2015 Fiscal Year Annual Research Report
環境メタゲノミクスで富栄養淡水湖沼での新しい窒素循環像を探る
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25241021
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
諏訪 裕一 中央大学, 理工学部, 教授 (90154632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉永 郁生 公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (40230776)
高見 英人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (70359165)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Anammox / 環境メタゲノム / 窒素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では,これまで,富栄養湖である北浦のごく限られた地点,北浦北端で流入する窒素負荷に由来する湖水中硝酸塩濃度が高いKU3地点で,嫌気的アンモニア酸化 (anammox) が安定かつ永続的に維持されていることを見出した。流れにしたがって南下するにつれてanammox活性が低くなり,KU4地点は弱い活性が検出されたものの,さらに南のKU6地点では,ほとんど活性が検出されなかった。 2014年度ではこれら3地点での,好気的アンモニア酸化細菌,脱窒菌,およびanammox微生物それぞれの群集構造を偏りなく特徴づけ,上記課題の解明の糸口見いだそうとした。あらゆる生物が1コピーだけ保有するリボソームタンパク質のアミノ酸配列を対象に,個々の配列の系統学的位置づけとアバンダンスを求めた。その結果,anammox微生物のpopulationは活性の高いKU3地点の0.307%で最も多く,KU4地点で0.17%,KU6地点で0.086%であり,活性と相関が見られた。一方,脱窒菌には差が見られなかった。また,いずれの地点でもAOBが優占し,AOAはほとんど存在していないことが示された。脱窒モジュール全体のアバンダンスと脱窒活性との間には相関はなかった。KU3地点ではanammox微生物が永続的に存在するだけでなく,脱窒菌にも特徴がある可能性が示された。また,最新の情報をもとに窒素循環に関わる代謝経路と対応する酵素をまとめた。 2015年度ではアップデートされたメタゲノム解析ソフトを用いて,一部の解析結果を再計算し,より詳細な群集構造データを求めた。その結果,従来の知見に加え,KU3, 6地点においては新規性のあるDeltaproteobacteriaに属する脱窒菌が存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年の課題であるアップデートされたメタゲノム解析ソフトを用いて一部の解析結果を再計算し,より詳細な群集構造データを得たこと,そして得た情報を解析し,学会発表を行った。現在は,論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Deltaproteobacteriaに属する脱窒菌の存在の有無は引き続き解析する。ところで,アップデートされた現在のメタゲノム解析ソフトでもanammoxの情報が不足しているため,アバンダンスを求めることができない。しかし,昨年11月にNatureで発表された論文によってanammoxの代謝経路の仮説が立てられた。現在それを利用する準備を進めており,目処が立った。今後はこれを利用して北浦のanammox微生物に対してアバンダンスの情報を求め,anammoxとそれ以外の微生物の相互作用を示唆する情報を探り出す。
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