2014 Fiscal Year Annual Research Report
極低温・超高分解能レーザー光電子分光の開発と低温超伝導体の超伝導機構の解明
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25220707
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辛 埴 東京大学, 物性研究所, 教授 (00162785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 行章 東京大学, 物性研究所, 助教 (30442924)
岡崎 浩三 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40372528)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 軟X線レーザー / 超電導 / 超低温 / 高分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界の追随を許さない測定温度500mK、最高分解能50μeVの未踏性能を持つヘリウム3クライオスタット搭載型の角度分解光電子分光装置を開発し、エキゾチック低温超伝導体が持つ超伝導ギャップの直接観測を通して、超伝導転移温度の飛躍的向上への指針確立を目指す。プロジェクト成功への鍵となる主要パーツは、ヘリウム3クライオスタット、光電子アナライザー、磁気シールド搭載真空チャンバーであり、全てにおいて極限的性能が求められる。 H26年度で購入した主な物品はヘリウム3クライオスタットであり、以下の高性能の達成に成功した。現実的な熱負荷条件下(約10mW)で500mKの到達温度を達成可能な冷却機構を設計した。実験の結果、最低到達温度として480mKを得ることが出来た。また、900mkで冷却能力、約20Wが達成できている。 光電子分光測定では、試料に光を照射し、真空中へ放射される光電子を観測する。外部からの熱の侵入を妨げるために入射光と光電子用の窓を設置し、それらをとおして入り込む外部からの熱輻射が試料の冷却を妨げる。そのために多段のサーマルシールドを装備させた。また、室温と接するクライオスタット最先端部からの熱伝導も考慮する必要がある。そのため、理論値に基づきマニュピュレータの長さを選定し、また、ヘリウム4の液体貯蔵タンクからの冷媒を供給することで外部熱伝導を極力抑えた。 高性能光電子分光器は当初予定ではH27年度に購入予定であったが、計画が予定以上に進んだために、H26年度に予算の前倒しを行い、研究の加速を計画した。しかし、より高分解能を目指すためにより高度な技術開発を行う事とした。そのために、H27年度に予算の繰越を行った(前倒しのうえ、その繰越を行ったために、結果的に当初予定どおりのH27年度納入になったので、計画の遅れはない)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置開発を掲げる本プロジェクトにおいて最重要となる装置全体を俯瞰する設計図がキックオフ初年度の早い段階で完成ている。また、具体的装置性能を掲げた上で、各主要パーツの極限的性能の達成へ向けて、同時並行的に開発をスタートできた。磁気シールド搭載真空チャンバーの設計及び開発は当初の計画通りに推進でき、それを具現化した実際の性能特性は予想を遥かに上回った。ヘリウム3クライオスタットでは、ヘリウム4液体で満たす1Kポットを通過して先に伸び、ヘリウム3ガスの流れ道となるキャピラリーの最適化を繰り返すことで、設計にほぼ近い冷却能力を達成できている。 一方、光電子アナライザーの設計に関しては、半球型アナライザー内に設置された光電子が飛び込むスリットへのコーティング技術を改善することで、角度分解光電子分光イメージングに更なる信頼性をもたらした。更に、高分解能を目指して高分解能検知器の綿密な設計を行った(実際の購入はH27年度)。以上のことから、極低温・超高分解能レーザー光電子分光の実現に向けて、各々の主要パーツでは、当初設定目標を上回る極限化が進んでおり、本プロジェクトは今後、予想以上の成果が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
角度分解光電子分光システムの完成に必要な主要パーツ開発は整っている。今後は、たくさんの部品を組み合わせることにより、総合性能として最高性能が上がるように装置を組み上げる。所定の性能が上がっているかどうかは、表面出しが容易な金やBi2212などの参考試料を用いて装置性能を確かめる。 具体的には、(1)建物電源とのアース接続の最適化、(2)光源となるレーザーの繰り返し数及びフォトン強度とそれに伴うクーロン反発由来のスペースチャージ効果の抑制、(3)アナライザー冷却を含めたチャンバー内のサーマルシールドの機能性確認と試料到達温度の極限達成、(4)KBBF非線形結晶による高調波発生の安定化機構導入と強度安定性の確認、(5)低エネルギーレーザーを用いる実験ならではの低運動エネルギー光電子の角度分解制御の難しさから、光電子の軌道制御を担う電子レンズの電圧調整、、、などを綿密に行う。 次年度以降は、以上の高分解能光電子分光器や極低温クライオスタットに対応することができる高分解能検知器を開発し、総合的に実験システムを最適化することが必要とされる。
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[Journal Article] Electronic structure of CeCuAs22014
Author(s)
A. Chainani, M. Matsunami, M. Taguchi, R. Eguchi, Y. Takata, M. Oura, S. Shin, K.Sengupta,E. V. Sampathkumaran, Th. Doert, Y. Senba, H. Ohashi, K. Tamasaku, Y.Kohmura, M. Yabashi, T. Ishikawa
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 89
Pages: 235117(1-8)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ultrafast photoinduced transition of an insulating VO2 thin film into a nonrutile metallic state2014
Author(s)
R. Yoshida, T.Yamamoto,Y.Ishida,H. Nagao, T.Otsuka, K.Saeki, Y.Muraoka,R.Eguchi, K. Ishizaka, T.Kiss,S.Watanabe, T.Kanai, J.Itatani,S.Shin
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 89
Pages: 205114(1-7)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Observing hot carrier distribution in an n-type epitaxial graphen on a SiC substrate2014
Author(s)
T. Someya, H. Fukidome, Y. Ishida, R. Yoshida, T. Iimori, R. Yukawa, K.Akikubo, Sh. Yamamoto, S. Yamamoto, T. Yamamoto, T. Kanai, K.Funakubo, M. Suemitsu, J. Itatani, F. Komori, S. Shin, I. Matsuda
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Journal Title
Applied Physics Letters
Volume: 104
Pages: 161103(1-4)
DOI
Peer Reviewed
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