2016 Fiscal Year Annual Research Report
二〇世紀東アジアをめぐる人の移動と社会統合に関する総合的研究
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25245060
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
蘭 信三 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (30159503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 貴子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00411653)
中山 大将 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (00582834)
松浦 雄介 熊本大学, 文学部, 教授 (10363516)
飯島 真里子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (10453614)
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 講師 (20733760)
柏崎 千佳子 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (30338222)
小川 玲子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (30432884)
外村 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40277801)
田中 里奈 フェリス女学院大学, 文学部, 准教授 (40532031)
西脇 靖洋 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (40644977)
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50382007)
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50413894)
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
田村 将人 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 主任研究員 (60414140)
坂部 晶子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (60433372)
西澤 泰彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242915)
川喜田 敦子 中央大学, 文学部, 教授 (80396837)
Urano Edson 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80514512)
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
水谷 智 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (90411074)
八尾 祥平 神奈川大学, 経営学部, 講師 (90630731)
松田 ヒロ子 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (90708489)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 人の国際移動 / 帝国化と人の移動 / 引揚げ・追放 / 近代満洲の成立 / ポストコロニアリズム / グローバリズム / 済州島 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は課題を遂行するために5つの課題に細分化して研究をすすめているが、今年度は以下のような進展が見られた。(a)飯田調査班は長野県飯田市におけるアンケート調査報告の中間報告書を『グローカルシティ飯田における多文化共生に関する現状と意識』を2016年12月に刊行したことが大きな成果である。これは外国人アンケートと日本人アンケートの双方を分析した100頁の報告書で、リーマンショック後の地方都市における外国人および日本人の生活実態と意識を明らかとした貴重な成果となっている。2017年秋にはこの報告書に基づいた分析編を刊行予定であり、17年度中に一般図書刊行を目指していきたい。 (b)引揚げの国際比較班は、ワークショップを重ねていよいよ研究の最終段階となっている。そこで、本班は研究成果報告書の要旨を集め、その刊行を目前とするところまで来ている。そこで、目次・執筆要綱を作成し、この夏に要旨集を準備し検討会を予定している。その成果を2017年度中に一般図書として刊行を目指している。 (c)満洲班は数度の研究会と、近現代東北アジア研究会でのシンポジウムを主に担ったことで、大きなステップを踏み出した。すなわち、満洲における在地社会のテクノロジーと植民地によるテクノロジーとがどのような関係性にあったかを研究の主眼目にすることで従来の満洲研究に大きな展開をもたらす可能性を見出したことである。 (d)環太平洋班は大きな視点が定まり研究は確実に進んできており、ワークショップを開催し、台湾や南洋における砂糖栽培に関する資本と、技術と、労働者の環太平洋関連をめぐる研究枠組みの検討を行った。 (e)七〇年代班は9月初めに済州島調査を行ったが、済州島が帝国崩壊、冷戦そして脱冷戦、グローバル化という時代変化において非常に重要な位置づけにあることを認識し、つぎの展開の鍵となることを認識できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは、総体としては順調に進んでいるが、着実に新着している部分と、予定よりも作業が遅れがちになっている部分がある。たとえば、(a)飯田調査班は遅れていた中間報告書を2016年12月に刊行したことで、大きく予定が進み、最終年度の今年に分析編の報告書を刊行することで研究計画は完了し、それを一般図書として刊行予定である。 (b)引揚げの国際比較班もこれまでの研究成果の報告集をこの秋にまとめ、報告集と一般図書を刊行予定で、それをさらに英語版を予定している。 (c)満洲班は、これまでのワークショップとシンポジウムの要点のとりまとめを行い、次のステップを計画中であるが、予定通りの進行からは遅れている。また、(d)環太平洋班もは大きな視点が定まり研究は確実に進んできているが、最終年度として研究成果の報告までには至っていない。 (e)七〇年代班は七〇年代の市民運動を中心に研究を行う予定であったが、活動が多様でなこの時期の研究への取り組みが遅れたために、今後の展開は十二分期待されるが、最終年度までに研究成果を出すのはやや難しい。しかも、昨年済州島への訪問をきっかけに、済州島研究が非常に重要であることに気づき、この研究へと展開する必要を痛感している。 このように、確実に研究成果を出している班と、まだ展開途上の班とに別れているが、現在時点で二冊の研究書の刊行の目途がつくところまで来ており、遅れた部分もありながらも、総体としては順調と言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は本研究課題の最終年度を迎え、研究の完了するテーマと次に展開していくテーマとに分けて対応していきたい。 (a)飯田調査班は、最終年度の今年に分析編の報告書を刊行し、ついで一般図書として刊行予定である。そのことで、20世紀に満洲移民を促進し、帝国崩壊期に引揚者を多数引き受け、72年の日中国交正常化後に中国帰国者を迎え、90年代のグローバル化期に日系ブラジル人を受け入れた地方都市の歴史性と現在の状況からその人の移動の歴史性と現在性を突き詰めるような研究図書を予定したい。また、(b)引揚げの国際比較班は、東アジアをめぐる引揚げと残留、定住化とヨーロッパや東南アジアにおける引揚げ・追放を比較研究する研究成果をこの秋にとりまとめ、年度内に一般図書を刊行し、2018年度にそれを英語出版することで、本研究を世界水準にまで押し上げ、世界的な貢献を目指していきたい。 (c)満洲班は、帝国化という重要なフレームのみでなく、生態学的変化、テクノロジーの革新、人の移動という視点からの満洲研究を各メンバーの担当する事例から研究を継続していきたい。そのことをつぎの展開へと結び付けてきたい。(d)環太平洋班、19世紀末から20世紀前半における砂糖や珈琲や大豆といった世界商品栽培をめぐる、資本と、技術と、人の移動の連関という視点の精緻化と各メンバーによる事例の検討を進めていきたい。そしてそのことをつぎの展開へと結び付けてきたい。そして(e)七〇年代班は、その時期の東アジアにおける市民運動の展開というフレームを精緻化し、同時に済州島研究を刷新していきた。そしてそのことをつぎの展開へと結び付けてきたい。 このようにして、本研究課題による研究は完了する部分と継続される部分に分かれつつも、最終年度として課題に関する十分な研究成果を提出できるように努めたい。
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