2016 Fiscal Year Annual Research Report
コレステロール恒常性の鍵をにぎるABC蛋白質の作用機構解明
Project/Area Number |
25221203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 和光 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (10151789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤津 裕康 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00399734)
戸田 好信 天理医療大学, 医療学部, 教授 (10444465)
長尾 耕治郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (40587325)
田中 亜路 安田女子大学, 家政学部, 講師 (60509040)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | ABC蛋白質 / トランスポーター / コレステロール / 動脈硬化 / アルツハイマー病 / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内のコレステロール恒常性とアルツハイマー病の関係が示唆されている。本年度は、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞で発現し、脳内のコレステロール恒常性の維持に関与していると考えられているABCG1とABCG4の機能がアルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドベータ産生に与える影響を検討した。その結果、ABCG1とABCG4の発現がアミロイドベータの分泌を抑制することを明らかにした。一方、ABCG1とABCG4の発現を抑制すると神経細胞からのアミロイドベータの分泌は増加した。さらに、ABCG1KOマウスでは脳脊髄液中のアミロイドベータ42の量が野生型と比較して増加した。ABCG1とABCG4がガンマセクレターゼの細胞膜中の局在性を変化させることも明らかにし、ABCG1とABCG4がアルツハイマー病予防のターゲットとなることを報告した(Sano, O. PLoS One, 2016)。さらに、これまでアルツハイマー病との関連が示唆されながら生理的役割が不明であったABCA7が、リゾホスファチジルコリンを輸送することを明らかにした(Tomioka, M. BBA in press)。また、これまで細胞膜中のリン脂質が脂質二重層の内層と外層で不均一に分布することは知られていたが、コレステロールについては不明であった。本研究によって、コレステロールが細胞膜外層に内層より10倍以上多く存在すること、その不均一なコレステロール分布にABCA1とABCG1が関与することを明らかにした。さらに細胞が増殖シグナルを受け取った際、ABCA1がリン酸化されてコレステロールを移動させる活性を失うことによって、細胞膜内層のコレステロール濃度が上昇し、シグナル伝達が調節されることを世界で初めて明らかにした(Liu S-L. Nat Chem Biol 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究によって、動物細胞の細胞膜中のコレステロールの分布が初めて明らかとなった。これまでABCA1は、細胞中に過剰に蓄積したコレステロールをHDLとして細胞外へ排出し肝臓へ逆輸送するのが生理的な役割であると考えられてきた。定常状態の細胞において、ABCA1がコレステロールを常に細胞膜外層へフロップしていることが、今回初めて明らかになった。つまり、ABCA1はHDL産生時にコレステロールを細胞外へ輸送するエクスポーター活性とフロッパーゼ活性の2つの異なる活性をもつことが初めて明らかとなった。さらに、脳内で重要な役割を果たしている3つのABC蛋白質、ABCG1, ABCG4, ABCA7の機能を明らかにできた。また、概要に記した内容以外に、動物細胞が細胞外マトリクスと相互作用する部位である細部接着斑の付近の細胞膜が他の部分に比べてコレステロールに富むことも明らかにした。研究は、とても順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、ABCA1のエクスポーター活性とフロッパーゼ活性のスィッチ機構を明らかにする。エクスポーター型ABC蛋白質に関しては、3次元構造に基づいた詳細な作用メカニズムの報告を準備中であり、フロッパーゼとの違いからスィッチ機構の解明に迫れると期待できる。また、ABCA1と相互作用しスィッチ機構に関与する蛋白質の候補も見出している。さらにABCA1はHDL産生時に一時的に二量体化するが、その二量体化が損なわれた変異体の取得に成功している。ABCA1の二量体化機構の解明と上記スィッチ機構の関連を明らかにすることによって、ABCA1の作用メカニズムの解明を大幅に進展させることが期待できる。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Orthogonal lipid sensors identify transbilayer asymmetry of plasma membrane cholesterol2017
Author(s)
Shu-Lin Liu, Ren Sheng, Jae Hun Jung, Li Wang, Ewa Stec, Matthew J O’Connor, Seohyoen Song, Rama Kamesh Bikkavilli, Robert A Winn, Daesung Lee, Kwanghee Baek, Kazumitsu Ueda, Irena Levitan, Kwang-Pyo Kim and Wonhwa Cho
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Journal Title
Nature Chemical Biology
Volume: 13
Pages: 268-274
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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