2014 Fiscal Year Annual Research Report
ペーパーマイクロ検査チップ及びシステム化技術に関する研究
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25249027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 亮 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50417052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟橋 久景 広島大学, 学内共同利用施設等, その他 (60552429)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 紙 / 医用検査装置 / 情報機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は計測系技術の高度化と実装に向けた設計検討、③試薬・駆動液の安定滴下機構、④検査装置の構成に関する研究を行った。具体的には①紙チップ上極微量液(~1uL)の吸光度測定のため熱レンズ型吸光度測定法を推進、レーザにより紙基材に穿孔形成する光透過部とインプリントで形成するフローセル部との位置決め精度向上のために、穿孔形状を微小孔(Φ1mm)から微小スリット(流路直交方向長さ3mm、幅200μm)とした。これにより再現性の良いフローセル製作が可能となった。このセルで試料(最大吸収波長644nm、中性脂肪項目等対応)の検量線を求めたところ、微量(測定体積~1uL)、広濃度レンジ(3桁)で安定計測が可能であることを確認。次に②電気化学計測について、平成25年度試作の電極セルを改良、凝固過程(エンドトキシン0.25 ~1EU)と交流インピーダンス(1 k~50MHz)の関係から検出メカニズムを推定、電極設計依存性を求めた。更にこれらの知見を基に紙チップ上流路(深さ40um、幅5mm)に形成した金電極(膜厚100~150nm、1.5Ω/cm2)を用いて、交流インピーダンス(10 kHz)により電解質濃度(Naイオン;0.1~1wt%、血中濃度想定)計測可能であることを確認。以上、電気化学計測のチップ実装に向けた設計指針(最適周波数、電極形状・サイズ、信号取得条件)を得た。また③試薬・駆動液安定滴下機構に関して、試薬物性の実測等の結果、粘性(約1~5cP)濡れ性(接触角)など物性範囲が広範、多量の吐出(~10uL/shot)には、Ink-Jet機構では容積、圧電駆動電圧の過大化(>100V)を伴い簡素化が困難、代わる機構として小型蠕動型ポンプを選定、機構の原理確認を実施した。④に関しては、①、②検出機構、③吐出機構を備えた全体装置の基本設計を実施。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、具体的な分析項目を前提に計測系技術(吸光度、電気化学)の高度化と実装に向けた設計検討を進めるとともに、試薬・駆動液の安定滴下技術・機構、Ink-Jetプリンタ型検査装置の構成に関する研究を進めることを目標とした。これに対して微量液の吸光度計測対応として微小フローセルをマイクロ流路上への配置において、当初位置・形状精度が得られず、インプリント時に穿孔部を埋め戻すするなど様々な加工法を検討したが、最終的には微小スリット穿孔という極めて簡素なアイデアによりこれを克服することが出来た。また電気化学計測においては、凝固反応過程において交流インピーダンスが変化するメカニズムの把握に苦労したが、誘電分極や電極面での電離層等の影響度合いを明確化し、電極設計の方向性が得られたともに、更にこの考えを発展させることで電解質濃度の計測にも適用可能であることを確認した。また実際の検査試薬を模擬した試料(粘性、濡れ性を再現)を用いてInk-jet吐出を試みたが高粘度やノズルでの濡れ広がりにより吐出が阻害されるなどの課題が発生、最終的には蠕動型ポンプによる連続吐出により対応可能である見通しが得られた。また、以上の知見を基に全体装置の基本設計を実施した。以上から当初の目標に沿って、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、検査装置に実装するための検出機構(熱レンズ効果を検出するための簡易光学系、紙面上に形成した電極からの高効率信号取得系)、試薬・駆動系の滴下技術に関する研究を継続して行う。また検出機構及び試薬・駆動液滴下機構を備えたプリンタ型検出装置のプロトタイプを用いて実用化に対してボトルネックとなる課題の摘出と改良策の提案を行う。想定される隘路としては、複数のペーパー検査チップをマトリックス状に設けたシートを搬送するための紙送り機構の信頼性や、検出技術、試薬・駆動液滴下機構との相対位置ズレ、また動作中の紙面変形による定量性阻害などが挙げられる。そのため、ファイバ等を用いた簡易光学系や低ノイズでの高効率信号取得系、ペーパーハンドリング技術・装置等について、それらの技術を有する専門企業・機関と積極的に連携し、既存の技術や市販の装置を一部を活用することで、研究の加速を図る。
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