynamics: An integrated approach from economics
Project/Area Number |
25220502
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
植杉 威一郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40371182)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 千弘 日本大学, スポーツ科学部, 教授 (50406667)
内田 浩史 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60294295)
中島 賢太郎 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (60507698)
祝迫 得夫 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90292523)
渡辺 努 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90313444)
|
Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
Keywords | 不動産市場 / 金融危機 / 経済成長 / バブル / 担保 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度においては、当初計画にある研究を進めるとともに、経済学からの統合アプローチを踏まえて、特定のテーマを様々な手法と角度から分析する研究を実施した。 ・バブルについては、金融市場との関係や経済厚生との関係を明らかにする理論モデルを提示した論文を公刊するとともに、平行して、モデルの予測内容を検証する実証分析を行った。 ・高齢化・人口減少の影響については、マクロ・ミクロの両方のデータを用いて、人口減少が不動産価格を押し下げるメカニズムを定量的に解明する研究を進めた。 ・不動産市場と経済との金融面を通じた相互連関については、不動産を担保に用いない貸出や保有不動産の含み損を損失計上させる減損会計といった新たな制度が、企業行動に及ぼす影響を解明する研究を進めた。 ・不動産市場と家計行動との関係については、慶応大学の日本家計パネル調査に参画して調査を実施した。 国際コンファレンスを2日間にわたって開催し、不動産市場と経済との相互連関について、生産性や価格との関係を念頭に置きつつ議論した。国内外の学会・大学などでの発表、国内外公的機関関係者への研究成果報告・意見交換を行った。研究活動の結果、Review of Economic Studies, International Economic Review, Journal of Economic Behavior and Organization, Regional Science and Urban Economies, Review of Income and Wealth, Journal of Money, Credit and Banking, Journal of Economic Surveysなど、総合学術誌ならびに各分野におけるトップクラスの学術誌、日本やアジア経済を扱う学術誌に、メンバーの論文が掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは、不動産市場における価格メカニズムの解明と金融危機・経済成長との関係に係る仮説検証という、大別して2つの分野における様々な研究を平行して進めてきた。この点では、当初の予定を上回る成果を挙げている。2016年度においては、個々の研究が進捗してきたことから、中間評価を踏まえて、1つのテーマを様々な視点から分析する統合的なアプローチを深めることを意識した。 例えば、不動産を含めた資産バブルに関する研究では、公刊された論文で提示された理論モデルに基づく予測を実証する研究を推進した。バブル生成期と崩壊期における企業の土地保有・取引と生産性との連関を明らかにする研究、がこれらの例である。 また、バブルと並んで不動産市場に大きな影響を及ぼす高齢化・人口減少に係る研究では、多くの国のマクロデータを用いて高齢化・人口減少と資産価格・一般物価との関係を網羅的に把握する研究、日本国内における相続と取引のミクロデータを活用して人口減少に伴う供給圧力の増大が不動産市場に及ぼす影響を定量的に解明する研究、を進めた。 同時に、政策的な含意を得られる研究も推進した。不動産市場と経済との金融面を通じた相互連関に係る研究では、不動産を担保に用いない貸出制度や保有不動産の含み損を明示的に計上することを求める減損会計基準の導入が企業行動に及ぼす影響を解明した。これらの知見は、銀行貸出や企業会計において、効率的な資金配分を行う上での不動産が果たすべき役割について、政策面で重要な示唆を与える。 一方で残された課題も存在する。第1に、統合アプローチに基づいて研究を行うべき新たなテーマが存在している。第2に、バブルの早期警戒指標など、強い政策的な含意を持つ研究対象が残されている。第3に、これまで行ってきた研究を最終的に学術誌に公刊するための取り組みを進める必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
残された課題を踏まえて、以下の点について研究を推進する。 ・理論分析の成果を踏まえ、バブル期における企業の不動産取引や不動産価格の分布情報に基づき、バブルの早期警戒指標に関する研究を推進する。 ・不動産市場と経済の金融面での連関分析に際して、企業の担保資産価値の毀損を通じて資金制約が強まる経路(collateral channel)と、銀行の顧客基盤の毀損を通じて資金制約が強まる経路(bank lending channel)とを定量的に比較する研究を推進する。 ・潜在的な土地供給量と不動産価格の変動に関する分析を通じて、地形的な要因や土地の利用規制が土地の価格弾力性にどのように影響するかを明らかにした上で、日本の都市圏毎に得られるその程度に関する情報を、公共財として公開する。 ・不動産市場に係る豊富な研究実績を有する海外研究者を招聘して研究交流を進めるとともに、5年間の研究成果の取りまとめを行う国際コンファレンスを開催する。 ・既存研究の公刊に向けた取り組みを進める。
|
Research Products
(118 results)