2013 Fiscal Year Annual Research Report
自律型研究人材育成を目指した安全教育・管理システムの提案
Project/Area Number |
25242014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 義人 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70213709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 仁 大阪大学, 安全衛生管理部, 教授 (20222383)
田中 寿郎 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (60171782)
林 瑠美子 東京大学, 環境安全本部, 助教 (50508421)
百瀬 英毅 大阪大学, 低温センター, 助教 (80260636)
伊藤 和貴 愛媛大学, 農学部, 准教授 (50253323)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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Keywords | 科学教育カリキュラム / 環境安全学 / 実験研究 / 安全配慮型人材 |
Research Abstract |
本研究では大学などの研究教育現場において、学生を含む実験研究者が、自らの作業に存在するリスクを自律的に最小化し、適切な作業環境で活動を実施することを支援するための、合理的かつ実効的な安全管理・教育システムの提案を目的としている。現在までに以下の検討を進めている。 [1]実験事故発生メカニズムに関する検討として、まず実験作業の特徴に基づく分類とパラメータ化に着手した。基本的な実験作業を対象とした被験者実験を計画し、実施するモデル作業と測定機器の選定を行った。 [2]化学物質の利用実態を明らかにするために、実際の実験室の様子を定点カメラで撮影、RFIDシステムによって化学物質(試薬・洗瓶)の移動情報を取得、実験者における個人ばく露測定を行い、これらのデータから、実験室共有という観点における化学物質の曝露リスクについて検討した。 [3]実験室環境の安全度に対する評価指標を得ることを目的として、大阪大学内のすべてのヒュームフード(約1000台)について、実地調査と写真撮影を行った。使用形態の分布を調査し、装置等が固定的に置かれているもの、多目的に実験で使用するもの、廃溶媒等有害蒸気の発散防止に使われているものなどに分類した。 [4]外国人の留学生・研究者を対象にアンケートを愛媛大学で試行した。その結果、外国語での安全教育が不十分である実態が明らかになった。また、海外の大学における安全衛生管理体制について、豪州クイーンズランド大学やシンガポール国立大学の現状を調査した。 [5]実験者自らが体験学習する安全教育ツールについては、大阪大学でこれまで紙ベースで実施している、学生や教職員の危険意識を醸成することを目的としたブラインドシミュレーションのソフトウェア化を行った。今年度はプレイヤーへの指示やプレイヤーによる回答の表示システムを完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験作業のパラメータ化を目的とした被験者実験については、当初計画でのモデル作業として蒸留作業を想定していたが、化学実験を構成するその他の基本作業にも範囲を広げ、選定を行っている。また実験行動のモニタリング方法に関しても、実際の作業において測定を行い、データの精度について検討を行うなど、被験者実験を行うための準備は順調に進んでいる。 化学物質の使用実態モニタリングについては、高分子化学を専門とする実際の研究室に協力を依頼し、実験室の様子を定点カメラで記録し、試薬の使用状況をRFIDシステムによって記録した。これらの成果の一部は、すでに口頭発表や投稿論文として発表されており、今後さらに解析を進めることにより、化学物質利用実態把握のためのポイントを抽出することが期待される。 実験室の安全度評価に関する検討については、ヒュームフードに関する実地調査と写真撮影など、研究代表者および分担者が所属する大学におけるデータ収集が概ね完了した。また、巡視者の指摘項目や視線解析の実験的データ取得に向け、実測する実験室の条件やヒアリング内容などの検討を開始するなど、当初の目標通り順調に進んでいる。 外国人留学生・研究者に対する安全教育については、愛媛大学内でアンケートを実施し、外国語での安全教育の実態や課題を明確にする一方、全国調査を行うためのアンケート項目の改善に取り組むなど、計画に沿って順調に進捗している。 安全教育コンテンツについては、ブラインドシミュレーションのソフトウェア化が計画通りに進められている。 以上のように、細かい計画修正があるものの、研究は概ね順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
【1.実験作業の安全構造に関する行動科学的解析】基本の実験作業や一連の実験操作について被験者実験を行い、各作業を特徴付ける因子を統計的手法によって抽出し、作業結果を作業者の特性と作業の特徴との関係性から説明する行動科学的モデルを構築する。 【2.化学物質利用実態に基づく適切な管理・教育手法】化学系の実験室における実験行動解析から、レイアウトと作業内容の関係、試薬や廃液の保管場所、実験内容と試薬の使用状況の関係などの観点から、化学物質の取扱い実態を整理し、化学実験に必要な安全対策の指針及び教育手法を提案する。 【3.自主的リスク管理のための安全管理チェック手法】ヒュームフード使用形態の類型化により利用実態からリスク算定手法を検討していく。一方で、巡視者の指摘項目や視線解析を通じて、実験室環境の評価項目を整理し、作業者が見落としやすい実験室内の危険箇所について検討する。 【4.レジリアンスとフレキシビリティが両立する実験室設計】実際の実験室内環境を各種センサーや動線解析装置を用いてモニタリングし、使用実態データや使用者の意見をもとに、設備のフレキシビリティなどの観点から、研究活動のアクティビティを損なうことなく災害に強い実験室環境実現のための指針を得る。 【5.留学生や外国人研究者の安全管理・教育】実態調査を全国へ拡大するとともに、留学生や外国人研究者が国内の実験研究施設で安全に研究を進めるための、リスクコミュニケーションや教育プログラムのあり方を提案する。また、外国人に危険性を直感的に伝えられるピクトサインのデザインについて検討を進める。 【6.安全教育ツールとしての実験シミュレーションコンテンツ】前年度に引き続きソフトウェア化を行い、試作されたツールを各研究者が所属する機関の安全講習や実験ガイダンス等で試行し、教員側および受講者からの意見をもとに、コンテンツとしての完成度を高める。
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Research Products
(9 results)