2013 Fiscal Year Annual Research Report
多重散乱ライダ・雲レーダの複合観測システムの構築と全球雲微物理特性解析
Project/Area Number |
25247078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡本 創 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (10333783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 可織 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00584236)
西澤 智明 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (10462491)
鷹野 敏明 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40183058)
江口 菜穂 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (50378907)
石元 裕史 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 主任研究官 (70281136)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ライダ / レーダ / 雲物理 / 衛星観測 / 水雲 / 氷雲 / 微物理特性 |
Research Abstract |
多視野角・多重散乱ライダの開発を実施した。このライダでは、H25年度は1つの受信用望遠鏡の視野角が10mradのものを、天頂方向から視野が重ならないように5つ使用し全体で45mradになるようにした。 このライダを用いて、つくば国立環境研において雲観測を実施し実際に下層雲及び上層雲からの信号を取得することに成功した。 下層雲の多重散乱光に関する数値実験を実施し、ライダによって取得される、「みかけの減衰された後方散乱係数」における複数回の散乱光の影響評価を、時間と雲高度に関する解析を行っている。これにはライダにおける放射伝達方程式を、後方モンテカルロ法によって数値的に解析している。 衛星解析において、赤外サウンダーAIRSセンサを用いて水蒸気量を導出し、雲レーダを搭載するCloudSat衛星と、ライダを搭載するCALIPSO衛星との同時観測解析を実施した。CloudSatとCALIPSOによって検出された雲の出現領域と、AIRSによって求められた過飽和の領域の対応関係を解析し、良い一致を示すことがわかった。また、従来ライダの方が雲レーダよりも雲粒子に対して感度があるとされていたのだが、CloudSatとCALIPSOライダによる雲頂高度を調査した結果、CloudSatの方が雲頂高度が高くなっている場合のあることが判明した。このような雲は下層雲、中層雲。上層雲いずれでも存在したが、特に中層の雲において顕著であった。 CALIPSO衛星搭載ライダによって取得されたライダ後方散乱光における多重散乱光の効果の見積りを実施した。 CloudSatとCALIPSOの同時解析で、地上設置型のドップラー速度とレーダ反射因子の関係の解析、雲レーダとライダを用いた雲微物理特性の解析を用いた上層雲、下層雲、霧雨や降水領域の微物理特性の推定アルゴリズムの開発に着手した。その結果を衛星解析に適用して雲と降水全域の雲・降水粒子の微物理特性解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、多重散乱ライダの開発に着手し、初期観測を実施することを目標にかかげたが、実際の下層雲と上層雲のこのライダによる後方散乱光の5つの異なる天頂角での観測データを取得することができた。 この結果は、この新たに開発したライダシステムによって信号が検出可能であることを示しており、今後の拡張性に関しても示唆的な結果を得ることに成功した。 このような従来よりも全体の視野角が大きな場合のライダ後方散乱光の信号強度についての数値的解析も実施したが、これによって観測量から雲微物理特性を推定するアルゴリズムにおいて最も中核となるライダ光における、多重散乱光の時間方向と距離方向依存性の詳細に関して解析することができた。これは雲微物理特性を推定するアルゴリズム開発に大きく前進することを意味している。 水蒸気量と雲特性の解析も、実際に過飽和領域とレーダとライダによって検出された雲域の良い一致を衛星観測から示すことができた。 CloudSatとCALIPSOを用いた雲の雲頂高度解析から、これまで知られていなかったライダでは検出できないが雲レーダでのみ検出可能な氷粒子が雲頂付近に存在することを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
多視野角・多重散乱ライダの基本的な設計は順調であり、来年度は新たに偏光機能を付加し、みかけの減衰されたライダ後方散乱係数と、偏光解消度を5つの異なる天頂角で観測可能にする。これらの多数の同時観測データを用いることで、従来のライダの観測限界を大きく超えた光学的に15以上の厚い雲の観測を可能なものとする。また、偏光の情報も合わせて解析することで、雲微物理特性についての推定アルゴリズムを開発する。 この多視野角・多重散乱ライダと雲レーダとの同時観測も計画しており、1週間以上の雲観測を実施する。この同時観測データから高精度の雲微物理特性を抽出するアルゴリズムを完成される。このアルゴリズムをもとに、衛星搭載のライダの観測データに適用可能な雲微物理特性抽出アルゴリズムの開発につなげる。衛星からの下層雲も含めた雲全域の微物理特性解析を実施する。衛星搭載赤外サウンダと雲レーダ・ライダの同時解析から雲の微物理特性と水蒸気量の同時解析を実施する。
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Research Products
(24 results)