2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスシグナルの動的制御機構解明による創薬基盤の確立
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25221302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一條 秀憲 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00242206)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | ASK1 / ASKファミリー / 酸化ストレス / 浸透圧ストレス / 小胞体ストレス / ミトコンドリアストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞の機能維持に深く関わる4つの根源的なストレス(酸化ストレス、浸透圧ストレス、小胞体ストレス、ミトコンドリアストレス)と、研究代表者が世界に先駆けて明らかにしてきたそれらストレスの受容・認識の鍵となる分子群に焦点を当てながら、ストレス受容から細胞応答に至る一連のストレスシグナル分子機構の解明とそれに基づいた新たな創薬基盤の創成を目指している。本年度においては、本研究の解析対象の軸として据えた上述の4つの目標を達成するため、研究代表者が最も得意とする【1】生化学・分子生物学アプローチによる最先端のシグナル伝達分子機構解析、【2】各種ノックアウトマウスおよび病態モデルマウスを用いた病態生理学的解析を中心に据え、【3】低分子化合物スクリーニング並びに阻害剤開発、【4】分子結晶構造解析なども総動員して研究を行った。研究体制としては、研究代表者が全体を総括・運営し、目標ごとに設定された連携研究者が大学院生と共に共同で研究を進める従来の形を取り、以下に示す目標ごとの進捗が得られた。 目標1:ASKファミリー複合体による酸化ストレス応答機構の解明 目標2:ASK3による浸透圧ストレス依存的両方向性細胞応答機構の解明 目標3:SOD1/Derlin-1結合による小胞体ストレスならびに亜鉛ホメオスタシス機構の解明 目標4:PGAM5切断制御を介したミトコンドリアストレス応答機構の解明
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示す目標ごとに概ね順調な進捗が得られた。 目標1 ASKファミリー複合体による酸化ストレス応答機構の解明:ASK2誘導機構の解析と、誘導されたASK2を含むASKファミリー複合体の酸化ストレス応答における役割の解析を行い、酸化ストレス依存的なPP5、KLHDC10、 同定したE3リガーゼ、USP9XのASK1との結合プロファイルならびにその際のASK1のリン酸化・ユビキチン化状態の解析と各因子の発現抑制細胞におけるそれらの変化を検出することで、「リン酸化」、「ユビキチン化」という二つのタンパク質修飾機構が、どのように関連しながらASK1の活性化ならびに細胞応答を制御しているのかを明らかにすることができた。 目標2 ASK3による浸透圧ストレス依存的両方向性細胞応答機構の解明:浸透圧ストレスに対する両方向性の応答性を示すASK3分子の活性制御機構の解析を通じて哺乳類細胞の浸透圧ストレスセンサーの分子探索ならびにASK3シグナルの生理的役割の解明を目指し、各浸透圧状態でクロスリンクを行い、結合分子をMSにより同定することが可能となった。 目標3 SOD1/Derlin-1結合による小胞体ストレスならびに亜鉛ホメオスタシス機構の解明:ゲノムワイドRNAiスクリーニング系を適用することで、SOD1-Derlin-1結合による亜鉛枯渇認識機構と小胞体ストレス誘導機構の解明ならびに、そのALS病態との関連の一端を明らかにするとともに、SOD1の変異化型因子の探索を行い、一定の成果を得た。 目標4 PGAM5切断制御を介したミトコンドリアストレス応答機構の解明:膜電位低下依存的なPGAM5切断制御の分子機構とPGAM5によって誘導されるストレスシグナル伝達機構の解析にゲノムワイドRNAiスクリーニング系を適用し、膜電位低下を伴うミトコンドリアストレス応答機構の一端を解明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に掲げた当初よりの4つの目標に対し、予定通り、生化学・分子生物学アプローチによる最先端のシグナル伝達分子機構解析、各種ノックアウトマウスおよび病態モデルマウスを用いた病態生理学的解析を中心に据え、低分子化合物スクリーニング並びに阻害剤開発、分子結晶構造解析なども総動員して、細胞の機能維持に深く関わる4つの根源的なストレス応答機構の全容解明ならびにそれに基づく創薬基盤の確立を推進する。特にゲノムワイドRNAiスクリーニング系ならびに化合物スクリーニング系の下地作りには大きな成功を収めているため、これらの系を基盤にさらに大きく発展させる。 以下に示す目標ごとの方針を示す。 目標1 ASKファミリー複合体による酸化ストレス応答機構の解明:ASK2誘導機構の解析と、誘導されたASK2を含むASKファミリー複合体の酸化ストレス応答における役割の解析を行う。 目標2 ASK3による浸透圧ストレス依存的両方向性細胞応答機構の解明:浸透圧ストレスに対する両方向性の応答性を示すASK3分子の活性制御機構の解析にゲノムワイドRNAiスクリーニング系を適用することで、哺乳類細胞の浸透圧ストレスセンサーの分子実体ならびにASK3シグナルの生理的役割の解明を目指す。 目標3 SOD1/Derlin-1結合による小胞体ストレスならびに亜鉛ホメオスタシス機構の解明:SOD1-Derlin-1結合による亜鉛枯渇認識機構と小胞体ストレス誘導機構の解明を通じ、特にスクリーニング等で得られた分子とALS病態との関連を明らかにする。 目標4 PGAM5切断制御を介したミトコンドリアストレス応答機構の解明:膜電位低下依存的なPGAM5切断制御の分子機構とPGAM5によって誘導されるストレスシグナル伝達機構の解析をRNAiスクリーニング系を用いてさらに進め、膜電位低下を伴うミトコンドリアストレス応答機構の解明を目指す。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] The DEAH-Box RNA Helicase DHX15 activates NF-κB and MAPK signaling downstream of MAVS during antiviral responses2014
Author(s)
Mosallanejad, K., Sekine, Y., Ishikura-Kinoshita, S., Kumagai, K., Nagano, T., Matsuzawa, A., Takeda, K., Naguro, I. and Ichijo, H.
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Journal Title
Sci. Signal.
Volume: 7
Pages: ra40
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Roquin-2 promotes ubiquitin-mediated degradation of ASK1 to regulate stress responses2014
Author(s)
Maruyama, T., Araki, T., Kawarazaki, Y., Naguro, I., Heynen, S., Aza-Blanc, P., Ronai, Z., Matsuzawa, A. and Ichijo, H.
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Journal Title
Sci. Signal.
Volume: 7
Pages: ra8
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] SOD1 as a molecular switch for initiating the homeostatic ER stress response under zinc deficiency.2013
Author(s)
Homma, K., Fujisawa, T., Tsuburaya, N., Yamaguchi, N., Kadowaki, H., Takeda, K., Nishitoh, H., Matsuzawa, A., Naguro, I., and Ichijo, H.
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Journal Title
Mol. Cell
Volume: 52
Pages: 75-86
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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