2013 Fiscal Year Annual Research Report
環境考古学を基軸とした人類学的「環太平洋文明学」の構築
Project/Area Number |
25244046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 公三 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (70159242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 健一 立命館大学, 文学部, 教授 (10351313)
高橋 学 立命館大学, 文学部, 教授 (80236322)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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Keywords | 年縞 / 環太平洋文明 / 災害 / 考古学 / 気候変動 / 環境 |
Research Abstract |
環境考古学、縄文考古学、災害地理学の方法と最新成果を摂取して、文化人類学分野においても有効性をもつ環太平洋文明学を構築することを目的とする。 初年度は、各分野でのこれまでの研究を継続しつつ、成果の共有化をはかり、次年度以降の環太平洋文明学の構築、完成につなげた。第1班(文化人類学:渡辺)は、2013年10月に採択された学内予算・R-GIRO拠点形成型研究プログラムと基盤研究(A)の計画の調整および、各自の予定する現地調査によるデータの収集を中心に進めた。第2班(環境考古学:安田)は、現状保有しているグアテマラとペルーの湖沼や、秋田県の一の目潟と小川原湖で採集された年縞の再分析を進めるとともに、次年度以降の研究拠点を整備した。第3班(縄文考古学:矢野)は、縄文早期前半の本州西部の遺跡数変化のグラフを地域別に作成、公表した。また、向日市寺戸川立坑で5万年以上におよぶ地層堆積各層のサンプルを入手し、年代測定、花粉分析、埋没木材の樹種同定を実施したほか、縄文時代前期末の大規模洪水層を確認した。第4班(災害地理学:高橋)は、チリ北部から南米大陸南端まで地形分析や植生調査などのフィールドワークにより、チリ・バルデビアで地形分析の調査が進行しつつある。また、次年度以降のチリ研究者との共同研究に向けた話し合いを行なった。 全体では、本研究の研究拠点となる「環太平洋文明研究センター」を、立命館大学に設置し(5月)、学内予算で、2度の公開シンポジウム(環太平洋文明研究センター創設記念シンポジウム(5月)、函館シンポジウム「環太平洋の文明拠点:津軽海峡圏の縄文文化」(3月))を開催した。さらに、特別講演会(7月、11月)や国際ワークショップ「環太平洋の環境文明史」(2月)を開催し、国内外の研究者と最新の学術成果を共有し、今後の展望や研究課題について意見交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画の達成状況は、以下の通りである。 環太平洋諸地域の文化人類学的研究を基軸とする第1班では、環太平洋地域の外縁のモンゴルの乾燥地域での生態環境と牧畜の現状について調査を実施したが他の地域については、主要な対象地域である南北アメリカ先住民社会についても準備段階にとどまっている。渡辺自身はブラジルでの調査および分担者の高橋学教授に合流してのチリ調査を計画したが校務の日程調整ができず見合わせた。 第2班は、立命館大学環太平洋文明研究センターの立ち上げと、静岡県地球環境史ミュージアムの設立によって、年縞堆積物の保管する大型冷蔵室の整備やドラフターなど年縞を研究分析する実験室の整備を行なった。平成25年度の予算によって実験室の整備はほぼできたので、本格的な年縞の分析を平成26年度より取り組む。 第3班は、縄文遺跡データベース作成に関して研究計画を設定した。関西縄文文化研究会の資料集成を活用することに関して、合意を得て、2015年度の工程を立てた。一部の資料については、遺跡数集計を実施し、分析結果を論文として公表した。滋賀県杉沢遺跡出土植物遺体について、高倍率の実体顕微鏡によって、堅果類の細胞壁と土器胎土の鉱物観察を試験的に実施した。 第4班は、チリ環境省、在チリ日本国大使館、在コロンビア日本国大使館、国際協力機構・JICA Chileなどの援助を受けて、当初の計画以上に調査を進展させることができた。特に、コロンビアでは、日本の国土地理院や産業技術総合研究所(産総研)にあたるIGAC(アグスティン・コダシ地理研究所)から、地図、空中写真、GIS(地理情報システム)データの提供を受けることができる可能性が高い。そのため、15世紀末のスペイン人の入植以降に行なわれた森林破壊による土壌侵食、そして火山の爆発による融雪洪水によって、河川下流域における土石流災害の様子を明らかにできる見通しがたった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、以下の通り研究を推進していく予定である。 第1班では、平成26年度は、アメリカ合衆国、カナダ、パナマ、チリ等、環太平洋南北アメリカ先住民社会における生態と社会変化について調査を実施する予定である。またモンゴルについての調査も継続する。 第2班は、実験室も整備できたので、平成26年度以降、秋田県一の目潟、中米グアテマラ、ペテシュバトウン湖などから採取した年縞堆積物の分析を実施し、気候変動や環境史の年単位の高精度の復元を行ない、それが文明史の興亡にいかなる影響を与えたかを考察する。 第3班は、縄文遺跡データベースに関して、関西縄文文化研究会の協力の下、住居や墓を出土した遺跡からデータベース化を進める。今年度中の成果については分析結果を公表する。ホームページでのデータベースの公開も行なう。琵琶湖底遺跡や杉沢遺跡の調査には、GeoExplolerを活用し、正確なGPS座標を取得しながら、調査を進め、成果を公表する。遺跡出土植物遺体の観察と土器胎土観察については、顕微鏡写真を撮影し、研究を進める。 第4班は、コロンビアのIGAC同様に、チリのIGM(軍事地理研究所)にも環境省を経由して働きかけ、地図データを入手する。これらの地図データに基づいて、積極的にフィールドワークを展開する。そのために、今年度ネットワークができかけているONEMI(災害対策庁)やセンデロ自然保護団体との協力関係を強めて、フィールドワークを展開していきたい。
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[Journal Article] 年縞編年学の進歩2014
Author(s)
山田和芳, 五反田克也, 篠塚良嗣, 斎藤めぐみ, 藤木利之, 瀬戸浩二, 原口強・奥野充, 米延仁志, 安田喜憲
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Journal Title
月刊地球. 号外
Volume: no.63
Pages: pp.25~30
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[Book] 「押型文土器遺跡数の変化」,『 東海地方における縄文時代早期前葉の諸問題』2014
Author(s)
山田猛, 桜井拓馬, 中村法道, 三好元樹, 村上昇, 熊谷博志, 遠部慎, 矢野健一, 松田真一, 及川穣, 岡田憲一, 守屋豊人, 松本安紀彦, 青山航, 小崎晋, 河本純一, 小栗康寛, 田部剛士, 中沢道彦
Total Pages
190p (pp.73~86)
Publisher
東海縄文文化研究会
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