2016 Fiscal Year Annual Research Report
リーダーの教育・選抜・ガバナンスの実態と日本経済に与えるその影響
Project/Area Number |
25245040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧井 克也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70346138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 隆一 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00397704)
小嶋 健太 関西学院大学, 商学部, 助教 (00634247)
森 知晴 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, ポスト・ドクトル・フェロー (00733057)
窪田 康平 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (20587844)
岡澤 亮介 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (30707998)
平田 憲司郎 神戸国際大学, 経済学部, 講師 (70423209)
中嶋 亮 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (70431658)
北野 泰樹 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 准教授 (70553444)
新居 理有 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 講師 (70590462)
佐野 晋平 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (80452481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本経済論 / リーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は下記のような研究成果を上げた。 1.企業が吸収合併された後に役員として残る人材のタイプを分析した論文を、ディスカッションペーパーとして完成させ、Journal of FinanceとInternational Economic Reviewに投稿した。結果は不採用であったが、新しく開発したサンプルセレクションをセレクトされたデータだけから推計する方法には好感するコメントを得ており、修正することで国際的に権威ある雑誌への出版が期待できると思われる。 2.昇進とローテーションの関係を分析した論文をより精緻にし、4月の「人材配置の経済学」研究会で報告を行なった。ローテーションのタイミングと昇進のタイミングが一致することを示した理論は他になく海外雑誌に出版可能であると考える。 3.Job Valueを計算する方法に基づき国交省の昇進実態をあぶりだした論文を6月の「人材配置の経済学」研究会等で報告し、Job Valueを計算する方法の新しさに高い評価を得た。今後に期待の持てる論文である。 4.高齢者や国内資産保有者のほうが消費増税を求めている事実を発見し、この事実を説明する政治経済マクロモデルを構築して背後のメカニズムを分析、1月の「人材配置の経済学」研究会等で報告を行った。高齢者が消費増税を望んでいるという事実に多くの人が驚いた。社会的インパクトのある論文となるのではないかと期待している。 5.偏差値決定の分析を行い、国公立と私立の間の恒常的偏差値格差が特徴的現象であること、共通一次導入が国公立と私立の格差を小さくしたことを確認し、11月の「人材配置の経済学」研究会で報告した。現在、因果効果解明のために必要な外生変数を探しており、それが見つかるならば、日本の大学間偏差値格差の実態を包括的に明らかにした、最初の論文になるのではないかと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクトは確実に前進している。以下は、その例である。 1.資源配分とマクロ効果:大学入試のモデルを使い、IT投資の増大が社会科学系に対する需要を増大させているという結果のロバストネスも確認した。 2.リーダーの市場とガバナンス: 選挙データの整備をさらに継続すると同時に、産業組織論で使われている需要推計モデルの選挙への応用について検討を行い、選挙の構造推計を行う準備を行っている。 3.リーダーの資質と大学教育: 役員への昇進に出身大学の属性が与える影響の分析を続け、大学・学部固定効果と入学年ダミーをコントロールすると偏差値の増加は最初昇進に正にきくが途中から負にきき始めることが確認された。また、共通一次導入の結果、私立からの役員が増えたことも確認された。 4.リーダー選抜システムとしての大学入試と就職: (1)大学入試の構造推計モデルのプログラム骨子ができ、推計方法の理論的証明も行われた。(2)応募する大学を増やすことがどの程度、合格できる大学の大学偏差値をあげるのかということについての分析も始めている。(3)模試の結果を通じて、どの程度自分の学問的能力の相対的位置を早く学び志望校選択に影響を与えるかということを継続して分析している。(4)実力のある人が偏差値の高い大学に応募するという均衡が実現する理論的条件を求めた。(5)学歴の高い人が公務員を選ぶ理由が、実際に学歴が仕事に役立っているからなのか学歴の高いほうが公務員になりやすいからなのかを識別するモデルを開発した。 5.データ整備: (1)選挙データのさらなる整備等を行った。(2)省庁のキャリアデータのアップデートを行った。(3)リクルートの就職情報誌のデータ整備をさらに進めた。(4)財務データとリクルートデータを統合するための準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
データの蓄積、分析のための知識の集積、そしてデータに適した分析手法の開発は確実に進んできている。また、それらに基づく様々な推計結果や理論的結果も得られてきている。今後の課題は、現在進行中のプロジェクトおよびデータ整備を着実に仕上げ、得られた結果を一つの論文としてまとめ上げていくことである。具体的には下記テーマについてできる限り論文を仕上げ、「人材配置の経済学」研究会等で発表を行っていく。 1.資源配分とマクロ効果:(1)市場の競争と企業特殊熟練への投資インセンティブとの関係が社会厚生に与える影響の理論分析を再投稿する。(2)偏差値決定に定員・授業料・入試科目数等や、共通一次がどのような影響を及ぼしたかを分析した論文を完成させる。(3)産業構造の変化や科学技術の変化が大学偏差値に影響を与えるかを分析した論文を完成させる。(4)企業間の人材割り当てが企業間格差に与える影響について、定量分析を行う方法を見直し再投稿する。 2.リーダーの市場とガバナンス:(1)企業内部の昇進にかかわる理論と実証、合併後の経営陣の移動に関する理論と実証を修正し再投稿する。(2)官僚データの同一ランク内部でジョブの多様性に光を当て、DemotionやFast Trackの有無を調べた論文を完成させる。(3)債務削減を求める有権者のタイプを実証し、リーダー選抜メカニズムである選挙にどう影響を与えるかを分析した論文を完成させる。 3.リーダーの資質と大学教育:役員(部長)への昇進確率に、偏差値や共通一次導入効果を分析した論文を完成させる。 4.リーダー選抜システムとしての大学入試:(1)大学入試の構造推計に関する論文を仕上げていく。(2)受験校数を増やすことが、合格大学の偏差値上昇にどのような影響を与えるかを実証した論文を仕上げていく。 5.データ整備:残っているデータ整備を完成させていく。
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Research Products
(23 results)