2013 Fiscal Year Annual Research Report
発達過程で聴覚を獲得するメカニズムに関する生理学的・分子生物学的研究
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25250002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 洋一 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00144444)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 内耳 / 耳石 / 第8神経 / マウスナー細胞 / 発火特性 / 低閾値型カリウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
モデル脊椎動物であるゼブラフィッシュを研究対象にして、聴覚獲得に関わる末梢から中枢にいたる経路の機能的な発達に関して、以下のような知見を得た。 1.胚および仔魚の内耳には、形態の良く似た2つの耳石器官が存在するが、球形嚢(S)は聴覚、卵形嚢(U)は平衡感覚を受容する。両者の違いの一つは耳石の大きさで、Sの耳石がUより数倍大きい。U耳石を顕微操作により大きくすると、Uの有毛細胞も音を受容することが可能となり、わずかな物理量の差が音受容の獲得に重要であることを明らかにした。 2.内耳から中枢に信号を伝える第VIII神経にも、Sに接続するVIIIp神経とUに接続するVIIIa神経がある。それぞれの音刺激に対する応答を比較すると、VIIIp神経は音の位相に一致して発火するが、U耳石を大きくして音応答を示すVIIIa神経は音の位相にロックせずに発火することを見出した。さらにVIIIp神経は脱分極の開始時のみに発火するのに対して、VIIIa神経は脱分極の大きさに応じて発火頻度で連続発火することを明らかにし、両者の膜特性に差があることを示唆した。 3.聴覚入力を受ける後脳の網様体脊髄路(RS)ニューロンの中でマウスナー(M)細胞は発生初期には他のRSニューロン群と同じように連続発火を示すが、ゼブラフィッシュが聴覚に応答し始める受精後3日以降発火特性を大きく変えることを見出した。その分子基盤には2つの低閾値型カリウムチャネル(Kv1.1とKv1.7)の発現が重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発達期のゼブラフィッシュ内耳に存在する2つの耳石器官が、形態的には良く似ていながら、聴覚と平衡感覚という全く異なるモダリティの刺激を受容するメカニズムや、中枢に信号を送る過程でも伝達特性の違いを示すことを明らかにした。聴覚入力の際立った特徴抽出ニューロンであるマウスナー細胞の興奮性を左右する2つの低閾値型カリウムチャネルを同定し、それでほぼ完全にマウスナー細胞の特異的な単発発火特性が説明できることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.VIIIp神経とVIIIa神経の異なる発火特性の分子基盤をカリウムチャネルを中心に調べる 2.発達過程における低閾値型Kv7.4チャネルの発現とM細胞の発火特性に果たす役割を解析し、論文にまとめる。
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Research Products
(14 results)