2013 Fiscal Year Annual Research Report
大陸に由来するアジアンスモッグ(煙霧)の疫学調査と実験研究による生体影響解明
Project/Area Number |
25241015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
市瀬 孝道 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50124334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 佳代 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (60444717)
岸川 禮子 独立行政法人国立病院機構福岡病院(臨床研究部), その他部局等, 准教授 (50450945)
嵐谷 奎一 産業医科大学, その他部局等, 名誉教授 (10141748)
鵜野 伊津志 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70142099)
清水 厚 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (90332238)
下原 孝章 福岡県保健環境研究所, その他部局等, その他 (00446858)
山本 重一 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (60446862)
吉田 成一 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (40360060)
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (20322381)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
三村 達哉 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70463867)
藤本 正典 福岡市保健環境研究所, その他部局等, その他 (10646350)
木下 誠 福岡市保健環境研究所, その他部局等, その他 (30647079)
小川 貴史 福岡市保健環境研究所, その他部局等, その他 (60713758)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 煙霧 / PM2.5 / 疫学調査 / アレルギー憎悪 / 喘息 / アレルギー性結膜炎 |
Research Abstract |
1.PM2.5の免疫担当細胞への影響:北九州市で捕集された黒色微小粒子(PM2.5)を360度で熱処理して、マウスに経気道曝露して、脾臓細胞の免疫応答を細胞増殖反応により調べた。LPSとConAに対する反応は、加熱PM2.5を投与したマウスの群で有意に高かった。 2.PM2.5のアレルギー性結膜炎への影響:C57BL/6マウスの眼球に生理食塩水、スギ花粉、PM2.5、スギ花粉+PM2.5を点眼し、結膜浮腫と充血に対するスコアーを調べた。スギ花粉+PM2.5群では著しくスコアーが高く、結膜炎に対するPM2.5の増悪作用が認められた。現在、結膜中のサイトカイン濃度を解析中である。 3.PM2.5の気管支喘息への影響:卵白アルブミン誘導性のアレルギー性気道炎症に対する熱処理PM2.5と不加熱PM2.5の影響をBALB/cマウスを用いて調べた。その結果、熱処理PM2.5より不加熱PM2.5では著しく好酸球性気道炎症が悪化していたことから、PM2.5に含まれる熱易変性物質と増悪作用との関連が示唆された。 4.煙霧(PM2.5)の疫学調査:福岡市・国立環境研究所の分担研究者を中心として、平成26年度春より行う微小粒子状物質(PM2.5)の短期曝露が小児の呼吸器症状に及ぼす影響を評価するための疫学調査およびPM2.5濃度観測の準備を行った。本格調査に先立ち平成25年秋にパイロット調査を行い、質問票・症状日記の記入率やフィードバックの情報をもとに質問票・症状日記の内容を修正するとともに、調査に必要な対象者数、調査実施小学校を決定した。一方、福岡市における救急搬送データと大気環境の観測データを用いた統合データセットを作成するとともに、PM2.5と日々の救急搬送数との関連について統計的手法を用いて評価した。PM2.5濃度の上昇により、救急搬送数、特に呼吸器疾患に関連する救急搬送数が増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験研究においては、煙霧時に採取したPM2.5を用いて、気管支喘息モデルやスギ抗原によるアレルギー性結膜炎モデルにてその増悪作用を調査することができた。いま現在、これらの論文作成を行っている。免疫担当細胞に及ぼすPM2.5の影響に関しては、骨髄由来分化細胞や脾臓細胞を用いて、細胞増殖能を初めとして表面マーカー、細胞生存シグナル分子マーカー、転写因子、サイトカイン産生への影響を調べている。煙霧(PM2.5)の疫学調査では、本格調査に先立ち平成25年秋にパイロット調査を行い、質問票・症状日記の記入率やフィードバックの情報をもとに質問票・症状日記の内容を修正するとともに、調査に必要な対象者数、調査実施小学校を決定した。本格調査の準備とPM2.5濃度観測のための準備は順調に進んでいると判断する。また、既存のアウトカムデータ収集と環境データの統合研究においては、既存のデータからPM2.5濃度と救急搬送数(呼吸器疾患)との関連が示され、現在疫学関連の学術論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
PM2.5による生体影響に関しては、炎症反応やアレルギーの増悪がPM2.5粒子に付着したLPSや化学物質(タール成分)から生ずる活性酸素による可能性が高いため、実験研究ではLPS阻害剤のPolymixin Bや活性酸素阻害剤を用いて、どれだけ炎症やアレルギー反応が抑えられるかを、卵白アルブミンを用いたマウス喘息モデルやスギ花粉を用いたアレルギー性結膜炎モデル、脾臓の免疫担当細胞を用いて調べ、その増悪メカニズムを調べる予定である。疫学調査に関しては小学校高学年1,500人を対象に本格調査を実施する予定である。ベースライン調査後、1か月程度の症状日記を記録する。症状記録に同期してPM2.5, Ox, NO2, SO2濃度の経日的な連続測定とライダーによる大気汚染粒子(PM2.5)の曝露量の日データ等の疫学調査の曝露指標を作成し、症状との関連性を調査する予定である。また、今年、3月~5月に福岡市内の医療機関において、呼吸器疾患の治療のために通院している患者を対象とし、煙霧発生時における呼吸器症状記録、治療薬の増減、症状の増悪や予防行動の有無等を調査する予定である。
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