2015 Fiscal Year Annual Research Report
超精密/高効率化学プラント構築のための大量生産型マイクロデバイス設計・操作
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25220913
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷部 伸治 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60144333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 泰輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10293987)
金 尚弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60735504)
前 一廣 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70192325)
殿村 修 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70402956)
永木 愛一郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80452275)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | ナノマイクロ化学システム / マイクロリアクタ / 精密反応 / 最適設計 / 集積化 / フローケミストリー / モニタリング / プロセス強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前期3年のまとめとして、2項目について各種手法の開発を行った。 (1)マイクロデバイスの設計論の構築と各種デバイス設計・検証 これまで確立したデバイス設計論を種々の反応・分離デバイスに適用し、その有効性を検証した。(a)フロー晶析システムでは、迅速混合器を用いて粒子の析出条件(過飽和度)を厳密に制御し、迅速な粒子析出を行うことで、溶解平衡に基づいた結晶生成に成功した。(b)スラグガス吸収・抽出デバイスに関しては、スラグ流におけるスラグ長さと物質移動係数を、操作条件から推算する式と設計方法を提案し、その設計法に基づきレアメタル抽出操作用の多流路積層型マイクロチャネル装置(相当直径2mm×48流路)を開発した。(c)迅速蒸発濃縮デバイスに関しては、確立した設計論に基づいた流路サイズの選定に加え、蒸気のみを多孔膜を用いて分離することにより従来の熱交換器より5倍以上高い伝熱係数が得られることを示した。(d)精密重合反応器に関しては、従来より反応制御性に優れ、分子量分布を狭い反応器構築に成功した。 (2)マイクロデバイス集積化・安定操作手法の開発 3次元構造の流量分配器を提案し、16並列デバイスを対象に、流量変動を4器の流量計で推定できることを流体シミュレーションにより確認した。また、4並列システムに対して、デバイス入口の圧力振動をフーリエ解析することにより、スラグ長さを精度良く推定するシステムを開発した。鈴木カップリング反応の1.5時間の安定連続運転と、実験中に生じたデバイス閉塞が2つの圧力変化量の比に基づいて特定できることを確認した。さらに、オリフィスを用いた圧力損失を削減手法の提案、圧力変化を利用した閉塞診断法の改良、混合器への供給流量の振動削減法などの開発を行った。 以上の開発により、後期2年の目標である大容量生産用マイクロプラントを設計するための統合的手法確立の目処を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、生産用マイクロデバイス・プラントを設計するための統合的手法を開発し、それに基づいてプロトタイププラントを試作、その性能を評価することにある。その目的のため、5年の研究期間を前期3年と後期2年に分け、前期3年では、(1)マイクロデバイスの設計論の構築と各種デバイス設計・検証、(2)マイクロデバイス集積化・安定操作手法の開発、の2項目に関する研究を行ってきた。 項目1では、当初の計画通り「流体セグメント」の概念に基づいた設計により、所望の混合速度と熱交換速度が得られる流路の衝突・屈曲形状を考慮したデバイスの設計論を確立した。また、セグメントを平均サイズで評価するのではなく、分布を考慮した設計法にも取り組むなど当初計画を超えた範囲まで研究をすすめている。さらに、設計論に基づいた反応デバイスの作製を随時行って効果を実証するとともに、適用範囲を分離デバイスにまで拡張している。特にスラグ抽出デバイスは実機レベルの処理量のものを完成させており、来年度の実用化を見越している。 また、項目2では、外部ナンバリングアップ法と内部ナンバリングアップ法を組み合わせることで、制御性、状態推定性能に着目した2階層ナンバリングアップ法の基本構造を確立した。本手法により、1万トン/年の生産量を処理できる見込みをたてている。また、並列スラグフローデバイスの気体・液体スラグ長さ推定システムの構築、流体分配部に設置した2つの圧力計に基づく閉塞診断法の開発、設計・操作条件のばらつきを考慮した流体分配デバイス設計法のミニマックス戦略に基づく開発など、大量生産型マイクロ化学プラントの設計、操作に不可欠な多くの生産技術を開発した。 以上の成果を発展させることにより、後期2年で目標の成果を達成可能と判断できることから、「おおむね順調に進んでいる」と自己判定する。
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Strategy for Future Research Activity |
後期2年の研究テーマである「超精密/高効率バルク生産システムおよびその操作法の開発」を、設計と操作の2つのグループで連絡を密にとり、成果の共有化を図りながら研究を進める。 設計に関しては、「超精密/高効率バルク生産システムの設計手法の開発とプロトタイプシステムでの検証」を目標に、研究を進める。装置仕様を決定するためには、装置における物質移動速度を把握する必要があるが、多流路の場合流路依存性が懸念される。よって、これまで定量化してきた設計方程式の多流路デバイスへの適用性を検討する。マイクロ化学プラントがそれ自体で完結するためには、分離操作が不可欠である。微小流路を用いた分離精製は並流操作であるため多段操作となる。このような点を踏まえ、多段プロセスの設計手法の開発に取り組み、分離物質を含んだ分離媒体の再生を組み合わせた高効率なプロセスフローを提案し、その設計手法を検討する。そして、対象を定め実際に大容量デバイス・プラントを設計し、そのプロトタイププラントを試作して、数千トン/年オーダーのマイクロ化学プラントの設計手法の有効性を検証する。 操作に関しては、「超精密/高効率バルク生産システムの運転/管理手法の開発とプロトタイプシステムでの検証」を目標に研究を進める。階層的手法によって構築されたプラントを、長期安定運転するためには、計測制御系の検討が不可欠である。平成27年度までに得られた知見を生かし、内部ナンバリングアップされたデバイスの状態推定法、2相流となる反応プロセスの状態推定法の開発と変動にロバストな装置構造の検討、外部ナンバリングアップされたプロセスの状態推定法の開発と、超多並列プロセスに対する計測機能を有した分配、合流ユニット開発を行う。最終年度には、開発したシステム、デバイスを、プロトタイププラントに組み込み、提案した運転/管理手法の有効性を検証する。
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Remarks |
本研究に従事している研究者が中心となって立ち上げた産学連携を図るコンソーシアムのWeb-siteである。本研究の内容は、このweb-siteを通じて、発信されている。
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Research Products
(41 results)