2014 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科およびナス科植物の自家不和合性の分子機構解明
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25252021
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高山 誠司 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70273836)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植物 / シグナル伝達 / 細胞間認識 / 生殖 / 自家不和合性 / アブラナ科 / ナス科 |
Outline of Annual Research Achievements |
アブラナ科およびナス科植物の自家不和合性における自己花粉排除の仕組みについて解析を進め以下の研究成果を得た。 1.アブラナ科植物の自家不和合性 受粉時の乳頭細胞内・外のCa2+濃度をモニターする系を確立し、他家受粉時には乳頭細胞内から花粉に向かって自己阻害型Ca2+ポンプACA13が関与するCa2+(小胞)輸送が行われる一方で、自家受粉時にはその輸送が行われず、乳頭細胞内のCa2+濃度が上昇することを明らかにした。Ca2+を乳頭細胞内に注入すると不和合性反応が誘起され他家の花粉でも吸水が阻害されることを見出した。また、自家受粉時の乳頭細胞内Ca2+濃度上昇の分子機構を薬理学的および分子生物学的に解析していくための基盤技術として、自家不和合性反応を保持した乳頭細胞プロトプラストを調製する系を確立した。自家不和合性シロイヌナズナに変異原処理し、自家和合性復帰突然変異株を複数取得したが、自家不和合性を付与するために導入したSRK受容体遺伝子自体の発現低下を示す株が多いことが判明した。高濃度CO2ガス処理による自家不和合性打破機構の解明を目指し、自家不和合性シロイヌナズナを他のシロイヌナズナ系統と交配し、得られた後代についてCO2感受性を解析したところ、遺伝的背景の違いによりCO2感受性が変化することを見出した。 2.ナス科植物の自家不和合性 花粉因子SLFが構成するSCFユビキチンリガーゼ複合体の構成因子として新たに見出されたCullin-1の一分子種CUL1-Pが、花粉で特に強い発現を示し、自家不和合性反応に深く関わっている可能性を見出した。また、花粉因子SLFによる雌ずい因子S-RNaseの無毒化機構を解析するために、免疫組織化学的に花粉管内のS-RNase分布を解析したところ、観察する花粉管の位置によりS-RNase濃度が大きく変化することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.アブラナ科植物の自家不和合性 他家および自家受粉時の乳頭細胞内のCa2+挙動が明確に異なることを見出すと共に、この違いが花粉の吸水・発芽における和合および不和合反応の違いの直接的要因となっていることを明らかにすることができた。また、不和合受粉時の乳頭細胞内Ca2+上昇に至る情報伝達系を明らかにする上で重要な乳頭細胞プロトプラスト系を確立することができた。シロイヌナズナもCO2処理による自家不和合性打破に関して感受性の異なる系統が存在する可能性を見出した。 2.ナス科植物の自家不和合性 花粉因子SLFが構成するSCF複合体の構成因子として示唆されてきたCUL1-Gとは異なるCUL1-Pという因子が自家不和合性反応において機能している可能性を明らかにした。雌ずい因子S-RNaseの無毒化機構を明らかにするために、免疫組織化学的にS-RNaseの局在を定量する系を確立し、花柱を伸長中の花粉管内においては花粉管の位置によってその濃度が大きく異なるという重要な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
1.アブラナ科植物の自家不和合性 自家受粉時の乳頭細胞内のCa2+濃度上昇に関わるCa2+輸送体の実体を、薬理学的および分子生物学的解析により明らかにする。他家および自家受粉時のCa2+挙動の違いを基軸とする和合および不和合情報伝達系に関する最新の分子モデルを提唱する。自家不和合性シロイヌナズナの系を用いた遺伝学的解析により、自家不和合性情報伝達系に関与する新たな因子の同定を目指す。 2.ナス科植物の自家不和合性 花粉因子SLFが構成するSCF複合体の構成因子を、発現抑制実験などを介した機能証明と共に明らかにする。花柱を伸長中の自家あるいは他家花粉管内における雌ずい因子S-RNaseの分布を定量的に解析し、和合および不和合反応に関する最新の分子モデルを提唱する。
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[Journal Article] Transcriptional characteristics and differences in Arabidopsis stigmatic papilla cells pre- and post-pollination2015
Author(s)
Matsuda T, Matsushima M, Nabemoto M, Osaka M, Sakazono S, Masuko-Suzuki H, Takahashi H, Nakazono M, Iwano M, Takayama S, Shimizu KK, Okumura K, Suzuki G, Watanabe M, Suwabe K
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Journal Title
Plant Cell Physiol.
Volume: 56
Pages: 663-673
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Ca2+-activated reactive oxygen species production by Arabidopsis RbohH and RbohJ is essential for proper pollen tube tip growth2014
Author(s)
Hidetaka Kaya, Ryo Nakajima, Megumi Iwano, Masahiro M. Kanaoka, Sachie Kimura, Seiji Takeda, Tomoko Kawarazaki, Eriko Senzaki, Yuki Hamamura, Tetsuya Higashiyama, Seiji Takayama, Mitsutomo Abe, Kazuyuki Kuchitsu
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Journal Title
Plant Cell
Volume: 26
Pages: 1069-1080
DOI
Peer Reviewed
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