2015 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害少年の非行対策における法律学と精神医学との連携:発見から処遇まで
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25245009
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
丸山 雅夫 南山大学, 法務研究科, 教授 (50140538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 精神障害少年 / 非行少年 / 少年法 / 精神医学 / 少年処遇 / 刑事政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年間の研究の3年目に当たる本年度は、最終年度における総括を視野に入れて活動を行った。具体的には、従来の研究を継続する形で、研究参加者(研究代表、連携研究者、研究協力者)が個人として行う文献研究と、それにもとづいて議論をするための研究会を開催するとともに、国内外での少年関連施設を参観し、そこでの知見を共有するための研究会を行った。 研究会は、延べ5回行った。第1回(2015年8月)および第2回(10月)は、少年法に特有の解釈問題と、少年鑑別所法と新少年院法を中心とした少年処遇の実際を対象とするとともに、地方更生保護委員会の機能について、それぞれゲスト・スピーカーの報告を前提として議論した。第3回(10月)は、児童虐待防止研究会との合同開催で、児童虐待防止対策における警察庁の対応について、ゲストの報告をもとに検討した。第4回(12月)は、精神科医および臨床心理士をゲストに招いて、精神的な負因を持つ児童・少年への対応方法について議論した。また、第5回(2016年3月)は、本年度に行った海外視察の報告を行ったほか、児童自立支援施設の現状についてゲストから報告していただいた。 海外の施設参観については、10月から11月にかけて、連合王国(ロンドンおよびケンブリッジ)の処遇施設を中心として4か所で実施するとともに、現地で処遇関係者および研究者と意見交換を行った。また、国内の施設については、8月に各1か所の児童自立支援施設、第1種少年院、少年刑務所を参観するとともに、2016年3月に、第1種少年院と更生保護施設を視察した。それぞれにおいて、少年処遇現場の実情を観察するとともに、関係者との意見交換を行い、これまでの施設参観での知見と合わせて、相当の知識を得ることができている。ただ、国内外のいずれの参観についても、報告書の形で公刊するまでには至っておらず、次年度の課題として残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年間のものとして計画され、本年度で3年目が終了する。研究全体の推進方法は、参加者各人が行う文献研究、国内外の少年(処遇)関連施設の参観、それらから得られた知見にもとづく研究会での報告と議論、の3本柱から構成されている。 文献研究については、研究会参加者の各人が個人の責任において遂行し、その成果を研究会等によって全員が共有する一方で、個人の業績として公刊することになっている。3年間を経過した現時点での状況については、研究会の開催回数も当初の予定通り(毎年5回程度)のものとなっており、個々の公刊業績も順調に積み上げられている。特に本年度は、2014年に制定され、2015年6月1日から施行されている少年鑑別所法および新少年院法を中心として、処遇現場における動向について、研究者による理論的側面に関する報告のほか、現場を担当している職員等をゲスト・スピーカーとして現状を報告してもらうことによって、詳細な知見を共有することができている。これによって、これまでに得られた知見を前提として、さらに1年間の研究活動とともに、少年法と少年処遇について一定の提言ができる段階に至りうると考えている。 海外の施設参観については、1年目のアメリカ、2年目のオランダ、そして本年度の連合王国における少年処遇施設を中心として、処遇現場の担当者から直接に「生の声」を聞くことで、多くの知見を得ている。また、本年度も、2か所の少年院、各1か所の児童自立支援施設、少年刑務所、更生保護施設を参観することで、処遇現場の現状を直接的に見聞することができた。それらの結果については、研究会での報告を通じて、参観に参加できなかった者とも情報を共有したうえで、議論を行っているところである。ただ、報告書の形式で参観結果・成果を公にするまでには至っておらず、今後の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、4年間にわたる本研究プロジェクトの最終年度となるため、従来と同様の研究活動を継続する一方で、研究全体を総括するための活動となる。また、平成28年度に採択された「挑戦的萌芽研究」助成の連携研究者と研究協力者が本研究参加者とほぼ共通しているところから、研究会および施設参観については、それぞれのプロジェクトとの共同のもとで行うことにする。 第1に、各研究者が各人の責任のもとで行っている文献研究については、研究者の情報交換をより密接に行うことにより、各人の研究の進捗状況を全員が的確に把握して、一層積極的な発信(研究会等での報告および学術業績としての公表)を継続していく。特に、本研究の目的である「法律学と精神医学との連携」を明確に意識したうえで、理論と実務との架橋を現実的なものとし、それぞれにおいて一定の提言を可能なものにしたい。また、昨年度の実績報告において「課題」として指摘した、研究会でのテーマの拡散という事態は一定程度改善されていることから、研究全体の総括を意識した系統的な研究会として運営していく。 第2に、施設参観については、先進的な海外施設の参観を継続するとともに、国内の施設についても、適切な施設を重点的に選定したうえで並行的に行っていく。海外施設としては、少年刑事裁判法を制定してクローズドした少年裁判手続を導入したカナダを対象とし、国内施設については、これまでと同様に、広義の少年処遇施設(児童自立支援施設、少年院、少年刑務所、更生保護施設)を対象に、これまでの知見を前提にして、現場でのより突っ込んだ議論を交わしたいと考えている。 最後に、研究を総括するという観点から、4年間の実績を総括する研究会を開催するとともに、本研究プロジェクトとしての報告書を作成・公刊する。また、それを前提として、近い将来に、体系的な研究書(共著)の公刊につなげていきたい。
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Research Products
(17 results)