2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本語会話能力テストの研究と開発:国内外の教育環境及び多文化地域社会を対象に
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25244023
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
鎌田 修 南山大学, 人文学部, 教授 (20257760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 正 南山大学, 人文学部, 教授 (60205771)
六川 雅彦 南山大学, 人文学部, 准教授 (40434609)
伊東 祐郎 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (50242227)
嶋田 和子 清泉女子大学, 文学部, その他 (90725318)
野口 裕之 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60114815)
由井 紀久子 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (20252554)
野山 広 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40392542)
李 在鎬 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (20450695)
西川 寛之 明海大学, 外国語学部, 講師 (30387302)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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Keywords | 日本語の会話能力テスト / 測定、評価基準 / テスター養成 / アカデミック日本語 / ビジネス日本語 / コミュニティー日本語 / 会話データバンクシステム / オーラルプロフィシェンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本語教育にとって喫緊の課題である会話能力テストの作成を目標に、次の4つの大きな課題を持つ。(1)国内外の教室環境や地域社会といった多様な学習背景をもつ日本語学習者の会話能力とは何かを原点から問い直し、世界の日本語教育において汎用的かつ実用的な会話能力測定・評価基準の作成を行う。(2) その基準に基づき、母語話者のみならず、非母語話者教師やボランティア教師も含めたより多くのテスターによって実施可能な会話能力テスト(JOPT)を作成し、国内外に試行する。(3) テスターマニュアルを作り、JOPTの普及とテスター養成の基盤を築く。(4) JOPTに関わる言語的、非言語的要素をデータ化し、そのデータバンクと会話コーパスを構築し、今後の会話能力テストの開発に理論的貢献を行う。 本科研3年目にあたる27年度においては、合計10回を超える科研会議を持ち、また、そのうち2回は夏合宿と春合宿とし、研究を深めることができた。これらの活動を通し、今年度達成できたことは、何よりもアカデミック領域、ビジネス領域、コミュニティー領域のそれぞれにSTEP 1, STEP 2, STEP 3のための問題作成のたたき台作りを済ませることができたことである。質問事項にはイラスト、グラフを付け、それらをコンピュータータブレットに搭載するところまで行き着けた。また、それらの問題をつかって留学生やビジネスマン、それから地域定住者にもパイロット的に受験してもらうこともできた。3月に開いた本科件シンポジウムでは、その中間発表を行い、100名近い参加者から非公式ながらもビデオ提示したインタビューテストについての評価を頂くことができ、今後の問題の精緻化、評価法の確率に役立てることができた。上記した来年度の目的達成のための基盤作りが可能になったと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研はその採択が年度途中の2013年10月末にあったため、初年度は急遽南山大学において科研用特別研究室を設置し、各共同研究者にも機材の調達、さらに筑波大学にサーバを設置するなど全体的なインフラ整備を行うとともに、本科研申請時に行った計画を再度見直し、より現実的なものとした。それに基づき、2年目の2014年度にはテスト作成班、測定・基準作成班、テスター養成・マニュアル作成班、データ分析班の活動を活発化させた。とりわけ、テスト作成を急ぎ、アカデミック領域、ビジネス領域、コミュニティー領域全体に及ぶレベル設定としたSTEP 1~STEP 3の構成概念を確立させた。STEP 1は各領域共通の問題を使い、STEP 2とSTEP 3にはそれぞれ独自の概念に基づいた問題作成をおこなうことにした。また、これらの作業と同時にタブレットシステムの改良も行った。3年目にあたる本年度は合宿2回に加え、個別の科研会議を8回行い、テスト問題の精緻化(数の統一:STEP 1、STEP2、Step3それぞれに10問ずつ)、使用するイラスト、グラフの改良、留学生等を使っての試用、評価基準の検討、統計処理のためのデータ整理などを徹底させた。さらに、8月にはボルドーにて開かれた国際大会、10月には日本言語テスト学会、3月にはメキシコでおける日本語教師会、京都で開いた本科研主催のシンポジウムにてサンプル問題とその試用場面を提示し、参加者からフィードバックを受け、本科研の目標達成に近づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実績をもとに、本科研が目標としたことを完成させる。具体的には、以下に述べる研究活動を徹底させ、最終的にJOPT全体を統一の取れたテストに仕上げ、次に続く、国内外の日本語学習者を対象とした大規模口頭能力測定実施のためのモデルとして提示する。 (1)アカデミック、ビジネス、コミュニティーといった多様な環境下での日本語使用者(学習者)の口頭能力に妥当で整合性のある会話能力測定尺度及び評価基準を完成させる。(2)その基準に基づく実用性、妥当性、そして、信頼性に富む口頭能力テスト(JOPT)のモデルを完成させる。 (3)テスト実施及びテスター養成を行うためのマニュアルを作る。(4)JOPTの試用を行い、その結果を収めたデータバンクの構築を目指し、今後の会話能力テストの開発に理論的貢献を行う。 (5)国内外での学会等でJOPTの成果に関わる発表を行う。 なお、これらの目的を達成するため、JF日本語スタンダード、日本語能力試験、CEFR(欧州言語共通参照枠組み)、ACTFL Proficiency Guidelines(米国運用能力測定基準)等の既存の言語能力基準との比較検討をおこない、JOPTの位置付けを明確にする。また、JOPTで扱う各問題の難易度水準、テスター間の評定差等に関し測定モデルに基づいた統計処理を行い、共通尺度上のパラメタ値を定め、信頼度の高い世界標準に近い仕様を備えたテスト開発を行う。そのため、パイロットスタディーとして、まず、30人の日本語学習者に厳密な実践計画に基づいたJOPTの試行を行う。その後、少し条件を緩め、受験者数を増やしたデータを加え各パラメタの推定精度をあげる。その結果から、特に評定者の厳しさの分散を小さくする研修方法を策定するなど、妥当性・信頼性・実用性の高いテストモデルの構築を試みる。
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Research Products
(37 results)