2013 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌HER familyの高感度ナノ定量化による分子標的治療効果予測の基盤整備
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25253039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内 憲明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90203710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 孝宣 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00292318)
梅田 みか(渡辺みか) 東北大学, 大学病院, 准教授 (20292344)
甘利 正和 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50400312) [Withdrawn]
多田 寛 東北大学, 大学病院, 講師 (50436127)
権田 幸祐 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80375435)
樋口 秀男 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90165093)
宮下 穣 東北大学, 大学病院, 助教 (60710788)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノメディスン / 乳癌 / HERファミリー / 蛍光ナノ粒子 / FRET |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、抗HER2抗体―半導体蛍光ナノ粒子(抗HER2―半導体ナノ粒子)と抗HER3抗体―有機蛍光ナノ粒子(抗HER3―有機ナノ粒子)を用いてHER2及びHER3発現乳癌細胞株でのレセプター結合性を解析し、HER familyの総量の高精度定量化を行うことを目的とする。 (1) 蛍光ナノ粒子合成: 本年度では、まず、効率よくFRET現象を起こす蛍光ナノ粒子の組み合わせの検討を行い、最適な条件の有機ナノ粒子の合成を行った。 (2) 培養細胞系での染色実験: HER2及びHER3の発現が既知である乳癌細胞株を用いて、培養細胞系における抗HER2―半導体ナノ粒子および抗HER3―有機ナノ粒子の染色条件の検討と最適な抗体の選定を行った。HER2とHER3のヘテロ2量体の検出をFRET現象を用いて可視化することを視野に入れているため、抗体認識部位としては受容体の2量体形成への影響が小さいとされる細胞内部位に注目した。 (3) 蛍光1粒子イメージング: (2)のサンプルについて、蛍光1粒子イメージングを行った。本実験において、効率よくFRETを起こすためには、抗体の認識部位のわずかな違いの影響が大きいことが判明した。 (4) FRET現象を起こす最適条件の検討: (3)の実験で得られた結果を元に、同じ受容体の細胞内部位でも、少しずつ認識位置が異なる複数の抗体を用いて最適な条件検討を行った。また、HER2、HER3同時染色サンプルの顕微鏡観察を行い、効率よくFRETを起こさせるための条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず4月~9月の6ヶ月間において抗HER2―半導体ナノ粒子と抗HER3―有機ナノ粒子の合成を行い、続いて培養細胞系における染色実験を行う計画を立て、これらの研究については当初の予定通りのスケジュールで進展した。これらの結果を元に、10月からは、蛍光1粒子イメージングを行い、さらにFRET現象を用いたヘテロ2量体の検出を行う計画であった。しかし、蛍光1粒子イメージングによる高感度計測の結果、抗体の種類によって結合する位置や配向が異なることがFRET効率に与える影響が予想以上に大きいことが判明し、当初想定した以上に条件検討に時間を要したことで、次年度へ4ヶ月間の期間延長をする決定をした。ただし、その条件検討の結果、現象の本質をより詳細に検討することができ、ナノ粒子プローブの設計に具体的な方針を立てる実験結果が得られたため、研究方策の点では大きく進展し、今後の研究の加速に大いに寄与することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた結果に基づき、引き続いて培養細胞を用いてヘテロ2量体の高感度定量解析の条件検討を行う。さらに当初の計画の通り、培養細胞系での実験結果で得られた計測条件を元に、ヒト乳癌組織のパラフィン包埋切片での高感度蛍光計測を行い、試料作製、蛍光計測等の最適条件を検討する。 (1) 試料にHER2―半導体ナノ粒子、HER3―有機ナノ粒子をそれぞれ順に作用させて結合し、細胞1個あたりの結合粒子数を蛍光1粒子イメージングにより計測する。高感度計測には蛍光顕微鏡・ニプコー円板タイプの共焦点ユニット・EMCCDカメラから構成される共焦点顕微鏡システムを使用する。 (2) (1)と同じ試料について、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行い、その結果を(1)で得られた粒子数の相対値と比較検討する。 (3) 各細胞株のHERファミリータンパク質量をウエスタンブロット法で定量し、(1)で得られた結合粒子数と比較検討する。 さらに、東北大学病院で治療したHER2陽性乳癌患者のパラフィン包埋組織切片について、上記の培養細胞資料と同様の検討を行っていく。パラフィン包埋切片では自家蛍光の影響を受けやすいことがこれまでの研究結果からすでに知られているが、申請者らが独自に開発した手法を応用する予定である。具体的には、蛍光ナノ粒子の蛍光計測における組織自家蛍光の影響を低減するため、各ピクセル内の蛍光粒子と自家蛍光の蛍光強度分布を独自のアルゴリズムで解析し、蛍光粒子由来のシグナルのみを特異的に抽出する。HER2-半導体ナノ粒子の結合粒子数、およびFRET現象で発光したHER1,3,4―有機ナノ粒子の粒子数、さらに高空間位置解析を利用した2量体数の測定を行い、ヒト乳癌組織切片において定量化するシステムの開発を行う。
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Research Products
(2 results)