2015 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災復興システムのレジリアンスと沿岸地域における津波に対する脆弱性評価
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25242036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村尾 修 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (70292753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照本 清峰 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, その他部局等, その他 (10416399)
姥浦 道生 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378269)
目黒 公郎 東京大学, その他の研究科, 教授 (40222343)
柄谷 友香 名城大学, 都市情報学部, 教授 (80335223)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 都市震災復興 / 南海トラフ / 津波避難 / 脆弱性評価 / BCP / 三陸大津波 / 生活再建 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「A. 2011年東日本大震災被災地における被災メカニズムと復興システムの検証」および「B. 西日本大震災に向けた新しい津波防災対策と復旧・復興戦略の構築」の2つの大テーマにより構成され、以下の領域ごとに研究分担している。 「a. 都市空間」領域では、2015年国連防災世界会議において採択された仙台防災枠組2015-2030における統計的テキスト解析を行った。また、恒久住宅建設データに基づき、地域ごとの建物復興曲線を構築した。「b. 土地利用計画」領域では、宮古市におけるトップダウン型の住民参加計画手続きについての詳細な調査と災害危険区域の指定実態について調査を行い、課題を明らかにした。 「c. 津波避難」領域では、徳島県海陽町宍喰地区における2回の避難訓練によりリアルタイムデータを取得し、また2015年2月に徳島県南部で発生した地震発生後の対応に着目して、大きな揺れを感じた直後の小学生の津波避難に関する認識とその規定要因を把握することを目的とした調査を実施した。 「d. 住民の生活再建」領域では、震災発生以降行ってきた岩手県陸前高田市における参与観察及びエスノグラフィー調査に基づき、自己や他者の生活や地域コミュニティを再構築するプロセスを明らかにした。「e. 事業所再建」では、実施済みの宮城県内企業に対するアンケート調査結果を踏まえて、企業における被害軽減対策の現状や被災後の事業再建や売上増に関連する要素の抽出とそれぞれの関連性について分析した。 これらの成果を、国内外の学術雑誌、学会、著書、および国内外での招待講演などで広く発表した。また内閣府「避難所の確保と質の向上に関する検討会」におけるガイドラインの策定や、自治体や自治会の研修訓練での助言を通じて広く社会に実装している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年3月に研究分担者、研究協力者との当該研究報告会を開催した。その中でそれぞれの役割分担について進捗状況を報告するとともに情報共有し、おおむね順調に進展していることが確認できた。 「a. 都市空間」領域では、順調にデータ収集と整理も進み、予定どおり復興曲線も構築でき、学術論文も執筆中である。平成28年3月には仙台市主催の仙台防災未来フォーラム2016の展示セッションにおいて、2011年東日本大震災による被災沿岸地域の被災状況や復興計画について収集したデータをポスター形式にて公表するとともに被災地である東北6県の沿岸部の都市を対象として震災以前の街の変遷と震災後の復興過程をまとめ、Google Earthに視覚化したものをスライドショーにて上映した。「b. 土地利用計画」領域では、これまでに時間をかけて作成した石巻市の地図作成作業もほぼ完成し、次の展開に進められる状況となった。「c. 津波避難」領域では、これまでの調査に基づき査読論文として取りまとめ中である。「「d. 住民の生活再建」領域では、研究成果が内閣府の「避難所の確保と質の向上に関する検討会」におけるガイドラインの策定にも活かされ、順調に進んでいると言える。「e. 事業所再建」では、宮城県内企業に対するアンケート調査分析によって、さらなる展開が見えてきた。これらの成果が西日本地域における事業所再建計画にも活かせるよう進めていけそうである。 以上のことから予定どおり、次年度以降の展開が期待できる状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、過去3年間の活動を下地として進めていく。平成27年度における各分担者の活動が順調であるため、基本的に予定通り進めていく。 「a. 都市空間」領域では、復興曲線を用いた復興過程の定量化をさらに進めるとともに、西日本沿岸部に関する都市の津波リスク実態を把握するための調査を行う。「b. 土地利用計画」では、都市空間利用に関する既存手法に関する課題の整理と、被災後の計画・策定手続き・実現手法の提案を行うこととなっている。具体的には、計画策定手続きに関しては、被災前から住民自治組織がある場合の効果と課題を明らかにすることを通じて、平時のまちづくり活動の重要性について実証的に、また計画実現手法については、前述の開発実態と土地利用規制・復興事業等との関係性についての分析を通じて、持続可能な都市形態を実現するための規制・誘導・事業方策に関する提案を行う。 「c. 津波避難」では、引き続き徳島県海陽町を対象とした津波避難対策のあり方を検討する。前2回の調査データと比較することにより、避難時の状況、避難者の属性を考慮した対応課題の分析を行う予定である。 「d. 住民の生活再建」では、東日本大震災後の自主住宅移転再建の実態と課題を解明し、広域巨大災害における持続可能な住宅復興戦略と支援制度の提案と実装を目指す。具体的には、沿岸被災9市町における個人/地域/行政主導型住宅移転再建を対象と、共通する質問紙調査を実施し、それぞれの実態と行動を可能にした要件、個人・世帯の効用を明らかにする。 「e. 事業所再建」では、実施済みのアンケートについて更なる分析を進め、将来に向けての実質的な備えのあり方を具体的に提案していく。また高知県を対象に次の南海トラフ地震への備えを進めている企業の実態調査を行い、地域全体の視点で大規模災害後に必要となる現実的な企業の事業継続・存続策についてとりまとめる。
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