2014 Fiscal Year Annual Research Report
二〇世紀東アジアをめぐる人の移動と社会統合に関する総合的研究
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25245060
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
蘭 信三 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (30159503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 貴子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00411653)
松浦 雄介 熊本大学, 文学部, 教授 (10363516)
飯島 真里子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (10453614)
柏崎 千佳子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (30338222)
小川 玲子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (30432884)
外村 大 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40277801)
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50382007)
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (50413894)
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
田村 将人 札幌大学, 学術交流オフィス, その他 (60414140)
坂部 晶子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (60433372)
西澤 泰彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242915)
URANO Edson 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (80514512)
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
八尾 祥平 早稲田大学, アジア研究機構アジア研究所, 助手 (90630731)
松田 ヒロ子 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (90708489)
川喜田 敦子 中央大学, 文学部, 准教授 (80396837)
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 講師 (20733760)
田中 里奈 フェリス女学院大学, 文学部, 准教授 (40532031)
西脇 靖洋 上智大学, グローバル教育センター, 研究員 (40644977)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 人の移動 / 帝国と人の移動 / 帝国崩壊と人の移動 / グローバル化と人の移動 / 環太平洋をめぐる人の移動 / 歴史的グローカルシティ / ポストコロニアリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は二〇世紀東アジアにおける人の移動の総合的研究を目指し、多くのワークショップ・研究会等を開催した。加えて研究代表者の蘭はアメリカと中国に招待されて研究報告を行う等、非常に充実した年度となった。 (1)飯田調査は外国籍市民と日本人市民へのアンケート調査という二つを一本化したデータベースを構築した。研究班のワークショップ(2014年9月)を開催し、7本の研究報告を行った。飯田市でも2回の研究報告会を開催した。ポイントは、飯田市におけるグローバル性の長い歴史とそこには「グローカル人材」とも呼べる人材が活躍しており、伝統的地方都市における多文化共生の可能性について示唆を与えた。 (2)引揚げの国際比較班は定期的に研究会を開催した。その結果、国民国家の伝統が長いヨーロッパでは民族的マイノリティ問題の歴史が長く、19世紀から民族的マイノリティの自主的強制的移動がつきものであり、第二次世界大戦後もかなり多数の人びと(民族的マイノリティ)の移動(追放・引揚げ)が生じたことはよく知られている。他方で、国民国家の歴史が浅い東アジアでは、第二次世界大戦後の新秩序の構築に伴って大量の引揚げ・送還が生じたことが明らかになった。また、その両方の間に旧ソ連邦が介在しており、ヨーロッパにおけるソ連の積極性と東アジア(満洲・朝鮮北部・樺太)におけるその消極性が対照的であった。 (3)環太平洋満洲班は、二日間にわたるワークショップ(2014年12月)を開催した。これは太平洋を挟んだ人、物、知の移動についての研究をはっきりと意識した試みのワークショップであったが、このフレームの可能性を確信させるものとなった。続いて(4)満洲班のワークショップを2015年2月に開催したが、「満洲」というフレームの意味の重要性と、ヨーロッパからの視点のもつ重要性、人とともに建築等を通しての知の移動の重要性が再確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年は科研二年目として、6つの研究グループによる研究活動を目指した。上記研究実績に記したように、4つの研究グループによる研究活動は順調に推進された。だが、残り二つの研究グループの活動は順調とは言えなかった。 (1)飯田調査班は、アンケート調査とインタビュー調査からデータベースを構築し、本科研主催のワークショップや飯田市での研究報告会など順調に進行している。2015年度には調査報告書刊行が予定されており、その構成や執筆担当などもほぼ決まっており、もっとも早く研究成果が刊行される予定である。(2)引揚げの国際比較班はもっともコンスタントに研究会を開催しており、その研究蓄積はかなりのものとなり、研究は予定通り順調に展開されている。(3)環太平洋満洲班はキックオフのワークショップを開催したが、英国、スイス、米国、中国、韓国そして日本と広範囲からの参加があり、かなりいい反響を得た。二日間のワークショップで論じられた諸点は刺激的なもので、そこから本年度のチューリッヒ大学でのワークショップが開催されることにになったし、2016年度の北京でのワークショップが検討されている。そして、(4)満洲班のワークショップには韓国満洲学会からの参加があり、本ワークショップの新視点に強い反響があり、韓国満洲学会への招待が決定した。このように、4つの研究班の活動は順調であり、海外でも反響が得られ、研究代表者の蘭の米国でのワークショップ(2014年4月)への招待と、中国人民大学での講演会(同年11月)につながっている。 このように4つの研究班の活動は予想以上の展開と反響を得ている。残り二つの研究グループについても研究対象と分析枠組みについての検討が行われており、予備的な研究会も数回開催されており、次年度の活動は確実に展開できるめどがついている。 以上からおおむね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
飯田調査班、引揚げの国際比較班、環太平洋班、満洲班の研究活動は非常に順調に進展しているので、今の予定通りに研究を進めていきたい。 残り二つの研究班(近現代沖縄をめぐる人の移動研究班と朝鮮をめぐる人の移動研究班)については、その対象と枠組みを練り直して、以下のような二つの研究班へと改編した。 近現代沖縄をめぐる人の移動研究は、対象の時代をグローバル化以降を中心に戦後米国施政下、本土復帰後といった歴史性を踏まえながら、グローバル化以後の沖縄に特有なアメラジアン研究を柱とする研究へとシフトしていく。 また、朝鮮をめぐる人の移動研究は、帝国崩壊後の在日朝鮮人の定着の経緯を踏まえながらも、その定住化が本格化する七〇年代を中心とする研究へとシフトしていく。そもそも、七〇年代は冷戦下でありながらも、欧米でも東アジアでも大きく社会が変革されていく時代である。その時代・社会の大きなうねりのなかで、人びとの移動が再開され、定住化が進展していく。日本、東アジアでは1990年代以降のグローバル化の大きなうねりの中で人のトランスナショナルな移動が展開されていくが、その前の段階である七〇年代の日本社会、東アジア社会の変化に着目することは、強い問題関心を惹起する。 以上のような問題関心から研究組織を再編し、すでに進展している4つの研究班とともに6つの研究班の活動を推進することで、当初の本研究課題にせまっていく予定である。
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