2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25248014
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60176865)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピン平衡 / 電子移動共役スピン転移 / 双安定性 / シアン化物イオン架橋 / 混合原子価錯体 / 磁性 / 誘電性 / 電気伝導性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スピン・電荷・構造の大きな自由度をもつ金属錯体分子システムを設計し、これをボトムアップ手法により高度に組織化したサブナノ・ナノスケール構造体を構築することを目的として研究を行った。金属錯体分子システムを集積・階層化することにより、それぞれの金属イオン・分子コンポーネントがもつ電子的特性を協奏的に増幅し、光・電場でその光物性・磁性・誘電性を自在変換できる多機能分子システムの構築を目指して研究を進めた。 当該年度の研究では、以下の2点について研究を進めた。 (1)スピンクロスオーバー錯体や電子移動共役スピン転移をしめす双安定性分子を配位結合・分子間電荷移動相互作用・水素結合で集積・階層化し、光・電場で光物性・磁性・誘電性を操作することができる多重物性操作分子集積システムを構築する。(2)分子中に複数以上の双安定性部位をもつ光により選択的物性変換が可能な多重双安定性分子システムを構築する。 (1)に関しては、様々な補助配位子をもちいて電子移動共役スピン転移現象を示すシアン化物イオン架橋鉄-コバルト錯体を合成し、構造・磁気的性質について調べた。いくつかの化合物では、分子間水素結合相互作用によって高次ネットワークを形成していることが分かった。これらの系では電場などによる外部刺激を応用したプロトン駆動物性変換が期待される。 (2)に関しては、これまでにスピンクロスオーバー現象を示すグリッド型鉄4核錯体の構築に成功している。分子素子としての可能性を探るため、配位子の拡張を行い、類似構造を持つグリッド型鉄4核錯体の構築に成功した。これらの化合物の熱誘起・光誘起多段階スピン転移挙動の詳細を調べ、双安定性に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた電子移動に伴うスピン転移を示す化合物について、プロトンドナー分子をもちいることで、様々なネットワーク構造を持つ化合物を得ることに成功している。さらに、プロトンが直接ユニット間を連結したネットワーク化合物も得られている。いくつかの化合物は磁気測定から、双安定性を示すことを確認しており、電場・光に対する応答性なども期待できるため、目的達成に向けておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
水素結合部位を複数もつ化合物や、キラルな構造を持つ構築素子をもちいた集積型錯体の開発を行い、多重双安定システムの開発を行う。特に電場誘起物性変換を目指し、分子設計を行う上でpKaの最適化を行い、適切なプロトンドナー/アクセプターの組み合わせを探索する。得られた化合物に関しては、構造・磁性・誘電特性などの基礎物性の評価と、光照射下および電場印加状態での物性測定を行い、電子状態変化について詳細に調べる。
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