2014 Fiscal Year Annual Research Report
大陸に由来するアジアンスモッグ(煙霧)の疫学調査と実験研究による生体影響解明
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25241015
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
市瀬 孝道 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50124334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 佳代 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60444717)
岸川 禮子 独立行政法人国立病院機構福岡病院(臨床研究部), その他部局等, 准教授 (50450945)
嵐谷 奎一 産業医科大学, その他部局等, 名誉教授 (10141748)
鵜野 伊津志 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70142099)
清水 厚 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (90332238)
下原 孝章 福岡県保健環境研究所, その他部局等, その他 (00446858)
山本 重一 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (60446862)
吉田 成一 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (40360060)
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (20322381)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
三村 達哉 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70463867)
藤本 正典 福岡市保健環境研究所, その他部局等, その他 (10646350)
木下 誠 福岡市保健環境研究所, その他部局等, その他 (30647079)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 煙霧 / PM2.5 / 疫学調査 / アレルギー増悪 / 喘息 / アレルギー性結膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.小学生の呼吸器症状に対する煙霧の影響を評価するパネル研究のための本格調査(上田、藤本、木下、鵜野、清水、下原、山本):5月に福岡市内の小学生を対象に調査を行った。質問票・症状日記を配布し、日々の症状情報を集め、また調査期間の大気汚染物質の観測を行った。質問票の回収率は92.4%であり、日々の症状の変動について分析中である。2.呼吸器疾患患者の呼吸器症状に与える煙霧の影響と予防行動に関する調査(岸川):慢性呼吸器疾患患者約1000名に調査を行った。鼻、咳、咽頭、眼、皮膚症状が100~130名に出現した。黄砂・煙霧日は外出を控える、マスク装着、薬剤増量などの対策をとっていた。3.黄砂飛来予測と実験研究用PM2.5ダストの収集・成分分析(嵐谷):煙霧時のダストを収集し分析した。PM2.5の発生源について検討した結果、石炭燃料、バイオマス燃料由来であり、大陸からの影響が示唆された。4.黒色微小粒子と化学成分が気管支炎・気管支喘息に与える影響(市瀬、吉田、定金):PM2.5は細胞培養系で酸化的ストレス遺伝子発現を高めた。抗酸化剤(NAC)はその遺伝子発現を低下させたが、炎症性関連遺伝子発現を抑えなかった。マウスのPM2.5経気道曝露ではNACによって肺の炎症とアレルギー炎症が抑制されることを見出した。5.黒色微小粒子と付着する化学成分が免疫担当細胞に及ぼす影響(吉田安宏): PM2.5やPM10を経気道曝露したマウスの脾細胞の細胞増殖活性を低下させたことから、PM2.5やPM10によって免疫担当細胞に障害が起きていることが示された。6.マウス結膜に対する黒色微小粒子と化学成分の影響(三村):大気中の粒子状物質とスギ花粉によるマウス結膜炎モデル実験から、結膜炎症状増悪メカニズムはアレルギー免疫応答による影響だけでなく、粒子の物理的刺激が症状を増悪させていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福岡市における救急搬送データと微小粒子(PM2.5)および粗大粒子(SPM-M2.5)との関連について解析し、2論文を公表することができた。 実験研究では越境粒子状物質が飛来した北九州の煙霧時に採取したPM2.5を多く含む大気粉塵の肺の炎症やアレルギー増悪作用についての研究成果を論文として公表することができた。 PM2.5のヒトアレルギー性結膜炎への影響について調査を行い、その研究成果を論文として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
小学生の呼吸器症状に対する煙霧の疫学調査では、昨年の調査に引き続き、煙霧が発生する4~5月に、小学校高学年1,500人を対象に調査を実施し、症状記録に同期して大気汚染粒子(PM2.5)の曝露量の日データを作成し、この曝露指標と症状日記を比較し、データとしてまとめ前年度データを含めて論文とする。呼吸器疾患患者の呼吸器症状に与える煙霧の影響と予防行動に関する調査では、福岡市内の医療機関において、呼吸器疾患の治療のために通院している患者を対象とし、呼吸器症状記録、治療薬の増減、症状の増悪や予防行動の有無等を調査する予定である。 実験研究の動物実験では、PM2.5による肺の炎症やアレルギー炎症増悪が、粒子に付着したLPSによる炎症から生ずる活性酸素による可能性が高いため、今年度は市販のLPSと加熱によって吸着物を取除いたPM2.5を用いて、これらの炎症が抗酸化剤のNACによってどれだけ抑えられるかを、マウスモデルにて調べる予定である。細胞培養実験では、動物実験で採取した免疫担当細胞の脾臓細胞について、ex vivo系で炎症性サイトカイン発現とNFκBの発現を調べ、LPSと活性酸素の免疫系への関与を明らかにする予定である。粒子状物質の眼への影響としては、ヒト結膜上皮細胞に、スギ花粉抗原と微生物由来の成分(LPS やβ-グルカン)や加熱した黒色微小粒子を添加し、培養後の培養上清中のサイトカイン類、培養細胞中のサイトカイン類や接着分子等の遺伝子発現を調べ、微生物成分と粒子の相互作用におけるアレルギー性結膜炎の増悪メカニズムを明らかにする予定としている。これらの研究成果をまとめて論文発表したい。
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[Journal Article] PM2.5-rich dust collected from the air in Fukuoka, Kyushu, Japan can exacerbate murine lung eosinophilia2015
Author(s)
He M, Ichinose T, Ren Y, Song Y, Yoshida Y, Yoshida S, Arashidani K, Nishikawa M, Hirohisa Takano H, Sun G
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Journal Title
Inhalation Toxicology
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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