2015 Fiscal Year Annual Research Report
コレステロール恒常性の鍵をにぎるABC蛋白質の作用機構解明
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25221203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 和光 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (10151789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤津 裕康 名古屋市立大学, 医学研究科, 特任教授 (00399734)
戸田 好信 天理医療大学, その他部局等, 教授 (10444465)
長尾 耕治郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40587325)
田中 亜路 安田女子大学, 家政学部, 講師 (60509040)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | コレステロール / 1分子生物学 / 動脈硬化 / トランスポーター / 構造生物学 / ABC蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞中のコレステロールの60-90%は細胞膜に存在している。コレステロール合成の調節は小胞体で行われるが、これまで細胞がどのようにして細胞膜中のコレステロール量を感知するかについては謎であった。本年度は、細胞膜上のABCA1は過剰なコレステロールをHDLとして細胞外へ排出するだけでなく、コレステロールの細胞膜から小胞体への逆輸送にも関与していることを明らかにした(Yamauchi Y. J Biol Chem 2015)。また、高度不飽和脂肪酸はヒトの脳に存在する脂質の25-30%を占め、脳の発達や認知機能に重要であることが知られている。しかし、高度不飽和脂肪酸がどのような経路で神経細胞へ運ばれるのかは不明であった。本研究では、ラット大脳皮質から単離したグリア細胞に添加したDHAやEPAなどの高度不飽和脂肪酸が、まずグリア細胞の細胞膜の膜リン脂質の一部となったのち、アポEを脂質アクセプターとして形成されたHDL(LpE)のリン脂質の脂質部分として分泌されることを、質量分析解析によって明らかにした。さらに、LpEがLDL受容体を介するエンドサイトーシスによって神経細胞に取り込まれること、高度不飽和脂肪酸を含むLpEが海馬神経細胞の分岐数を増加させることによって、神経突起伸長を促進することを明らかにした(Nakato, M. J Lipid Res 2015)。さらに、前年度に、真核生物のABC蛋白質としては世界最高の解像度2.4オングストロームで3次元構造を解明することに成功したCmABCB1の構造をもとにABCA1にアミノ酸置換を導入し、輸送活性に重要なアミノ酸残基を同定することにも成功した(Ito, S. Biosci Biotechnol Biochem 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に記した内容以外に、野生型ABCA1が2つのサイズ(14 nmと10 nm)の新生HDLを産生するのに対し、本年度に新たに発見した二量体形成しにくいABCA1変異体主に小サイズのHDLを産生することを見出した。ABCA1の二量体化とHDL粒子の大きさの関係解明をさらに進めている。また、ABC蛋白質の構造中に内向き構造を安定化するアミノ酸側鎖ネットワークを発見した。そのネットワークに変異を導入することによって、これまで取得が困難であった外向き構造の結晶を取得することに成功した。今回取得したCmABCB1の外向き構造の結晶は非常によい結晶であり、2オングストローム近い高解像度での3次元構造の解析が進行中である。真核生物の外向き輸送を行うABC蛋白質で、外向きと内向きの構造の両方が解明されたものはいまだ存在しない。本研究によって、ATP結合が引き起こすATP結合部位の動き、それに伴う膜貫通へリックスの動き、基質結合部位への基質結合がATP加水分解を促進するメカニズムなどを世界で初めて明らかにできると期待される(投稿準備中)。研究は、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、産生されるHDLの質を解析することによって、二量体化のメカニズムと生理的意味の解明を行う。さらに、ABC蛋白質の輸送途上および外向きに開口した構造の結晶が本年度得られつつある。これらの構造の詳細な解析を進めることによって、これまで不明であった真核生物の排出型ABC蛋白質の基質輸送メカニズムの解明を大幅に進展させることが期待できる。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Deficiency in the lipid exporter ABCA1 Impairs retrograde sterol movement and disrupts Sterol Sensing at the endoplasmic reticulum.2015
Author(s)
Yoshio Yamauchi, Noriyuki Iwamoto, Maximillian A. Rogers, Sumiko Abe-Dohmae, Toyoshi Fujimoto, Catherine C. Y. Chang, Masato Ishigami, Takuma Kishimoto, Toshihide Kobayashi, Kazumitsu Ueda, Koichi Furukawa, Ta-Yuan Chang, and Shinji Yokoyama
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 290
Pages: 23464-23477
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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