2013 Fiscal Year Annual Research Report
被災・破損を起因とする建設の技術革新と建築様式に関する歴史的研究
Project/Area Number |
25249083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 恵介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50156816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 重雄 京都女子大学, 家政学部, 学長 (40175295)
平山 育男 長岡造形大学, 造形学部, 教授 (50208857)
溝口 正人 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20262876)
後藤 治 工学院大学, 建築学部, 教授 (50317343)
上野 勝久 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (20176613)
大野 敏 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (20311665)
藤川 昌樹 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 教授 (90228974)
光井 渉 東京藝術大学, 美術学部, 准教授 (40291819)
大橋 竜太 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (40272364)
清水 重敦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40321624)
藤原 重雄 東京大学, 史料編纂所, 助教 (40313192)
加藤 耕一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30349831)
角田 真弓 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (20396758)
野村 俊一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40360193)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 災害 / 技術革新 / 地震 / 修理 / 改造 / 移築 / 再建 |
Research Abstract |
本研究は、建築と都市に関わる、<天災・人災→被害→修理・再建・再生>のプロセスについて、日本の7世紀から20 世紀まで、実例を調査、収集し、集積して広く公表しようとする。そして、特にその際の技術革新を明らかにすることが目的である。 本年は初年度であり、災害I(地震)の事例を調査、収集を試みた。現存する遺構が中心であるから、寺院、神社、住宅を中心に事例を収集した。 情報の収集元は、今まで刊行されてきた文化財建造物の修理工事報告書が中心であり、それらの過去の被害・破損と修理の履歴を調査することから作業を開始した。また、同時に、 過去の歴史史料から、災害、建築・都市の被害、その修理・再建・再生の事例を収集した。 修理工事報告書を丁寧に解読することが主たる作業となった。古建築は、数回の修理を経て現在に至っているのが普通であるから、その修理に関して、ハードと同時にソフトの両面から、技術革新を明らかにすることを主たる目標とした。全体では、150棟ほどの文化財建造物を対象とすることになった。多様な技術革新を探すという点については、かなりの情報を集積することが出来た。従来、建築史学的、文化財学的な観点では、十分ではなかった、建築計画学的な改善、構造学的な進歩などについて、より総合的な観点からの分析が必要であることも、判明しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
修理工事報告書を丁寧に解読することが主たる作業となった。古建築は、数回の修理を経て現在に至っているのが普通であるから、その修理に関して、ハードと同時にソフトの両面から、技術革新を明らかにすることを主たる目標とした。全体では、150棟ほどの文化財建造物を対象とすることになった。多様な技術革新を探すという点については、かなりの情報を集積することが出来た。総数は、300件を超える。 修理工事報告書は、修理工事を実施した時、過去の修理について淡々と記録するのが常であり、その理由について必ずしも深い考察を加えているわけではない。その時の修理について、高く評価するものもあるが、多くは姑息な種類として、必ずしも十分な評価を与えているわけではない。それらの多くの修理について、修理工事報告書の判断にとらわれず、現在のわれわれの立場から検討を加えれば、相当に多くの理由を推定することが可能であることが判明した。 しかし、従来の日本建築史では、それらを災害(特に地震)と関連付けたテーマとして捉えられてこなかったので、報告書からの情報収集では、技術革新と災害の関係を関連付けた成果は、十分に上がったとは言えない。また、建築計画学的、構造学的な観点からの分析も必要となることが、判明しつつある。 以上の点は、来年度以降の大きな課題として、積極的に考察すべき、と判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の方法を継続し、災害を地震からさらに台風、大風、火災、内乱へと広げ、今後も技術革新と蔡敦達書きの関係を分析することになる。なるべく多くの事例を収集すると同時に、個別の事例を注意深く分析することも、必要となる。 今までに刊行されてきた文化財建造物の修理工事報告書を丁寧に読み解くことが重要である。さらに、歴史史料から、過去の建築、都市の災害の被害、その後の修理、再建、再生の事例を収集して、さらに広く検討することにしたい。 すでに指摘したように、従来の修理工事報告書は、過去の修理について、文化財学的な分析だけにとどまっている傾向が強いので、それに対して、現在の立場から積極的に評価を与えていく必要がある。また、さらに計画学的な進歩、あるいは構造学的な進歩という点から、広く総合的にとらえてゆく必要もある。 災害と技術革新を有機的に関連づけるには、一つの建造物だけを取り上げて、時系列にのせて技術革新を捉えるのではなく、多くの建造物を同時に並べて、大災害において被害の程度を比較検討する、などの新しい方法を開発する必要もあると、考えられる。 さらに、このような災害と技術革新の相互関係が、木造建築を主とする日本だけに固有の問題なのかどうか、石造、煉瓦造建築を多く持つ、アジア、西欧との比較を通じて、検討を加えることにしたい。
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Research Products
(24 results)