2014 Fiscal Year Annual Research Report
尊厳概念のアクチュアリティ――多元主義的社会に適切な概念構築に向けて――
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25244001
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 泰史 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (90183780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇佐美 公生 岩手大学, 教育学部, 教授 (30183750)
齋藤 純一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60205648)
松井 佳子 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (60255180)
大河内 泰樹 一橋大学, 社会学研究科, 准教授 (80513374)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人間の尊厳 / 生命の尊厳 / 高齢者の尊厳 / 多元主義 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究計画にもとづき、9月に分担者と研究打ち合わせを行ない、平成26年度の計画を確認すると同時に、哲学・日本哲学・中国学等の研究者を招聘して「生命」と「尊厳の概念史」に関連したワークショップ(一橋哲学フォーラムおよびドイツ応用倫理学研究会と共催)を開催した。 10月にはシェーンリッヒ教授(ドレスデン工科大学)・ビルンバッハー教授(デュッセルドルフ大学)・シュトゥルマ教授(ボン大学)らを招聘して「生命の尊厳」に関連した国際ワークショップ(Hitotsubashi International Conferenceおよびドイツ応用倫理学研究会と共催)を開催した。この国際ワークショップでは、特にシェーンリッヒ教授の「自律」を「自己愛(Selbstliebe)」と読み直すことによって「尊厳」の概念を人間から動物にまで拡張できるとするカント解釈に注目が集まり、「生命の尊厳」に接近する一つの有力なアプローチとして活発な討論が行なわれた。 11月には渡独してグライフスヴァルトでのワークショップに参加したあと、研究打ち合わせをシェーンリッヒ教授およびケットナー教授と行い、ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミーで『オプス・ポストゥムム』に関する情報交換を行なった。 2015年2月にはリンデマン教授(オルデンブルク大学)を招聘して暴力に関連した社会学的観点から承認など「尊厳」に関連する研究会を開催した。 3月にはデュッセルドルフ大学で国際ワークショップを開催して「尊厳」に関して多角的に議論した。「高齢者の尊厳」が日本から発信した概念であることが明らかとなり、有益であった。3月末にはクヴァンテ教授(ミュンスター大学)を招聘して多元主義的民主主義社会と尊厳概念に関する研究会を開催してこの概念に関する新たな知見を得ることができた。3月に『ドイツ応用倫理学研究』第5号を編集して公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初研究目的の達成度に関して、おおむね順調に進展しているとした理由としては、(1)当初予定していたワークショップや国際ワークショップ、さらに著名な国内外の研究者の招聘や国際ワークショップへの参加などが予定通りに行なわれ、特に10月に一橋大学で、そして3月にデュッセルドルフ大学で開催した国際ワークショップでは日本・ドイツ・スイスの研究者の研究発表に大変学問的に触発されて討論内容が深化したことと同時に、(2)加藤が作成した「コンセプト・ペーパー」に関してドイツ・スイスの研究者たちと協議して研究成果の公刊に関しても具体化が進んだこと、さらに(3)第三年度目に向けて哲学だけではなく(哲学に関しては「尊厳」概念に関わるより基礎的な研究発表の場も継続して設定する予定であり、この準備も進んでいる)、都市論・社会福祉論や高齢者介護、日本文学・日本哲学などの領域に関連した研究者と国際ワークショプ開催に向けて招聘の準備や国際ワークショップ参加の準備などが具体的に着実に進展しつつあることがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策に関しては、昨年度と同様に次の二方策を継続して行なう。一つは、ワークショップ・研究会などを定期的に開催して内外の研究者を招聘したり研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者らが研究発表を行なうことによってそれぞれの研究課題を具体的に進展させてゆくものであり、もう一つは、国際ワークショップを一橋大学で少なくとも一回、さらにドイツの大学で少なくとも一回、したがって少なくとも年に二回は開催してそのつどの研究成果を海外にも発信することで欧米の研究者からの反応を踏まえながら、海外の研究者との相互交流(海外研究者の招聘および海外研究者訪問など)を積極的に行なうことによって、特にドイツの研究者との共同研究を具体的にさらに進展させてゆくものである。 これら二方策にもとづく研究成果を『ドイツ応用倫理学研究』で取りまとめて公表するとともに、さらに単独の論文集の編集も視野に入れてゆく予定である。
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Research Products
(34 results)